本能寺の変 「明智憲三郎的世界 天下布文!」

『本能寺の変 431年目の真実』著者の公式ブログです。
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大河ドラマ「江」の歴史捜査17:羽柴秀勝登場

2011年05月09日 | 大河ドラマ「江」の歴史捜査
 昨日の大河ドラマ「江」は秀吉が家康を大坂城に呼び出して臣従の礼をさせるまでの話でした。家康を呼び出すために妹を離縁させて家康の正室として送り込んだり、母親を人質として出したりした話は史実のようです。
 さて、今回の放送で私が注目したのは秀吉のおいの羽柴秀勝の登場でした。なかなかの好男子で豪快な印象でしたが、後述するように歴史上では評価が低く、ほとんど注目されていない存在です。

 実は「羽柴秀勝」は三人いました。
 一人目は秀吉の実子とされ6歳で夭折したといわれる石松丸です。この人物の存在が秀頼が秀吉の実子であるという説の根拠とされています。つまり、秀吉には立派に子種があったという証拠とされているのです。でも男女の仲はよくわかりませんね。フロイスは『日本史』に「彼には唯一の息子(鶴松)がいるだけであったが、多くの者は、もとより彼には子種がなく、子供をつくる体質を欠いているから、その息子は彼の子供ではない、と密に信じていた」と書いています。鶴松とは淀君が最初に生んだ子で三歳で死んでいます。秀吉に子種がないというのは当時からのもっぱらの噂だったわけです。
 ★ Wikipedia「羽柴秀勝(石松丸)」

 私が注目しているのは二人目と三人目の秀勝です。
 二人目の秀勝は信長の四男で秀吉の養子になっていた於次丸(おつぎまる)です。放送にもあったように秀吉が関白になった後、天正十三年(本能寺の変の3年後)に18歳の若さで病死しています。当時の状況を考えると単なる病死として片付けてよいのか疑問があります。関白になった秀吉にとっては既に利用価値のなくなった存在だったからです。Wikipediaの記事にも「秀吉によって暗殺された可能性がある」と書かれています。裏付け史料は乏しいでしょうが、もっとこの人物とその死について研究が進まないものかと思います。秀吉による織田家政権簒奪の過程で抹殺されたと思われる青年の無念を思わずにはおられません。 
 ★ Wikipedia「羽柴秀勝」

 そして三人目の秀勝の無念にも思いをはせざるを得ません。信長のめい「江」を正室に迎えますが文禄の役で朝鮮に出陣して現地で病没しています。一説によると梅毒という話もあり、女癖が悪かったといった話が伝わっているようです。新人物往来社『太閤秀吉と豊臣一族』にそのようなことが書かれているのですが出典は書かれていません。一方でWikipediaの記事には、そのようなことは一切書かれていません。何か汚名を着せられてきた感じがします。
 ★ Wikipedia「豊臣秀勝」

 そう感じるには理由があります。実は彼の兄弟2人がいずれも不審な非業の死をとげているのです。兄は秀吉の養子となり関白となった秀次です。秀次が秀吉に切腹させられたことは有名ですが、死の真相は不明です。殺生関白といったあだ名が付けられるような悪評が立てられていますが、一方でフロイスは『日本史』で秀次は「秀吉と違って万人から愛される性格」と書いています。
 ★ Wikipedia「豊臣秀次」
 ★ 秀次は酔っ払い?
 ★ 関白秀次切腹事件の捜査開始

 弟は秀保です。秀保も17歳で変死を遂げています。文禄四年四月十六日に十津川で水死したように伝えられています。兄の秀次の切腹が同年七月十五日ですので、わずか三ヶ月前のことです。何かおかしいと思いませんか?
 ★ Wikipedia「豊臣秀保」
 
 私は三人の兄弟の死には関連があるとみています。いずれも悪評が立てられているのは秀吉政権下での情報操作・言論統制によるものでしょう。彼らの死には謎が多いにもかかわらず、これまで真剣に捜査が行われて来なかったのは秀吉が明治以降の軍国日本の英雄に祀り上げられていたことが影響している思います。秀吉を歴史研究のタブーとする時代が長かったし、現在もそれを引きずっているのです。
 いずれ本格的に歴史捜査を行って三人兄弟の無念を晴らしてあげたいと思います。先祖・光秀の無念を拙著『本能寺の変 四二七年目の真実』で少しは晴らしたように。
【羽柴秀勝関連ページ】
 ★ 歴史捜査24:利休切腹
 ★ 歴史捜査25:朝鮮出兵
 ★ 歴史捜査26:羽柴秀勝の死

 ★ 本能寺の変:定説の根拠を斬る

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