原発事故の被災地など8県の水産物の輸入を韓国が禁止していることについて、WTOの上級委員会で逆転敗訴となった件。安倍政権は「敗訴ではない」と言い張っているが、政府の説明はどうも的外れだったらしい(朝日新聞2019-4-23)。
政府は「日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている」と説明している。だがそもそも一審の報告書に「日本産食品は科学的に安全」という記載はなかったというのだ。しかも「韓国の安全基準を十分クリアする」のほうはたしかに一審では認められていたが、上級委はこれを取り消していた。
油断した政府の責任を問われまいとする気持ちはわかるが、上級審報告書の記載に基づかないとんちんかんな主張をしては国際社会に笑われる。アメリカとの貿易協定を「FTA(自由貿易協定)ではなくTAG(物品貿易協定)」と言い張るなど、国内向けの「ガラパゴス解釈」で国際社会の評判を落とすのは日本の国益に反する。
さらに、日本政府は「科学的に安全」を強調するものの、WTOへの提訴はそもそも、輸入規制が科学的な原則に基づくべきとの条文違反では訴えずに、WTOの協定の別の条文の「同一または同様の条件下にある国の恣意的または不当な差別」および「必要以上の貿易制限」という点で訴えたので、「科学的に安全」は訴えの中心ではなかった(同7面)。このような訴えの戦略がそもそも妥当だったかも含めて検証が必要だ。
もちろん、敗因の検証と同時に、これからの対策も必要だ。下記関連記事でも書いたように、そもそも日本の検査だとか安全審査といったものへの信用を取り戻すことも含めて考えてほしい。
関連記事:
「日本が韓国に逆転敗訴したWTO上級委:欠員で機能不全だったはずでは?」
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もちろん、敗因の検証と同時に、これからの対策も必要だ。下記関連記事でも書いたように、そもそも日本の検査だとか安全審査といったものへの信用を取り戻すことも含めて考えてほしい。
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