コンビニエンスストアが新規出店のペースを落とすとの報道が相次いでいる。コンビニなどが特定地域に大量出店するのは「ドミナント戦略」(高密度多店舗出店)と呼ばれているもので、地域での知名度向上や物流の効率化のほか、「来店頻度の増加」、「加盟店への経営アドバイス時間の確保」、「広告効率の向上」などの効果があるという(セブンイレブン)。
だが「近くに同じチェーンのコンビニができて売り上げが減った」という苦言は昔からよく聞く。労働力不足の近年ではそれに加え、店舗間でのバイトの奪い合いにもなり、高密度出店のひずみが指摘されている。バイト確保のために時給を上げればそれはコンビニ本部ではなく個別店舗の負担になるので経営は厳しくなる。そこで店主やその家族が身を削って深夜の店番をしたりする。今春閉店したセブンイレブンの東日本橋1丁目店では2013年を機に売り上げが大幅に減り、人件費を抑えるために店主や妻、当時高校生だった長男が勤務し、(勤務との因果関係は立証されていないが)翌14年9月、長男は自殺した(朝日新聞2019-4-10)。
昔から疑問に思っていたのだが、同じチェーンがすぐ近くに別の店舗を出すというのは、個別店舗を犠牲にして本部がもうかる仕組みではないのだろうか。たとえばある地域の店が1店から2店になる場合、各店舗の売り上げがもともとあった店舗の6割だったとすると、もともとあった店舗の売り上げは4割減だが、2店合わせれば売り上げは2割増し。本部は大幅な売り上げ増になるが、もとの店舗は大幅な売り上げ減だ。コンビニの「ドミナント戦略」とはこういうものなのだろうか。
コンビニ側の説明は「店舗ごとに商圏を隣接させながら店舗網を広げ」るということで(セブンイレブン)、その通りであれば問題はないはずだが、現実には同じ商圏の店舗数を増やすということが横行しているのではないだろうか。ドミナント戦略の経済学的な分析も(ぱっと見たところ)、チェーン全体の売り上げを伸ばすことしか考えておらず、個別店舗の売り上げは問題にしていないようだ(小本恵照「チェーンストアにおけるドミナント出店戦略の経済分析」)。
コンビニ本部は「新規出店の際には既存店への影響を調査し、新店舗の開店後も社員が既存店と打ち合わせを重ねるなどしてフォローしている。一時的に既存店の売り上げが若干落ちる場合はあるが、売り上げが以前より増える場合もある」という(上記朝日記事)が、既存店の売り上げ減が一時的なのか、売り上げが増える場合もあるというのがどのくらいの割合なのか、きちんとしたデータに基づいて議論したい。
上記のセブン‐イレブン日本橋1丁目店の場合、店から200メートルほどの間にセブンイレブンが他に4店舗、他のチェーンも3店舗あるという。ただ、都心のオフィス街ではある程度の高密度は許容されるような気もする。現に、その店が2010年に開業した時点でもすでに近くに2店のセブンがあったが、売り上げは好調だったという。さらに売り上げ大幅減のきっかけは2013点に近くの別のチェーンのコンビニがセブンイレブンに変わったことだったという。他のチェーンのコンビニの影響は皆無だったのにセブンイレブンに変わったら売り上げを食われた、と読めるがそんなことがあるのだろうか。もう少し綿密な検討がほしい。
仮にドミナント方式が「個別店舗を犠牲にしてコンビニ本部がもうかる」仕組みであることがデータで実証された場合、何ができるだろうか。新規出店自体は、自由競争のものでは規制することはできないだろう。過当競争になって個別事業者が疲弊するのはコンビニに限ったことではなく、資本主義の必然だ。だがコンビニ本部が、フランチャイズ契約を結んだ既存店の利益を大きく損なう行為を制限することはできるのではないだろうか。
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仮にドミナント方式が「個別店舗を犠牲にしてコンビニ本部がもうかる」仕組みであることがデータで実証された場合、何ができるだろうか。新規出店自体は、自由競争のものでは規制することはできないだろう。過当競争になって個別事業者が疲弊するのはコンビニに限ったことではなく、資本主義の必然だ。だがコンビニ本部が、フランチャイズ契約を結んだ既存店の利益を大きく損なう行為を制限することはできるのではないだろうか。
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