「やたんじ さたんじ」 「女の底力」 昔話に学ぶ生きる知恵 その4 藤田 浩子
むがぁし まずあったと。
あるところに やたんじと さたんじ という兄弟が いたんだと。
山さ行って 狩りをするのが 仕事であったそうだけんど
ある日 ふたんじ(二人で)山さ行ったら 山の崖端(がけばた)のところで
「うーん うーん」
て うなってる声 聞こえる。
ほぉで(それで) だんじゃべ(誰だろう)なぁ
と 思ってのぞいてみたれば 山んばが 額から汗流して たいそう苦しんでいたんだと。
ほぉで
「なじょしたン(どうしたんですか)」と ゆったれば(言うと)
「いや 今 お産するとこなんだけんど 水が飲みてぇ 水 汲んできてくんなんしょ(ください)」
と こう言う。
ほぉで 二人は
「お産のおなごに近づくと 穢れるってゆわれるけんど
あだに 苦しんでいるのを 見過ごすわけいかねぇなぁ」
そうゆって ふたんじ 水汲んできて ほぉで 水飲ませるやら 背中さすってっやるやら 手伝って
やがて 山んば やや子 産(な)したんだと。
「いやぁ ありがてぇ ありがてぇ 今まで 何人もの人に頼んだのに
みんな お産不浄とゆって 近寄ってくんにかった。
おめ方だけ こうして助けてくれた。
いやぁ ありがてぇ お礼のしるしに おめ方が山さ入ったときには かならず 獲物 授けるから
山さ入るときには
「やたんじ さたんじ これにあり」と ずねぇ(大きい)声で呼ばってくんなんしょ。
したれば おれ かならず 獲物 授けるから」
と そうゆって 約束してくっちゃんだと。
それからというもの やたんじ さたんじ は 山さ 入るたんびに
「やたんじ さたんじ これにありぃ!」
と ずねぇ声でずなれば かならず 獲物 授けてもらえたんだと。
それは昔の話なんだけんども 今でも 山さ入る人は
「やたんじ さたんじ これにありぃ!」
と ずねぇ声でずなるそうな。
そうすると 山んばは今でも
(やたんじ さたんじが生きている)
と 思ってんだか なんだか かならず 獲物 授けてくれんだと
おしまい
むがぁし まずあったと。
あるところに やたんじと さたんじ という兄弟が いたんだと。
山さ行って 狩りをするのが 仕事であったそうだけんど
ある日 ふたんじ(二人で)山さ行ったら 山の崖端(がけばた)のところで
「うーん うーん」
て うなってる声 聞こえる。
ほぉで(それで) だんじゃべ(誰だろう)なぁ
と 思ってのぞいてみたれば 山んばが 額から汗流して たいそう苦しんでいたんだと。
ほぉで
「なじょしたン(どうしたんですか)」と ゆったれば(言うと)
「いや 今 お産するとこなんだけんど 水が飲みてぇ 水 汲んできてくんなんしょ(ください)」
と こう言う。
ほぉで 二人は
「お産のおなごに近づくと 穢れるってゆわれるけんど
あだに 苦しんでいるのを 見過ごすわけいかねぇなぁ」
そうゆって ふたんじ 水汲んできて ほぉで 水飲ませるやら 背中さすってっやるやら 手伝って
やがて 山んば やや子 産(な)したんだと。
「いやぁ ありがてぇ ありがてぇ 今まで 何人もの人に頼んだのに
みんな お産不浄とゆって 近寄ってくんにかった。
おめ方だけ こうして助けてくれた。
いやぁ ありがてぇ お礼のしるしに おめ方が山さ入ったときには かならず 獲物 授けるから
山さ入るときには
「やたんじ さたんじ これにあり」と ずねぇ(大きい)声で呼ばってくんなんしょ。
したれば おれ かならず 獲物 授けるから」
と そうゆって 約束してくっちゃんだと。
それからというもの やたんじ さたんじ は 山さ 入るたんびに
「やたんじ さたんじ これにありぃ!」
と ずねぇ声でずなれば かならず 獲物 授けてもらえたんだと。
それは昔の話なんだけんども 今でも 山さ入る人は
「やたんじ さたんじ これにありぃ!」
と ずねぇ声でずなるそうな。
そうすると 山んばは今でも
(やたんじ さたんじが生きている)
と 思ってんだか なんだか かならず 獲物 授けてくれんだと
おしまい