リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

返還される米軍用地の土壌汚染:原状回復は誰が責任をもつべきか

2018-06-13 | 一般
日米地位協定では米兵による犯罪を日本側が捜査できないなどいろいろな問題があるが,米軍の軍用地を返還するときにダイオキシンやPCBで土壌が汚染されていても,アメリカは原状回復義務が免除されているという(asahi.com島袋夏子「米軍から “汚染された土地” が還ってくる! 」).そんな問題が表面化したのは2013年のこと.1987年に返還された土地にある沖縄市のサッカー場でダイオキシン汚染がみつかった.そのような土壌汚染は沖縄本島全域に広がっているそうだ.
日本は属国扱いか,と情けなく思ったが,あまり追求しすぎるとアメリカとしては基地用地の返還にますます後ろ向きになってしまう.残念だが,米軍用地は,日本が侵略戦争を起こして負けた代償として占領されたもの(1951年の日本の主権回復時に「接収」から駐留軍用地特措法による提供となった).返してもらうのに原状回復までは言えないのではないか.

米軍人のために立派な住宅を提供したりする「思いやり予算」などは面白くないが,返還地の原状回復を日本政府が引き受けるのは仕方がないように思える.

問題は,日本政府がきちっと対応するのではなく,しばしば政府・地元自治体・地主の間で責任の押し付け合いになることだ.1995年の返還特措法施行までは日本政府が原状回復をする際の土壌汚染のチェックも定められていなかったという.そのため,米軍が廃棄を認めなかったりすると,地主や自治体が返還前からの汚染であることを立証しないと日本政府は対応してくれない.また,返還前から民間業者が産廃置き場にしていたケースでも,国は責任がないと申し立てているという.

2011年に東京のスーパーの敷地で放射性物質がみつかった時のやりとりによれば,所有者が不明の場合は処理は土地所有者の責任になるのが原則だという.おそらく放射性物質以外の汚染でも,法律上の原則は同じではないか(ちなみに,所有者不明の埋蔵金の場合は発見者と地権者で折半になるらしい).基地の汚染の場合,米軍のものだとはっきりすれば日本政府が引き受けるのだろうが,1995年以前の汚染について,立証責任を地元や地主に負わせるのは酷なような気がする.一時期米軍の使用下にあったという特殊事情を考慮して,ある程度の支援があってもいいように思うがどうだろうか.

追記:「米軍返還地、残る弾薬・廃棄物 世界遺産候補地「国の除去ずさん」 沖縄・北部訓練場跡」朝日新聞2019-12-16によれば、明かな米軍由来の危険物であっても日本政府はまともに対応していないようだ。2016年に返還された米軍北部訓練場の跡地では米軍の空包や長さ数メートルもの巨大な鉄板などが次々にみつかっているという。国は1年かけて「支障除去」をしたというが、4千ヘクタールもの土地の処理がそもそも1年でできるのか、世界自然遺産への推薦に間に合わせるために形ばかりの処理をしたのではないかとの指摘がある。それにしても、「不十分でした」というレベルではなく、本気でやったとは思えない。これほどのめちゃくちゃをされてもまだ国民は怒らないのか。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ソーシャル時代の護身術(2)... | トップ | 「多数決で決めて何が悪い」... »
最新の画像もっと見る

一般」カテゴリの最新記事