リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

死刑を論じるときにふまえておくべきこと

2018-09-09 | 一般
日本は先進国としては死刑制度を続けている例外的な国になりつつある.OECD(経済協力開発機構)に加盟する36か国のうちでは死刑制度が存続しているのは日・米・韓のみで,韓国では1997年以来停止しており,アメリカでも半数近い州で死刑を廃止・停止しているという.死刑の是非をめぐる議論もさかんだが,朝日新聞2018-9-9をきっかけに,各論以前にふまえておくべきことを整理しておきたい.

(1)上記記事は,死刑を廃止する主な理由は「冤罪だった場合,取り返しがつかないこと」,「どんな理由であっても殺人を肯定しない」との2点を挙げるが,死刑の是非をめぐる議論を見ていると,前者の視点が抜け落ちていると思えることが多い.「殺人を肯定しない」という点について,日本の世論は「やはり死刑でしか贖えない」罪があるとの受け止め方だと思うが,冤罪だった場合の議論があまりされていないように思う.
日本の裁判では死刑が「やむを得ない」と考えられるには,(1)犯行の罪質,(2)動機,(3)態様,特に殺害方法の執拗さや残虐さ,(4)結果の重大性,特に殺害された被害者の数,(5)遺族の被害感情,(6)社会的影響,(7)犯人の年齢,(8)前科,(9)犯行後の情状を総合的に考えるとする「永山基準」というものが定着している(asahi.com).だがこれは冤罪の可能性は考慮していない.裁判で認定された事実には誤りがないという前提の上に,死刑という量刑が是認されるべき基準を示したものであって,冤罪の可能性は別に考える必要がある.現に死刑囚が再審で無罪になったケースがあることを考えると,冤罪の可能性は軽視できないと思う.

(2)上記記事の専門家によると,ヨーロッパで死刑廃止が進んだのは政治家主導でのことだったという.つまり,一読者がいう「死刑を廃止した各国では,必ずしも国民の多くが廃止を望んだわけではない.むしろ世論は存続であった.」という指摘は正しいのだろう.世論はもちろん大切なのだが,不人気な政策であっても政治家が決断しなければならない場合もある.(だからといって国民が反対するカジノを強行することなどはやめてほしいのだが,その線引が難しい.)

(3)同じ専門家は,死刑を廃止・停止した国の一部では,他の刑の厳罰化が進んでいるという.日本でも現行の「無期刑」の代わりに「終身刑」を導入してはどうかといった議論がされることがある.終身刑については死刑より残酷,というような指摘もあって私にはわからないが,単に「死刑を存続させるか廃止するか」ではなく,刑罰の体系全体として考える必要がある.


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