山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

何と涼しい南無大師遍照金剛

2011-07-31 18:48:18 | 文化・芸術
10122424

―四方のたより― 亀岡、楽々荘にて

7日間の北の旅からやっと帰宅し、ほっと息つくまもなく出かけたのは5時過ぎ。車で向かったのは亀岡の楽々荘。
阪神高速池田線から都市高池田木部線を走って木部第一INを下りると国道423号線に出る。箕面の西部を通り豊能町を抜けて豊岡へと抜けるこの峠道は、何度か走ったことはあるが、休日の所為もあってか対向車にほとんど会わない。
亀岡市役所のごく近く、市の中心街に占める広大で閑静な空間、明治から大正、京都にあって関西の政財界に君臨した田中源太郎の旧邸、国の登録有形文化財でもある楽々荘に着いたのは、約束の7時にまだ十数分余裕があった。

073101

約束とは、秋山巌画伯のお嬢さんこと町田珠美さん提唱の、此処=楽々荘でのビアパーティだ。
山頭火の句やふくろうを題材にした版画で知られる秋山巌氏は1921年生まれというから今年90歳。
そのお嬢さんが仙台で「秋山巌の小さな美術館―ギャラリーMami」を運営しており、ネツトを通してお近づきになったのは昨年の10月だった。

3.11の被災以後、夫と二人暮らしの彼女たちの日々もずいぶんと大変なものだったらしい。その辛苦と奮闘の4ヶ月余にひとときの慰安を求め、さらには三田で夫君の大腿部の義足新調も兼ねての関西への小旅行、その一夕に設けた知友たちとのパーティといった趣向で、集った人数は12名ほどだが、みな一家言ありの猛者揃い-失礼!-で侃々諤々賑やかに酒も食も進む。初お目見えの此方は車だからウーロン茶で、文字どおり茶を濁すしかないのだが、それでも結構愉しく時間を過ごした三時間だった。もちろん初会のパーティなんぞにわざわざ遠出をしてまで顔を出すについては、ただ山頭火縁りばかりでなく、想う一事あってのことなのだが、その所期もさしあたりは果たせたかと思われる。

073102

073103
午後10時を過ぎた帰りの峠道の運転は些か堪えたが、眠りたくなるほどのこともなく一時間余で無事帰参。やっとのんびりと冷や酒にありついて、あとはばったりと倒れ込むように眠り込んだ。


―山頭火の一句―
行乞記再び-昭和7年-203

7月31日、いよいよ出かけた、5時一浴して麦飯を二三杯詰めこんで勢よく歩きだしたのである、もう蝉が鳴いてゐる、法衣に飛びついた蝉も一匹や二匹ではなかつた。
暑かつた、労れた、行程8里、厚狹町小松屋といふ安宿に泊る、掃除が行き届いて、老婦も親切だが、キチヨウメンすぎて少々うるさい。
行乞相はよかつた、所得もわるくなかつた、埴生1時間、厚狹2時間、それだけの行乞で食べて飲んで寝て、ノンキに一日一夜生かさせていただいたのだから、ありがたいよりも、もつたいなかつた。
明日は是非小郡まで行かう、そして宮市へ、そこで金策しなければならない。‥‥歩くはうれしい、水はうまい、強烈な日光、濃緑の山々、人さまざまの姿。-略-

※表題句の外、4句を記す

<iframe width="425" height="350" frameborder="0" scrolling="no" marginheight="0" marginwidth="0" src="http://maps.google.co.jp/maps?f=d&amp;amp;amp;source=s_d&amp;amp;amp;saddr=%E7%9C%8C%E9%81%9340%E5%8F%B7%E7%B7%9A&amp;amp;amp;daddr=%E4%B8%8B%E9%96%A2%E5%B8%82%E5%9F%B4%E7%94%9F+to:%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E7%9C%8C%E5%B1%B1%E9%99%BD%E5%B0%8F%E9%87%8E%E7%94%B0%E5%B8%82+%E5%8E%9A%E7%8B%AD%E9%A7%85&amp;amp;amp;geocode=FbLtCAIdOvDNBw%3BFa5jBwIdnkjQBykjAyatBJ1DNTF3LMD1WwuavA%3BFfGcBwIdnVfRBymBp6xUh4JDNTES6nG7GN9rGw&amp;amp;amp;hl=ja&amp;amp;amp;mra=dme&amp;amp;amp;mrsp=0&amp;amp;amp;sz=11&amp;amp;amp;dirflg=w&amp;amp;amp;sll=34.094355,131.04185&amp;amp;amp;sspn=0.451486,0.430527&amp;amp;amp;brcurrent=3,0x3543755b556f5fa7:0x7101c1498e790a73,0&amp;amp;amp;ie=UTF8&amp;amp;amp;ll=34.094355,131.04185&amp;amp;amp;spn=0.451486,0.430527&amp;amp;amp;output=embed"></iframe>大きな地図で見る
Photo/川棚温泉から埴生、厚狭への道程

073104
Photo/北の旅-2000㎞から―函館、トラビスチヌ修道院-’11.07.24


人気ブログランキングへ -読まれたあとは、1click-

日ざかり、われとわがあたまを剃り

2011-07-30 12:00:00 | 文化・芸術
Dc09122659

―四方のたより― 北の大地へ―第7日

小樽市内から札幌市内、新千歳空港へ
新千歳発12:15―関空着14:25

<iframe width="425" height="350" frameborder="0" scrolling="no" marginheight="0" marginwidth="0" src="http://maps.google.co.jp/maps?f=d&amp;amp;source=s_d&amp;amp;saddr=047-0008&amp;amp;daddr=43.05637,141.35853+to:%E6%96%B0%E5%8D%83%E6%AD%B3%E7%A9%BA%E6%B8%AF%EF%BC%88%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%EF%BC%89&amp;amp;geocode=FUEDkwId_spnCCk92TBWQuAKXzHRauXQ04OB0g%3BFfL8kAIdwvVsCCnXxr7XgykLXzH_b1ywK5nPTQ%3BFSXjjAIdPuNxCCmLiNpZaiB1XzE9ecCzoBVCUA&amp;amp;hl=ja&amp;amp;mra=dpe&amp;amp;mrsp=1&amp;amp;sz=10&amp;amp;via=1&amp;amp;dirflg=d&amp;amp;sll=42.99159,141.422882&amp;amp;sspn=0.81967,1.284027&amp;amp;brcurrent=h3,0x5f0ad25c683b870f:0xf5df2947b743d540&amp;amp;ie=UTF8&amp;amp;t=p&amp;amp;ll=42.99159,141.422882&amp;amp;spn=0.81967,1.284027&amp;amp;output=embed"></iframe>
より大きな地図で 新千歳 を表示
帰宅16時頃予定


―山頭火の一句―
行乞記再び-昭和7年-202

7月30日、晴、晴、晴、一雨ほしいなあ!
緑平老から来信、それは老の堅実を示し、同時に私の焦燥を示すものだつた、人生不如意は知りすぎるほど知つてゐる私であるが、感情的な私はともすれば猪突する、省みて恥ぢ入る外なかつた-造庵について-。
今日は特種が一つあつた、私は生来初めて自分で自分の頭を剃つた、安全剃刀で案外うまくやれた、これも自浄行持の一つだらう。

※表題句の外、6句を記す

073001
Photo/青海島奇巌めぐり-’11.05.01


人気ブログランキングへ -読まれたあとは、1click-

あおむけば蜘蛛のいとなみ

2011-07-29 12:00:00 | 文化・芸術
Santouka081130084

―四方のたより― 北の大地へ―第6日

層雲峡から旭川へ、そして小樽へ

<iframe width="425" height="350" frameborder="0" scrolling="no" marginheight="0" marginwidth="0" src="http://maps.google.co.jp/maps?f=d&amp;amp;source=s_d&amp;amp;saddr=078-1795&amp;amp;daddr=43.84668,142.49185+to:43.77456,142.38351+to:43.70675,142.12121+to:047-0008&amp;amp;geocode=FS00mwIddEaFCCmxBEtluy8NXzGMG16TMsGVrg%3BFRgMnQIdykB-CClVpshnEuIMXzGXXz5N7JZSpw%3BFWDymwIdlpl8CCnrbQ2OZOYMXzFctas6OmPNbw%3BFX7pmgId-ph4CCkjK25tt-wMXzGQU6Opi6zHPA%3BFUEDkwId_spnCCk92TBWQuAKXzHRauXQ04OB0g&amp;amp;hl=ja&amp;amp;mra=dvme&amp;amp;mrsp=3&amp;amp;sz=9&amp;amp;via=1,2,3&amp;amp;dirflg=d&amp;amp;sll=43.440955,142.319641&amp;amp;sspn=1.6273,2.568054&amp;amp;brcurrent=h3,0x5f9f59209f6c888b:0x1c3cc3564fce038f&amp;amp;ie=UTF8&amp;amp;ll=43.440955,142.319641&amp;amp;spn=1.6273,2.568054&amp;amp;t=p&amp;amp;output=embed"></iframe>
より大きな地図で 小樽―グランドパーク小樽 を表示
宿泊地―小樽市築港、グランドパーク小樽

―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-201

7月29日、朝曇、日中は照りつけるだらう。
修証義読誦、芭蕉翁発句集鑑賞、その気品の高いことに於て、純な点に於て、一味相通ずるものがある、厳かにして親しみのある作品といふ感じである、約言すれば日本貴族的である。
みんなよく水瓜を食べる、殊に川棚水瓜だ、誰もが好いてゐる、しかし私の食指は動かない、それだけ私は不仕合せだ。
隣室の旅人-半僧半俗の-から焼酎と葡萄とをよばれる、久振にアルコールを飲んだので、頭痛と胃痛とで閉口した。
私はたしかにアルコールから解放された、ニコチンからも解放されつつある、酒を飲まなくなり、煙草も喫はなくなつたら、さて此次は何をやめるか!
山百合、山桔梗、撫子、刈萱、女郎花、萩、等等等、野は山はもう秋のよそほひをつけるに忙しい。

※表題句の外、1句を記す

072901
Photo/イラスト画、秋の七草


人気ブログランキングへ -読まれたあとは、1click-

炎天のポストへ無心状である

2011-07-28 12:00:00 | 文化・芸術
101224103

―四方のたより― 北の大地へ―第5日

知床から網走、サロマ湖へを経て、層雲峡へ

<iframe width="425" height="350" frameborder="0" scrolling="no" marginheight="0" marginwidth="0" src="http://maps.google.co.jp/maps?f=d&amp;amp;source=s_d&amp;amp;saddr=099-4356&amp;amp;daddr=43.94919,144.21068+to:43.65402,143.12369+to:078-1795&amp;amp;geocode=FfcOoQIdBmylCClPSHy418ZsXzE-G28ZziwVQA%3BFYacngId-HqYCCndWD_1FDZtXzEYv_b3egi4XQ%3BFYQbmgId6uSHCClJ5CJerDINXzEkTfrtYz9czQ%3BFS00mwIddEaFCCmxBEtluy8NXzGMG16TMsGVrg&amp;amp;hl=ja&amp;amp;mra=mrv&amp;amp;via=1,2&amp;amp;dirflg=d&amp;amp;sll=43.573427,143.065338&amp;amp;sspn=0.405935,0.642014&amp;amp;brcurrent=h3,0x5f72df802dd8e69b:0x2ee467149f8e29bb&amp;amp;ie=UTF8&amp;amp;ll=43.573427,143.065338&amp;amp;spn=0.405935,0.642014&amp;amp;t=p&amp;amp;output=embed"></iframe>
より大きな地図で 層雲峡―朝暘亭 を表示
宿泊地―層雲峡、朝暘亭

―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-200

7月28日、晴、風がすがすがしい、そして何となく雨の近い感じがする、今日はきつとよいたよりがあるだらう。
よいたよりといへば、昨日うけとつたたよりはうれしいものであつた、緑平老からのたよりもうれしかつたが、幸雄さんからのそれは殊にうれしかつた、それは温情と好意にあふれてゐた。-略-
野百合と野撫子を活けた、百合はうつくしい、撫子は村娘野嬢のやうな風情でなくて-百合のやうに-深山少女といつた情趣である、好きな花だ、一目何でもないけれど、見てゐるとたまらなくよいところがある、西洋撫子はとてもとてもだ。-略-
貧乏はとうとう切手を貼らない手紙を出す非礼を敢てせしめた、それを郵便配達夫がわざわざ持つてきて見せた厚意には汗が流れずにはすまなかつた、それでなくても暑くてたまらないのに、―そしてまた、次のやうな嫌味たつぷりの句を作らないではゐられなかつた。
-略- 長い暑い一日がやうやく暮れて、おだやかな夕べがくる、茶漬さらさら掻きこんで出かける、どこへといふあてもない、何をしようといふのでもない、訪ねてゆく人もなければ訪ねてくる人もない現在の境涯だ、ただ歩くのである、歩く外ないから。―

※表題句の外、4句を記す

072801
Photo/浜撫子の花


人気ブログランキングへ -読まれたあとは、1click-


暑さ、泣く子供泣くだけ泣かせて

2011-07-27 12:00:00 | 文化・芸術
Dc09122652

―四方のたより― 北の大地へ―第4日

摩周湖から野付半島へ、羅臼を経て知床五湖へ

<iframe width="425" height="350" frameborder="0" scrolling="no" marginheight="0" marginwidth="0" src="http://maps.google.co.jp/maps?f=d&amp;amp;source=s_d&amp;amp;saddr=092-0222&amp;amp;daddr=%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E5%B7%9D%E4%B8%8A%E9%83%A1%E5%BC%9F%E5%AD%90%E5%B1%88%E7%94%BA%E7%BE%8E%E7%95%99%E5%92%8C+%E6%91%A9%E5%91%A8%E6%B9%96%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%B1%95%E6%9C%9B%E5%8F%B0+to:43.45866,144.69084+to:43.63425,145.17791+to:43.71631,145.0965+to:099-4356&amp;amp;geocode=FTudmQIdOvWWCCldWrMGvWFtXzEJueLVh8G8FQ%3BFXucmAIdkwGdCCkzY3GcIndtXzFuCQ99jaKnXQ%3BFWQglwIdmM6fCCmFshyWk5ttXzFGHMvEBtIoBQ%3BFUrOmQIdNj2nCClxOQo2mKxtXzFKLEzvsSMRSg%3BFdYOmwIdNP-lCCmtH12WAwBtXzHKmNj5BZiagA%3BFfcOoQIdBmylCClPSHy418ZsXzE-G28ZziwVQA&amp;amp;hl=ja&amp;amp;mra=mrv&amp;amp;via=2,3,4&amp;amp;dirflg=d&amp;amp;sll=43.625141,145.298309&amp;amp;sspn=0.405586,0.642014&amp;amp;brcurrent=h3,0x5f6dbe8831af5767:0xb52ff6439e68bdfa&amp;amp;ie=UTF8&amp;amp;ll=43.625141,145.298309&amp;amp;spn=0.405586,0.642014&amp;amp;t=p&amp;amp;output=embed"></iframe>
より大きな地図で 知床 を表示
宿泊地―知床半島岩尾別温泉、ホテル地の涯

―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-199

7月27日、今日は土用の丑の日。
鰻どころか一句もない一日だつた!
だが、夕方になつて隣室から客人から蒲焼一片を頂戴した。
まことに夢ひときれの丑の日だつた!
だから駄句一つの一日でもあつた!

※表題句の外、句作なし

072701
Photo/川棚、大楠の森の若宮-’11.04.30


人気ブログランキングへ -読まれたあとは、1click-