民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「よなべ」 宮本 常一 

2013年09月23日 00時45分02秒 | 民話の背景(民俗)
 「夜業(よなべ)」 歳時習俗事典  宮本 常一  八坂書房 2011年発行

 前略

 よなべにする仕事はほぼきまっていた。
男は藁(わら)仕事が多かった。
藁ない・わらじ・草履作り・筵(むしろ)打ち(筵編み)などであり、
女は糸つむぎ・砧打ち・着物のつくろいなどである。
そのほか米麦をついたり、粉をひいたりすることもあり、
イネの取り入れがすんでからは籾(もみ)すりもよなべ仕事が多かった。
 
 中部・東北へかけてワタを作らず、衣類はアサにたよっているところでは、
麻績(おう)みは大事なよなべの一つである。
農民だけでなく、町人も職人もよなべはした。
たいていは囲炉裏にまきをくべてその火のあかりで仕事したが、月あかりを利用して草履を作ったり、
唐臼(からうす)をふんだり、また稲田を刈ることもあった。
よなべはたいてい何人か集まって作業したもので、それも娘は娘で集まり、若者は若者で集まった。
普通の民家の台所や土間を利用することもあったが、若者たちはイネを刈ったあとの田の中や空き地に
小屋を建て、そこでよなべすることが少なくなかった。

 中略

 夜業をよなべというのは作業を終えると必ず夜食をする風習があったためと思われる。
つまり夜鍋を意味するものであろう。