リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

フェイクニュース拡散防止のためのアカウント封鎖はどこまで許されるか

2018-09-10 | 一般
ソーシャルメディアが2016年のアメリカ大統領選にロシアが介入する足場として利用されたことをきっかけに,フェイスブックやツイッターなどは偽アカウント削除などの対策を進めている.その結果,トランプ大統領に近い極右ページなどが次々に削除されており,トランプ大統領は「彼らは『右』の多くの人々の声を封鎖している」と怒りをあらわにしている(朝日新聞2018-9-8).
一応「リベラル」な私は極右ページが削除されていると聞くとつい安心してしまうのだが,何度も言うように,この手の問題は,きちんとした道理に基づいて行なっていることを確認しておかないと,いつの日か自由な言論を弾圧する手段に使われてしまう.
今回の場合,フェイスブックやツイッターが行なった自主規制というのはどのようなものなのだろうか.

フェイスブックは8月に偽アカウントなど652件を削除したという.「偽アカウント」の削除なら問題ないだろう(その判定基準はきちんと検証しているとして).ロボットで次々にアカウントを作成して多数意見に見せかけるようなことは禁止して当然だ.一方,人海戦術で不審なアカウントを毎週1千万個見つけて対処しているというが,アカウント削除の652件との差が気になる.削除以外にどのような対処をしたのだろう(アカウント主にメールを送って説明を求め,妥当な説明がなければアカウントを削除する,などだろうか?).
一方,トランプ大統領の熱烈な支持者で「陰謀論」を流す極右サイト主催者アレックス・ジョーンズ氏の関連ページもフェイスブックから削除されたという.ジョーンズ氏(またはその仲間)が自分のアカウントで発信しているのであれば,その内容が「極右」であろうと,削除はまずいのではないだろうか.ツイッターもジョーンズ氏関連のアカウントを永久停止したが,その理由は動画が「口汚い行動」にあたるということだった.たしかにネット上での罵詈雑言は見るに堪えないが,これもやはりアカウント閉鎖の理由として正当化するのは危険なのではないだろうか.もちろん,ヘイトスピーチといった内容になれば許されないというのが社会通念になっているようだが,ヘイトスピーチ禁止にしても右派にとっては「言論弾圧」ということになる.きちんとした基準に則って,説明できるような運用にしてほしい.

そしてそもそも,こういう規制をするのが企業でいいのか,政府による規制をすべきではないかという議論も持ち上がっている.日本では政府による介入の口実を与えないためにも業界できちんと自己規制しましょう,という話になることが多いと思うのだが,どちらが正しいのだろう.

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関連リンク:
「Twitter、偽情報対策強化--1日100万超のアカウント停止との報道」(cnet)
"Twitter is sweeping out fake accounts like never before, putting user growth at risk" (Washington Post)
"How Twitter is fighting spam and malicious automation" (Twitter)


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