―四方のたより―
<日暦詩句>-14
せめて死の時には、
あの女が私の上に胸を披いてくれるでせうか。
その時は白粉をつけてゐてはいや、
その時は白粉をつけてゐてはいや。
ただ静かにその胸を披いて、
私の眼に副射してゐて下さい。
何にも考へてくれてはいや、
たとへ私のために考へてくれるのでもいや。
―中原中也「盲目の秋」より-昭和5年―
―今月の購入本―
・亀井孝/他「日本語の歴史3―言語芸術の花ひらく」平凡社ライブラリー
・亀井孝/他「日本語の歴史4―移りゆく古代語」平凡社ライブラリー
・柳田聖山/梅原猛「無の探求<中国禅>―仏教の思想7」角川文庫
・塚本善隆/梅原猛「不安と欣求<中国浄土>―仏教の思想8」角川文庫
・紀野一義/梅原猛「永遠のいのち<日蓮>―仏教の思想12」角川文庫
・安西冬衛/他「言語空間の探検 全集現代文学の発見-13」新装版、学芸書林
・茨木のり子「倚りかからず」ちくま文庫
・後藤正治「清冽―詩人茨木のり子の肖像」中央公論新社
―12月の購入本―
・G.ドゥルーズ/F.ガタリ「千のプラトー-上-資本主義と分裂症」河出文庫
・G.ドゥルーズ/F.ガタリ「千のプラトー-中-資本主義と分裂症」河出文庫
・G.ドゥルーズ/F.ガタリ「千のプラトー-下-資本主義と分裂症」河出文庫
・梶山雄一/上山春平「空の論理<中観>―仏教の思想3」角川文庫
・鎌田茂雄/上山春平「無限の世界<華厳>―仏教の思想6」角川文庫
・白川静「孔子伝」中公文庫
・小島寛之「世界を読み解く数学入門」角川文庫
・小島寛之「無限を読み解く数学入門」角川文庫
・草刈民代「BALLERINE」幻冬舎
・草刈民代「草刈メソツド」DVD&Book-マガジンハウス
―図書館からの借本―
・吉田伸之「成熟する江戸―日本の歴史17」
―山頭火の一句― 行乞記再び -146
6月3日、同前
雨、まるで梅雨のやうだ、歩いたり、考へたり、照会したり、交渉したり‥、ただ雨露を凌ぐだけの庵を結ぶのもなかなかである。
早朝、雷雨に起きて焼香し読経する。
温泉饅頭を坊ちやんに、心経講話をパパに送つてあげる-伊東君にあてて-。
夕方、一風呂浴びて一本傾けて、そしてぶらぶら歩く、ここにも温泉情調はある、カフヱーと自称するもの二軒、百貨店と自称するもの一軒、食堂二三軒、そこかしこに三味線の音がする、‥いやまて、ビリヤード二軒、射的場も一軒ある。‥
妙青寺拝登、長老さんにお目にかかつて土地の事、草庵の事を相談する-義庵老慈師の恩寵を感じる-、K館主人にも頼む、すぐ俳句の話になる、彼氏も一風かわつた男だ、彼は何だか虫の好かない男だ、とにかく成行に任せる、さうする外ない私の現在である。
山はうつくしい、茶臼山から鬼ケ城山へかけての新緑はとてもうつくしい、希くはそれをまともに眺められるところに庵居したいものだ。
-略- 今夜もまた睡れさうにないから、寝酒を二三杯ひつかけたが、にがい酒だつた、今夜の私としては。――
アルコールよりもカルチモン
ちよつと一服盛りましよか
※表題句の外、3句を記す
Photo/妙青寺山門
Photo/妙青寺境内にある雪舟の庭
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