リベラルくずれの繰り言

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アマゾン「協力金」要請問題:物流コストは誰が負担するべきか?

2018-03-17 | 一般
アマゾンが販売額の一定割合を「協力金」としてアマゾンに上納することをメーカーに求めたとして,独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた(朝日新聞2018-3-16同3面).アマゾンが挙げる理由は物流費の高騰だ.「送料無料」を謳うアマゾンの陰で,運送業者が割引価格で輸送を受け持ち,待遇の悪さから人手不足が悪化していたことから,荷主に値上げを求める動きが広がっていた.アマゾンもこの1月になってようやくヤマトホールディングスの値上げを受け入れたという.
そこで目を付けられたのが納入元のメーカーだ.2017年11月以降,メーカーなどへの説明会を開いて,「ベースコープ」と称して協力金の支払いを要請したという.「利益率の悪い商品は取り扱いが難しくなる」と説明したとの証言もある.リベートを払わなければ利益率が悪化するのでアマゾンで扱わないぞ,ということだ.拒否したり交渉で減額させたメーカーもあるらしいが,泣く泣く要求を呑んだところもあったのではないだろうか.メーカーとしても,「それならアマゾンでは扱ってもらわなくて結構」と言いたいところだろうが,やはり市場でのアマゾンの存在感は圧倒的だ.私自身,アマゾンが強すぎるとの思いからできるだけリアル店舗や別のオンラインショップを使うよう努力しているが,それでもアマゾンを使わざるを得なくなることも多い.
アマゾンにはむたいな協力金要請をやめよと言いたいところだが,記事によれば,大手企業による取引先への要求は結果的には消費者へのサービスを充実させることにつながっているとの見方もあって,完全にクロと認定するのは難しいという.たしかに影響力のある大手企業がリーダーシップを取って,消費者のためにならない業界を改善していく,というケースもあるのかもしれない.素人考えでは今回の「協力金」がそれに当たるとは思えないのだが,そこは厳正な捜査を待ちたい.
その前提になるのが実態把握だ.今回は「説明会」を開いたというから少なくとも不透明な要求ではなかったのだろう.これがもし個別企業への要請で守秘義務まで課されたりしたら,表面化するのが難しかったかもしれない.そのようなケースでも,被害(?)企業が二次被害を受けることなく公正取引委員会に情報提供する制度はあるのだろうか? 関係者には確認を願いたい.

なんでこんなことになってしまったのだろう.上記のように物流費の値上げが直接のきっかけだが,値上げが間違っていたとは思えない.ネット通販が当たり前になった現代の重要なインフラとなっている物流業者で働く人々がまっとうな待遇を受けられるようなコストを荷主が負担するのは当たり前だ.記事でも指摘が紹介されていたが,やはり物流コストを吸収できなくなったのなら消費者に負担を求めるべきであって,納入元に協力金を要求するのはおかしいと思う.
送料が上がれば「リアル店舗で探してみよう」という人が増えてネット通販の売り上げに響くことは予想できる.だが適正な送料を消費者に負担させることは,ネット通販とリアル店舗の間の「公正」な競争のためには必要なことではないだろうか.

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関連リンク:
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