里の部屋

日々思ったことを綴っていこうと思います。

天声人語から抜粋

2016年02月19日 | 日々のつぶやき
<「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ>。

<「飛んでるね」と話しかければ「飛んでるね」と答える人のいるむずがゆさ>。

今年も花粉症の季節の到来である。

電車内でも鼻をすする音やくしゃみを聞く。

くしゃみには、憚(はばか)りなしの大音響や包んで隠すような小音あり、出そうで出ない福笑い顔もある。

くしゃみのあとの呪文(じゅもん)は古くからあったらしい。

ある女性の呪文癖も、かなりのものだ。

        


美形にして頭脳明晰(めいせき)だが、たった一つの欠点がくしゃみなのだと言う。

へーイックションと大声で放ったあとに必ず「チクショーこのヤロー」がついてくるのだそうだ。

花粉症の時期は連発し、3回やれば3回、律義に宣(のたま)うと言うから奇癖である。

ご当人によれば祖父の癖がうつったのかも知れないそうな。

ともあれ春は兆(きざ)して、堅かった桜の冬木も心なしか赤みをおびてきた。

地上の命が営みに目覚める中、杉にだけ寝ていてくれと命じるすべはない。

風にうねる杉林から薄黄色の煙幕がわき上がる。敵機総出撃のような映像を見るだけで、ムズムズすると言う人がいる。

「今日は飛んでるね」と、そろそろいい交わされるころか。

目鼻の守りを怠りなく。