-表象の森- 学校にメタファーとして沼を置く
「学校にメタファーとして沼を置く、深泥に伸ばす足の感触」
滋賀県の高校で数学を教える33歳の棚木恒寿という歌人の作。
教育現場に日々身を置く作者の、生徒達への関わりようが想われて清々しいものがあるが、失われた十年、’90年代に学生時代を送った世代の、「深泥に伸ばす足の感触」はどんなほろ苦い影を曳いているのだろうか。
-今月の購入本-
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 -4-」亀山郁夫訳・光文社文庫
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 -5-エピローグ別巻」亀山郁夫訳・光文社文庫
J.ジョイス「フイネガンズ・ウェイク -2-」柳瀬尚紀訳・河出文庫
レヴィナス「全体性と無限 -下」熊野純彦訳・岩波文庫
梅原猛「京都発見(七)空海と真言密教」新潮社
「DAYS JAPAN -14歳のための日本国憲法-2007/08」広河隆一編集・ディズジャパン
「ARTISTS JAPAN -22 狩野芳崖」デアゴスティーニ
「ARTISTS JAPAN -23 鏑木清方」デアゴスティーニ
「ARTISTS JAPAN -24 青木繁」デアゴスティーニ
「ARTISTS JAPAN -25 富岡鉄斎」デアゴスティーニ
「ARTISTS JAPAN -26 黒田清輝」デアゴスティーニ
「ARTISTS JAPAN -27 小野竹喬」デアゴスティーニ
-図書館からの借本-
「青木繁-海の幸」中央公論美術出版
「假象の創造-青木繁全文集」中央公論美術出版
「図説オリエント夢幻紀行」河出書房新社
「図説ペルシア」河出書房新社
<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>
<恋-77>
思ひきや夢をこ世の契りにて覚むる別れを歎くべしとは 俊恵
千載集、恋二、題知らず。
邦雄曰く、かつては心のままに逢瀬を持った。満ち足りた恋であった。その人とは、此の世では、もう夢のなかでしか逢うことができない。目覚めはすなわち別れ。この歎きを見ようとは、いもかけなかったと、むしろ哀傷歌に近い恋歌である。死別を言外に歌っているのが、他の悲恋の作とは異なる点、僧侶の歌独特の無常観が流れており、忘れがたい、と。
たのみありて待ちし夜までの恋しさよそれも昔のいまの夕暮 藤原為子
風雅集、恋五、恋の歌あまたよみ侍りけるに。
邦雄曰く、絶えて久しい別れ、もはや望みもない旧恋の類、あの頃は、それでもなほ心頼みにして待ってもいた。恋しさも、待つ心のある間、すべては今、遠い過去の、他人事に等しい「待宵」の記憶になってしまった。滾るような思いを堰きに堰いて、ただ一言「それも昔の」で、すべてを暗示する技倆、さすが為兼の姉だけのことはあると感嘆を久しくする、と。
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