昔話の家系伝承 「昔話の時代」 稲田浩二
家系伝承の場は炉端を原則とする。
語りの座に就く人は、夜業の手仕事(わら仕事、たばこのし、木綿吹き、など)をしていることが多い。
聞き手も眠り草に聞く幼年期を過ぎると、夜業の手伝いをしながら聞く。
はじめ、語り手は一方的に語り手として、聞き手もまた一方的に聞き手として出発する。
語り手は幼な子に話のゆりかごを与え、やがて、単調な毎夜の作業を昔話の楽しみに乗せて手助けする。
聞き手は、気に入った話のくり返しを求める。
一夜のうちにも二度三度とせがみ、次の夜もせがみ、たっぷり納得するまでくり返して聞こうとする。
昔話のあいづちは、単に形式的な応答ではない。
語り手の側からいえば、昔話は語りの呼吸、抑揚を心得た聞き手を得ないことには語りにならない、
いわば棒語りになってしまう。
これを聞き手の側からいえば、すでに心得た語りの抑揚に乗って、
一節ごとに承認の合図を送るのがあいづちである。
あいづちは語り手と聞き手とのかけあいを意味する。
聞き手は語り手の小さな語り違いや語り落としも聞き逃さず、すぐに抗議する。
聞き手はこうして、身を乗り出して語りの座に割り込んでくる。
くり返し語りによって聞き手が身につけるものは、
昔話の部分的モチーフや大づかみなストーリーではなくて、総合された語りそのものである。
昔話そのものを修得するのである。
次代の管理者たるうぶ声は、この期に聞くことができる。
10歳前後になれば、この幼い昨日までの聞き手は、弟妹の守りをしながら昔話を語ってきかせるものである。
家系伝承の場は炉端を原則とする。
語りの座に就く人は、夜業の手仕事(わら仕事、たばこのし、木綿吹き、など)をしていることが多い。
聞き手も眠り草に聞く幼年期を過ぎると、夜業の手伝いをしながら聞く。
はじめ、語り手は一方的に語り手として、聞き手もまた一方的に聞き手として出発する。
語り手は幼な子に話のゆりかごを与え、やがて、単調な毎夜の作業を昔話の楽しみに乗せて手助けする。
聞き手は、気に入った話のくり返しを求める。
一夜のうちにも二度三度とせがみ、次の夜もせがみ、たっぷり納得するまでくり返して聞こうとする。
昔話のあいづちは、単に形式的な応答ではない。
語り手の側からいえば、昔話は語りの呼吸、抑揚を心得た聞き手を得ないことには語りにならない、
いわば棒語りになってしまう。
これを聞き手の側からいえば、すでに心得た語りの抑揚に乗って、
一節ごとに承認の合図を送るのがあいづちである。
あいづちは語り手と聞き手とのかけあいを意味する。
聞き手は語り手の小さな語り違いや語り落としも聞き逃さず、すぐに抗議する。
聞き手はこうして、身を乗り出して語りの座に割り込んでくる。
くり返し語りによって聞き手が身につけるものは、
昔話の部分的モチーフや大づかみなストーリーではなくて、総合された語りそのものである。
昔話そのものを修得するのである。
次代の管理者たるうぶ声は、この期に聞くことができる。
10歳前後になれば、この幼い昨日までの聞き手は、弟妹の守りをしながら昔話を語ってきかせるものである。