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リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

「不自由展」再開で残った課題

2019-10-09 | 政治
「あいちトリエンナーレ2019」で中止に追い込まれた「表現の不自由展・その後」が再開になった。テロや脅迫を含む抗議電話で気に入らない展示を中止に追い込めるという悪しき前例にかろうじて歯止めがかかったが、まだ手放しで喜べる状況ではない。残された問題は、いくつかある。

(1)再開はなったものの、さまざまな制限が課されている。混乱を防ぐために入場者数を制限し、身体検査もされるあたりはやむを得ないが、初日は30人ずつ2回に分けた入場で、計60人しか見られないというのはあまりに少なくないか。しかも身分証も確認する(朝日新聞2019-10-8)というのはいかがなものか。テロ対策なら監視カメラのほうが妥当ではないか。今回のような政治的な内容の場合、身分を明かさないと観覧できないというのは気味悪く思う人も多いはずだ。
ここまでがんじがらめの再開だと、やはり言論の自由が守られたと喜ぶ気にはならない。鑑賞のための厳しい制限を課しただけでも攻撃者にとっては成果といえるのではないか。
図書館や公民館でも、気に入らない図書(『はだしのゲン』とか、慰安婦問題の書籍とか)を開架から書庫に移させる動きがあるのを懸念している。
安全上の配慮のほかはもっと自由に鑑賞できるようになるべきだ。

(2)抗議対策は難しい。動画撮影禁止は他の入場者への配慮という点で妥当と思うが、SNSでの拡散防止の誓約書を書かせるというのには驚いた。展示中止の検証委員会の中間報告が「SNSで拡散される映像のみを見る人には説明は通用しない」というのはそのとおりなのかもしれないが、電凸とちがってSNSでの炎上はやむを得ないのではないか。「炎上」に関わっているのは実は驚くほど少人数だというが(過去ブログ)、今回の件に限らず、同一人物によるスパム投稿をプラットフォームが規制する、という方向の対策が望ましいのではないか。
それにしても、抗議電話に対する対策は私は不十分だと思っていたのだが(過去ブログ)、県などに約200本の電話があり大半が再開への抗議だったというが、大きな混乱は報道されていないところを見ると、奏功したとみていいのだろうか。以前にも書いたが、最初に「不自由展」を中止に追い込んだ電話抗議の分析(そして度を越した件については警察への通報を含めた対応)が必要だ。
それにしても、河村たかし・名古屋市長は会場前と愛知県庁で座り込みを行って抗議の声を上げたという(朝日新聞2019-10-9)。自分の考えを表明するのはもちろん「言論の自由」だが、政治家の発言は影響力が大きい。他者の言論を制限する主張を政治家が先頭に立って行なうというのはいただけない(過去ブログ)。

(3)そして国からの交付金の全額不交付問題。過去ブログで述べたようにあまりに不当だ。撤回に向けて運動を盛り上げていかなければならない。

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