<「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ>。
<「飛んでるね」と話しかければ「飛んでるね」と答える人のいるむずがゆさ>。
今年も花粉症の季節の到来である。
電車内でも鼻をすする音やくしゃみを聞く。
くしゃみには、憚(はばか)りなしの大音響や包んで隠すような小音あり、出そうで出ない福笑い顔もある。
くしゃみのあとの呪文(じゅもん)は古くからあったらしい。
ある女性の呪文癖も、かなりのものだ。
美形にして頭脳明晰(めいせき)だが、たった一つの欠点がくしゃみなのだと言う。
へーイックションと大声で放ったあとに必ず「チクショーこのヤロー」がついてくるのだそうだ。
花粉症の時期は連発し、3回やれば3回、律義に宣(のたま)うと言うから奇癖である。
ご当人によれば祖父の癖がうつったのかも知れないそうな。
ともあれ春は兆(きざ)して、堅かった桜の冬木も心なしか赤みをおびてきた。
地上の命が営みに目覚める中、杉にだけ寝ていてくれと命じるすべはない。
風にうねる杉林から薄黄色の煙幕がわき上がる。敵機総出撃のような映像を見るだけで、ムズムズすると言う人がいる。
「今日は飛んでるね」と、そろそろいい交わされるころか。
目鼻の守りを怠りなく。
<「飛んでるね」と話しかければ「飛んでるね」と答える人のいるむずがゆさ>。
今年も花粉症の季節の到来である。
電車内でも鼻をすする音やくしゃみを聞く。
くしゃみには、憚(はばか)りなしの大音響や包んで隠すような小音あり、出そうで出ない福笑い顔もある。
くしゃみのあとの呪文(じゅもん)は古くからあったらしい。
ある女性の呪文癖も、かなりのものだ。
美形にして頭脳明晰(めいせき)だが、たった一つの欠点がくしゃみなのだと言う。
へーイックションと大声で放ったあとに必ず「チクショーこのヤロー」がついてくるのだそうだ。
花粉症の時期は連発し、3回やれば3回、律義に宣(のたま)うと言うから奇癖である。
ご当人によれば祖父の癖がうつったのかも知れないそうな。
ともあれ春は兆(きざ)して、堅かった桜の冬木も心なしか赤みをおびてきた。
地上の命が営みに目覚める中、杉にだけ寝ていてくれと命じるすべはない。
風にうねる杉林から薄黄色の煙幕がわき上がる。敵機総出撃のような映像を見るだけで、ムズムズすると言う人がいる。
「今日は飛んでるね」と、そろそろいい交わされるころか。
目鼻の守りを怠りなく。