民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「大田植」 宮本 常一

2013年09月21日 00時35分45秒 | 民話の背景(民俗)
 「大田植(おおたうえ)」 歳時習俗事典  宮本 常一  八坂書房 2011年発行

 いまは労働といえば、ただ働くだけのことになっており、労働が激しいとか、楽であるとか、
賃金が高いとか、低いとかいうだけが問題になていますが、昔は労働は神とともにあって、
神に仕える動作の一つだと考えられたものが少なくなかったのです。

 田植えなどもその一つでした。
そしていまでも、はなやかな田植えをしている例が中国地方の山中にあります。
まず早乙女たちはかすりの着物に、未婚の娘なら赤いたすき、人妻ならば紺のたすき、
老女ならば白というように服装にも少しずつ区別をつけ、花がさをかぶり、手甲脚絆をつけて、
何十人というほどで田におります。

 この女たちのうしろには大きな太鼓を胸にかけ、美しい女の着物など着て、
すげがさをかぶった男の太鼓打ちがならびます。
 さらにそのあとに音頭をとる人や、小さい太鼓をもったもの、笛を吹くものなどが立って、
音頭とりが音頭をとると、笛や太鼓がこれにあわせて拍子をとり、早乙女たちは音頭につれて
歌をうたいつつ苗を植えていきます。

 よい声がよくそろい、太鼓打ちの太鼓のばちについた紅白の房が、
ばちさばきによって美しくひるがえり、また太鼓打ちたちは腰をひねり、ばち投げあげなどして、
はなやかに打ちこみますので、実にうらやましい風景なのです。
ですからこの田植えのあるときは、たくさんの人が見物にきます。

 後略