-今日の独言- 枕を替えよう
そろそろ枕を替えたくなった。
<歌詠みの世界>として塚本邦雄の「清唱千首」を引きながら、独り言として気まぐれに枕を書く形を採ったのは昨年の10月6日からで、昨日まで166稿と別稿が14稿と、ほぼ毎日のように綴ってきたが、ずいぶんと陽気もよくなった所為か、そぞろ浮気の虫が頭をもたげてきたようである。
といっても心機一転というほどでもなく、ちょいと模様替えといった体。第一、千首のほうも本日分を含めて未だ334首だから、過半にも満たず完走からはほど遠いし、四季を一巡すらしていないので、まだまだ続けるべしと思う。そこで替えるべきは枕かと相成るのだが、さてどうするか、なお今夜一晩考えてみよう。
<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>
<春-60>
たちどまれ野べの霞に言問はむおのれは知るや春のゆくすゑ
鴨長明
鴨長明集、春、三月盡を詠める。
邦雄曰く、命令形初句切れ、願望の三句切れ、疑問の四句切れ、結句の体言止めという、小刻みな例外的な構成で、しかも霞を擬人化しての設問、好き嫌いはあろうが、めずらしい惜春歌として記憶に値しよう。晩夏にも「待てしばしまだ夏山の木の下に吹くべきものか秋の夕暮」が見え、同趣の、抑揚の激しい歌である、と。
惜しむとて今宵書きおく言の葉やあやなく春の形見なるべき
崇徳院
詞花集、春。
邦雄曰く、崇徳上皇下命、藤原顕輔選進の勅撰「詞花集」春五十首の末尾に「春の暮れぬる心を詠ませさせ給ひけるに」云々の詞書を添えて、この悲しみを含んだ丈高い一首は選ばれている。三月盡しゆえに「今宵書きおく言の葉」も痛切。千載集・春下に入選の「花は根に鳥は古巣に帰るなり春のとまりを知る人ぞなき」とともに、不朽の惜春歌である、と。
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