民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「本屋さんで待ちあわせ」 その19 三浦 しをん  

2017年12月28日 00時35分19秒 | 本の紹介(こんな本がある)
 「本屋さんで待ちあわせ」 その19 三浦 しをん  大和書房 2012年

 読まずにわかる『東海道四谷怪談』 その4
 第二夜 伊右衛門 悪の魅力 その2 P-133

 鶴屋南北が『四谷怪談』を書いたころ、『忠臣蔵』はおおかたのひとにとって、「古くて、リアルじゃない」話になってしまっていた。いまどき、大真面目に主君の仇討ちをする頓狂なやつなんていないぜ、というわけだ。
 では、鶴屋南北はどうやって、新しい時代にふさわしい劇を作ったか。『四谷怪談』の主人公・民谷伊右衛門(たみやいえもん)を、ニヒルで血も涙もなく、ちょっとモテるからといってすぐいい気になり、主君の仇討ちなどそっちのけだが、金と出世のためなら何人殺そうと屁とも思わないような人物として設定したのである。

 伊右衛門は、はっきり言って最低最悪の性格だ。できればお近づきになりたくない。しかし、彼の欲望と破滅の軌跡は、抗しがたい悪の魅力を放ってもいる。