山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

酒やめておだやかな雨

2010-05-31 15:49:10 | 文化・芸術
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―表象の森―「究極の田んぼ」

耕さず肥料も農薬も使わぬ-不耕起移植栽培と冬期湛水農法

不耕起とは文字通り、田んぼの土を耕さずに、苗を植えること-イネを刈り取った後のイネ株をそのまま残し、そのイネ株とイネ株の間に今年の新しい苗を植える。移植とは、あらかじめ苗を育てておいて、田植期にそれを移植すること。田んぼに直接種籾をまく直播き法ではなく、一般的に行われているように、苗を別に育てておいて、田植えの時に移植する方法で、苗の育て方が一般と違い、稚苗ではなく、成苗にしてから移植する。

冬期湛水法とは、冬に田んぼに水を張っておく農法-一般的には、秋にイネ刈りをした後、田んぼをそのままにしておき、春の田植えの前に田起しをしてから水を張って苗を植えるが、冬期湛水は、冬にも田んぼに水を張っておき、田んぼの中の光合成を促し、植物プランクトンやそれを餌にする動物プランクトンの発生を助け、イネの生長に必要な栄養分が供給されることを狙うもので、結果として無肥料栽培になる。また、雑草の発生も抑えられるので、無農薬栽培にもなる、という。

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―今月の購入本―
・岩澤信夫「究極の田んぼ」日本経済新聞出版社
千葉の変人-奇跡の農法! 田んぼを耕さず、農薬も肥料も使わずに多収穫のイネを作ることに成功した男が、不耕起移植栽培の普及と環境再生農業の提唱、市民と農家が共に楽しめる、地球と人と生きものに本当に優しい市民農園・村おこし構想を提言する。

・兵藤裕己「琵琶法師-異界を語る人々」岩波新書
モノ語りとは“異界”のざわめきに声を与え、伝えること。最後の琵琶法師・山鹿良之を直接取材すること10年余-聖と俗、貴と賎、あの世とこの世の“あいだ”に立つ盲目の語り手、琵琶法師-古代から近代まで、この列島の社会に存在した彼らの実像を浮彫にする。

・兵藤裕己「太平記<よみ>の可能性」講談社学術文庫
太平記よみの語りは、中世・近世を通じて人びとの意識に浸透し、天皇をめぐる二つの物語を形成する。その語りのなかで、楠正成は忠臣と異形の者という異なる相貌を見せ、いつしか既存のモラル、イデオロギーを掘り崩してゆく。天皇をいただく源平武臣の交代史、宋学に影響された名文論が、幕末に国体思想にヨミ替えられ、正成流バサラ再現としての薩長閥の尊皇攘夷へと続いてゆく。講談社刊の初版は95年。

・西村亮「源氏物語とその作者たち」文春新書
著者は、長年折口信夫に師事し、古代学の継承と王朝の和歌・物語の研究に努めた人。原稿用紙にして2500枚にも及ぶ長大な源氏物語を、紫式部が一人で書いたのか。―文体や登場人物の扱いなどに着目し、錯綜する展開を解きほぐすこと で見えてきたのは、「宇治十帖」のみならず多くの部分が、読者によって自由に加筆や修正が行われ「成長」していった事実だった。

―図書館からの借本―
・石川九楊「書の宇宙 -24-書の近代の可能性・明治前後」二玄社

・別冊太陽「泉鏡花-美と幻影の魔術師」平凡社
鏡花の曰く「僕は明かに二つの大なる超自然力のあることを信ずる。これを強ひて一纏めに命名すると、一を観音力、他を鬼神力とでも呼ばうか、共に人間はこれに対して到底不可抗力のものである。」

―山頭火の一句― 行乞記再び -72-
3月10日、雨となつた、行程2里、小城町、常磐屋

降りだしたので合羽をきてあるく、宿銭もないので雨中行乞だ、少し憂鬱になる、やつぱりアルコールのせゐだらう、当分酒をやめようと思ふ。

早くどこかに落ちつきたい、嬉野か、立願寺か、しづかに余生を送りたい。-略-

夜は文芸春秋を詠む、私にはやつぱり読書が第一だ。
ほろりと歯がぬけた、さみしかつた。

追記-川上といふところは川を挟んだだが、水が滑らかで、土も美しい、山もよい、神社仏閣が多い、中国の三次に似てゐる、いはば遊覧地で、夏の楽園らしい、佐賀市からは、そのために、電車が通うてゐる、もう一度来てゆつくり遊びたいと思うた。-略-

春日墓所-閑叟公の墓所-は水のよいところ、水の音も水の味もうれしかつた。

※表題句の外、句作なし

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Photo/川上峡の十可苑は、嘗て鍋島侯の別荘地であった

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Photo/紅葉盛んな十可苑

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Photo/小城市小城町にある須賀神社

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Photo/神社境内の阿吽の狛犬


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樹彫雲影猫の死骸が流れてきた

2010-05-29 16:40:51 | 文化・芸術
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―世間虚仮― 無煙タバコ騒ぎ

今月、JTがさしあたり東京都内限定で売り出したという「ゼロスタイル・ミント」なる無煙タバコの扱いをめぐってなにかと喧しく取り沙汰されているそうだ。

ニコチン含有量は0.05mgと従来の軽めのタバコと比較して1/20、タールの含有はゼロ。とはいえタバコには違いなく、完全無害とはいえない。
曰く「<無害>という表示は健康に及ぼす悪影響が他製品と比べて小さいことを意味するものではありません」とパツケージに警告表示しているそうな。

他方、禁煙団体などは「使用者の呼気からニコチンなどの物質が吐き出され、周囲の人は予期せぬ危険にさらされるかもしれない」と懸念表明。これには「非情に微量で問題ない」と応答するJT。
日航は機内で認めるといい、全日空では認めないと、対応が別れているのも問題だが、いまのところ自治体では禁煙ゾーンで吸ってもOKとしているのが多いらしいが、これだって自治体によっては所変われば‥になること必至。
奇妙なものを作り出して波乱をまねくJTの本音は、いったい何処にあるのかネ。

―山頭火の一句― 行乞記再び -71-
3月9日、曇、なかなか冷たい、滞在供養。

例の画家に酒と飯とを供養する、私が供養するのぢやない、私の友人の供養するのだから友人から-送つてくれたゲルトだから-お礼がいひたかつたら、友人に言つてくださいといつたりして大笑ひしたことだつた。

今日一日で旅のつかれがすつかりなくなつた。

※表題句は3月5日付の句、句作なし

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Photo/川上峡付近の春日墓所には鍋島直正の墓がある
幕末期の鍋島藩主直正は、明治維新の廃藩置県に真っ先に賛同したとされる

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Photo/川上峡上流の風景

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Photo/夏の風物詩、灯籠流し

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Photo/名園の誉れ高い一可苑の庭


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土手草萌えて風も行つたり来たりする

2010-05-28 23:31:14 | 文化・芸術
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―世間虚仮― シニア世代の演劇ブーム

シニア演劇がずいぶんと活況を呈しているという。一説には全国に60以上の劇団があるとも。50代からはじめる人たちでつくるアマチユア演劇のことだが、ほとんどの構成メンバーの中心は60代以上であり、80代の元気老人たちもけっこういるようだ。「シニア演劇web」というHPもあり、このsiteの主は朝日恵子というFree Lighterのようだが、北海道から九州まで30余りのシニア劇団が紹介されている。

ただ、このsiteに掲載されている劇団情報で気がかりな点が一つ、それは中高年ミユージカル劇団「発起塾」なるものが、大阪・和歌山・京都・神戸・広島・岡山・東京・名古屋と、関西を中心に全国的な展開をしつつあること。この例などは、90年代以降、TVなどマスコミ向けのタレント養成所がこぞって、シニア世代をターゲットに展開してきた流れがあるが、いわばそれが少々焦点をずらしたかたちで、マーケット化しているだけではないかともいえそうで、あまり歓迎できることとは思えぬ。

考えてみれば、Karaokeにはじまり一億総タレント化へとEntertainment志向?、嗜好というべきか、の流行現象からすでに30年余りが経つのだから、ときならぬシニア劇団のブームなど驚くほどのこともない、といえそうだ。

―世間虚仮― 行乞記再び -70-
3月8日、晴曇、行程3里、川上、藤見屋

神崎町行乞、うれしい事もあり、いやな事もあつた、私はあまり境に即しすぎてゐる。-略-
川上といふところは佐賀市から3里、電車もかかつてゐる、川を挟んだ遊覧地である、水も清く土も美しい、好きな場所である、春から秋へかけてはいいだらうと思ふ。

同宿4人、その一人は旅絵師で川合集声といふ老人、居士ともいふべき人物で、私が旅で逢つた人の中で最も話せる人の一人だつた。話が面白かつた。

執行-シュギョウ-といふ姓、尼寺-ニイジ-といふ地名を覚えてゐる。

句が出来なくなつた、出来てもすぐ忘れてしまふ。

※表題句は3月6日付の句、句作なし

昭和5年から12年の7年間、佐賀市内の神野から佐賀郡川上村-現・佐賀市大和町川上-の間を佐賀電気軌道という路面電車が走っていた。嘉瀬川の上流は川上川と呼ばれ、景勝地の川上峡がある。

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Photo/毎年5月には鯉のぼりが乱舞する川上峡

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Photo/鍋島初代藩主所縁の与止日女神社

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Photo/此方も鍋島家代々の藩主が崇敬したという河上山実相院の山門

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Photo/その山門-仁王門-の仁王像-木造-


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水鳥の一羽となつて去る

2010-05-27 12:32:21 | 文化・芸術
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―世間虚仮―正義の女神

左手に天秤、右手に剣を持ち、目隠しをした正義の女神テミス像は、司法・裁判の公正さを表わす。天秤は正邪を測る正義を、剣は力を象徴し、目隠しは万人に平等の法理念を表わしているというが、被害者家族参加制度に則って、構に満ちた物語をただリピートする場でしかないと断ずるほかない。

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Photo/ルカ・ジョルダーノ-Luca Giordano-の「Justizia-正義の女神-」

―山頭火の一句― 行乞記再び -69-
3月7日、降つたり霽れたり、行程4里、仁井山、麩屋

朝早く出立、歩き出してほつとした、ほんたうにうるさい宿だつた、ゆうゆうと歩く、いいなあ!
今日の行乞相はよかつた、心正しければ相正し、物みな正し。

今日は妙な日だつた、天候も妙だつたが人事も妙だつた、先づ、佐賀を立つて1里ばかり、畔草をしいて一服やつてゐると、刑事らしい背広姿の中年男が自転車から下りて来て、何かと訊ねる、素つ気なく問答してゐたら-振向きもしないで-おとなしくいつてしまつた、それからまた1里、神崎橋を渡つて行乞しはじめたら、前の飲食店から老酔漢が飛びだして、行乞即時停止を命じた、妙な男があるものだわいと感心してゐるうちにドシヤ降りになつた、行乞は否応なしに中止、合羽を着て仁井山観音参拝、晴間々々を2時間ばかり行乞、或る家で、奥様が断つて旦那はお茶をあがれといふ、ずゐぶん妙だ、それからまた歩いていると呼びとめられる、おかみさんが善根宿をあげませうといふ、此場合、頂戴するのがホントウだけれど、ウソをいつて体よく断る。…

久しぶりに山村情調を味はつた、仁井山-第20番札所地蔵院-はよいところ、といふよりも好きなところだった、山が山にすりよつて水がさうさうと流れてくる、山にも水にも何の奇もなくて、しかもひきつけるものがある、かういふところではおちつける、地蔵院の坊主さんがつつましくお茶を呼んで下さつた、しづかでいいところですね、と挨拶したら、しづかすぎまして、と微笑した。-略-

「聖人に夢なし」「聖人には悔がないから」
自分が与へられるに値しないことを自覚することによつて行乞がほんたうになります。
ルンペンのよいところは自由! 主観的にも客観的にも。…
失職コツクと枯草に寝ころんで語つた!

※表題句は3月5日付記載の句、句作なし

<仁井山>は<仁比山>の誤記か、第20番札所地蔵院は、現佐賀県神埼市神崎町的の仁比山護国寺地蔵院のこと。

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Photo/第20番札所仁比山護国寺地蔵院

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Photo/その地蔵院と隣り合わせるようにしてある「九年庵」は
幕末蘭方医にて近代医学の祖とされる伊東玄朴の旧宅


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飾窓の牛肉とシクラメンと

2010-05-25 22:53:42 | 文化・芸術
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―日々余話― 被害者参加人の意見陳述

面白いことにというか、或は奇妙なことにというか、現行の刑事訴訟法では、被害者参加人等の意見陳述に関わる定めの条項は、平成12年の改正によって導入された被害者等の意見陳述制度-292条の2-と、平成19年の改正で成立した被害者参加人等による意見陳述に関する条項-316条の38-の二者が併存していることになるという。

前者の意見陳述制度では、その陳述の内容を量刑判断の資料とすることが出来たのに対し、後者の意見陳述では検察官の論告・求刑が証拠にならないのと同様に、論告・求刑が出来るものの、証拠にはならないから、量刑判断の資料にはされない、ということらしい。

容易には理解しにくい、この二様の、被害者等の意見陳述の併存だが、昨日の私の意見陳述については、事前に検事に聞かされたところによれば、刑訴法292条の2の適用であったらしい。ならば、量刑判断の資料とされることになるのだから、これは予期せぬありがたい裁判官の判断であるといえよう。

検察の論告・求刑は、禁固1年であった。
判決言い渡しの日は6月7日とされた。

私の意見陳述が刑訴法292条の2の適用であったのなら、量刑判断も求刑よりはかなり軽減され、もちろん執行猶予も付くことが期待されるが‥。

―山頭火の一句― 行乞記再び -68-
3月6日、曇后晴、あとは昨日の通り。

行乞して、たまたま出征兵士を乗せた汽車が通過するのに行き合せた、私も日本人の一人として、人々と共に真実こめて見送つた、旗がうごく、万歳々々々々の声-私は覚えず涙にむせんだ、私にもまだまだ涙があるのだ!

同宿の猿まはし君は愉快な男だ、老いた方は酒好きの、剽軽な苦労人だ、若い方は短気で几帳面で、唄好だ、長州人の、そして的な性質の持主である、後者は昨夜も隣室の夫婦を怒鳴りつけてゐた、おぢいさんがおばあさんの蒲団をあげたのがいけないといふのだ、そして今夜はたまたま同宿の若いルンペンをいろいろ世話して、髭を剃つてやつたり、或る世間師に紹介したりしてやつてゐる。-略-

同宿のルンペン青年はまづ典型的なものだらうが、彼は「酒ものまない、煙草もすはない、女もひつぱらない、バクチもうたない、喧嘩もしない、ただ働きたくない」怠惰といふことは、極端にいへば、生活意力がないといふことは、たしかに、ルンペンの一要素、-致命的条件だ。

  座右銘として
おこるな しやべるな むさぼるな
  ゆつくりあるけ しつかりあるけ

※表題句は3月5日付記載の句、句作なし

佐賀城跡の一帯には120株あまりのクスが生えており、とりわけ濠端には樹齢300年を越えると思われる大楠が並び立つ。

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Photo/佐賀城跡、濠端の大楠三態


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