のんのん太陽の下で

初めての一人暮らしが「住民がいるんだ・・・」と思ったラスベガス。
初めての会社勤めが「夢を売る」ショービジネス。

ブラックアウト

2007-12-18 | KA
 少しのことでも新しいことを本番で取り入れるのは勇気を必要とします。今日はひとつ身体の動きを増やそうと心に決めていたので、緊張していました。この緊張がいい方向に出ますように…。
 無事に新しいことを入れられて、最後にフルートが手の中におさまると、静寂の中に男性の一瞬の笑い声が聞こえました。静寂はすぐに戻り、舞台が下がり始めると拍手を頂きました。
 新しいことをして上手くいった時の2回目は特に注意深くしないと、と思いながら臨んだ2回目。
 それは影絵の時でした。花道を出て行き、誰かが向こうから来るのを感じ、舞台から客席に降り、隠れてすぐ、双子の男の子たちが出てきた時、
「ブチっ!」
 と大きな音がして、音楽が切れ、客席が明るくなりました。双子の男の子はすぐに客席に降りて、手招きをして舞台裏に戻るように合図しました。
 舞台裏に行くと薄暗く、電気が落ちて、応急のライトのみが点いているとのこと。客席は非常事態なのでライトが点いたのでしょう。MGMだけではなく、ニューヨークニューヨークも同じようになっているとのことでした。
 ステージマネージメントからは、とりあえず今居るところにそのまま居るように指示があり、私は舞台袖で待ちました。
 待ちながら、アーティスト達といろいろな“もしも…”を話していると、恐ろしくなってきました。もし、クライムの時だったら?安全を確保しているエアーバッグは、電気で空気を送って膨らませているのだよね。舞台が垂直になった時に、一番上まで登って棒につかまっているアーティストが落ちる直前に電気が落ちたら?鳥が客席の真上を飛んでいる時だったら?森のシーンのデュエットの時だったら?バトルフィールドでみんなが吊られている時だったら?どれもこれも怖い話です。影絵の時で良かったと思えます。
 電気が戻ってきても、すべての安全を確認してからショーを始めるとしたら、時間がかかることだろうと思い、寒いのでジャケットを取りに行きました。廊下は薄暗く、更衣室も非常灯がひとつ点いているだけでした。
 舞台袖に戻ると、影絵を映す縦になった舞台に入っていたリガーの人たちが、縄を使って降り始めました。アーティストはグリーンルームに呼び出され、ショーをキャンセルすることを告げられました。キャンセルになるのはいつも満席の時…。
 更衣室に戻って、帰る支度を始めました。薄暗い中での作業は捗りません。それでも、非常灯はすぐに消えてしまうことだろうから、支度を急ぐように言われました。
 更衣室を出て、静まり返っているグリーンルームで、持っていたおにぎりを食べ、帰るのにエネルギーを蓄えました。そこにいたドレッサーが発電機か何かが爆発したらしいと教えてくれました。
 果たしてカジノはどうなっているのだろう…。覘いてみました。劇場の前はもう人影もなく、みな仕方なくお帰りになったようでした。チケット売り場も静かになっていました。非常事態であることを告げるフラッシュライトはピカピカしています。その中、薄暗い部屋のカジノで楽しんでいる人たちがいました。セキュリティの人の話によると、カジノの機械は応急用の電気で動かしているとのこと。
 劇場に戻ると、バックステージテクニシャン達はまだまだ帰れないようでした。
 明日は無事にショーが行えますように…。