リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

「多数決で決めて何が悪い」に対する反論は?

2018-06-18 | 政治
カジノを含む統合リゾート(IR)設置法案が先週,自民党・公明党による強行採決で衆院委員会を通過した.安倍政権下ではすでにおなじみの光景となった感がある.野党やメディアは,十分に時間をかけて審議し,少数派の意見もくみ上げる努力をすべきだと言う.
一方,与党の側からすれば,話し合っても平行線なら最後は多数決で決めるしかないではないか,という声もあるだろう.「きちんと審議を」は,選挙で負けた少数派の遠吠えでしかないのだろうか.もしそうならひとたび議席の多数を得た与党はなんでもやりたい放題だ.

私はカジノは許せないと思っているが,法案の中身への賛否を差し引いて「多数決で何が悪い?」と考えたとき,「話し合っても平行線」なら多数決を批判する論拠を持ち合わせていない.

ただ今回のカジノ法は全251条あり,約20年前の介護保険法(215条)以来の大型法案だ.多数の論点があり,「話し合っても平行線」というのは,その一つ一つについて十分な議論を尽くした後のことでなければならない.特に,法律成立後に政令などで決めるとしている項目が331もあるが,その中には,国会審議を経ずに決めていいとは思い難い重要な点も含まれる(「カジノ「小さく生んで大きく育てる」を許すな」でも書いた).
今回のカジノ法案について,多数の論点をすっとばして採決に持ち込んだことは,やはり「多数決は当然」として擁護できるものではない.
安倍首相はカジノ解禁に国民の不安が根強いことに関し,法案成立後に国民に説明する「全国キャラバンを今後実施する考えだ」と述べているが(asahi.com),その説明とやらをまず国会で行なうべきだ.
公明党の選挙の都合もあって(「公明党の選挙のためにカジノ法案を急ぐな」参照)政府は国会会期を延長して今国会での成立を期しているようだが,やはり問題点を積み残しにして成立を急ぐことは許されない.

関連記事:
「カジノ法案「訪日客増で景気浮揚」はまやかしだった」
「カジノ「小さく生んで大きく育てる」を許すな」
「カジノで訪日客が増えて受け入れられるのか」
「公明党の選挙のためにカジノ法案を急ぐな」
「カジノ誘致自治体の住民はカジノを支持しているのか?」
「公明党はなぜカジノ法案に反対しない?」

関連リンク:
日本弁護士連合会「カジノ解禁に反対するQ&A」(pdf)

追記:民主主義の限界と可能性に関する日独哲学者の対談(朝日新聞2018-6-19)でも,「民主的に決めれば何もやってよいわけではない」として権力といえども憲法の制約を受ける立憲主義の考えが提示され,「だれかを拷問するかどうかを民主的な投票で決めてはいけない」と例示された.
質疑応答では多数決も話題になり,日本で民主主義=多数決となる傾向は「変なこと」と指摘され,ドイツでは多数決ではなく合意形成が重視されると紹介されたという.


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