-今日の独言- マクドナルドと食育基本法
昨夕、どの放送局か確認し忘れたが、TVニュース番組で、マクドナルドの店が一軒もないという奄美大島のとある小学校に、わざわざ業者が島に乗り込んで、マックのハンバーガーを給食として子どもたちに試食させている風景が放映されていた。子どもたちの半数以上は初めて食するマック処女だったろうか。みな一様に美味しそうに且つ嬉しそうにバーガーを頬張る姿が映し出されていた。ニュースの解説ではどうやら昨年7月に施行されたという「食育基本法」なる寡聞にして初めて耳にする法律と関わりがあるらしく、この新法の趣旨に沿った日本マクドナルドによる協賛行為のような意味づけがされていたように聞こえたが、学校給食とマックのハンバーガーという取り合せに違和感がつきまとって仕方なかったし、この話題を採り上げるマスコミの神経にも驚きを禁じえなかった。
「食育基本法」? なんだよその法律? マックのハンバーガーを子どもたちの給食にというような行為が奨励礼賛されるような法律って、いったいどんな法律だよ?
「食生活情報サービスセンター」なるこれまた耳慣れない財団法人のHPに「食育基本法」が全文掲載されていた。
=http://www.e-shokuiku.com/kihonhou/index.html
基本法と銘打つだけに、前文と四章三十三条及び附則二条から成るごく簡明な法である。
前文の中ほどには「国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。」というような件りもあった。
総則としての第一章第十二条では、食品関連事業者等の責務として「食品の製造、加工、流通、販売又は食事の提供を行う事業者及びその組織する団体は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、自主的かつ積極的に食育の推進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する食育の推進に関する施策その他の食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。」とある。
成程、日本マクドナルドが、店舗が一軒もないという奄美大島にわざわざ出向いて、小学生たちに自社のハンバーガーを給食代わりに食体験させるという行為が、この新法に則った食育キャンペーン事業の一環だという訳だ。給食とマックのハンバーガーという取り合せは話題性もあるといえばある。だからといってこれを積極的に採り上げるマスコミの神経もどうかしてるんじゃないか。なにしろ人口の60%以上という桁違いの肥満率を誇る?アメリカである。引用した前文にもあるように、肥満や生活習慣病の増加現象の一翼を担っているのが、まぎれもなくマクドナルドを筆頭とするアメリカ食文化のわれわれ消費者への圧倒的な浸透そのものじゃないか。
美辞麗句で飾り立てているものの、「食育基本法」などという新法の成立自体、拙速の牛肉輸入再開と同様、内実は超肥満大国アメリカによる外圧に発しているのではと、穿った見方もしてみたくなろうというものだ。
<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>
<春-35>
磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君がありと言はなくに
大伯皇女
万葉集、巻二、挽歌。
詞書に、大津皇子の屍を葛城の二上山に移し葬る時、大来皇女の哀しび傷む御作歌二首、とある後一首。
邦雄曰く、諮られて死に追いつめられた悲劇の皇子大津を悼む同母姉の悲痛な挽歌。不壊の秀作であろう。馬酔木の蒼白く脆く、しかも微香を漂わす花と、この慟哭のいかに哀れに響きあうことか。時に朱鳥元(686)年、大津23歳、大伯25歳の春、と。
はかなしな夢に夢見しかげろふのそれも絶えぬるなかの契りは
藤原定家
拾遺愚草、上、関白左大臣家百首、逢不会恋。
邦雄曰く、歌の心がそのまま彩となり調べとなり、余情妖艶の典型。初句でとどめを刺す表現は定家の好むところ、目立たぬ倒置法で、五句は纏綿と連なり、「絶えぬる」と歌いつつ切れ目を見せぬ。歎きの円環の中にさらに夢と蜉蝣がもつれあい、ほとんどはかなさの綾織の感がある。定家70歳、関白左大臣家百首中の恋歌、と。
⇒⇒⇒ この記事を読まれた方は此処をクリック。