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3-3 色好みの恋とその終焉 平中 (平貞文)

2024-01-16 09:51:09 | 色好みの代表 平中-平貞文
色好みの代名詞 平中
  馬場あき子氏著作「日本の恋の歌 ~貴公子たちの恋~」一部引用再編集
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3-2 からのつづき

3-3 色好みの恋とその終焉 平中 (平貞文)

   言の葉の人だのめなる憂き露のおきていぬるぞ消えて悲しき 女

   (慰めてくださるお言葉は本当に頼もしく思っていますけど、はかない情の露を置いて朝にはお帰りになってしまうと、私は露が消えるように心も消え消えとなって、悲しさに沈むのです)

   あはれあはれおきて頼むな白露は思ひに草の葉やかるるとぞ 男

   (ああなんと悲しいことを仰しゃるのか、白露の私は草葉に宿りながら何を頼みとしたらいいのか。草葉は露のあと陽に枯れ(離れ)るというではありませんか)


  男女の間があまりに濃密に満たされている時、かえってその円満に翳(かげ)が差すのを怖れるような思いが湧く。色好みの風流な恋を楽しもうとして出発した二人のこの贈答をみると、変貌した女のいじらしさに驚きつつ二人の愛が長くつづくよう祈りたくなる。
  しかし愛はなかなか永続することはない。こうしたよき歳月のつづいた後、男は少しずつ女から遠ざかってゆく。嫌いになったわけでもないのに、より新鮮な感銘がほしくなり、知りつくした所から未知の世界を求めて漂泊しはじめるのである。

  男はまず難波の方に旅に出ようと思う。面白いのは、「すぐ帰ってきますよ」という心の証に、「但馬の国のたにもかく」を女のもとに残してゆくというのだ。「たにもかく」とは「かえる」のこと、つまり「たぢまぢのかへる」である。濁点は消せば誓約のことばになる。本当にそんなものを贈るはずはないから、絵などに描いたものだろう。女は、もし長逗留になるなら私は死んでしまうだろうという歌を詠み、男はそのいとしさについに旅立ちを思いとどまったほどだった。

  しかしながら、こんな二人の愛も終わりを迎えるのである。それが色好みの恋の約束ごとのようなものだ。円満に末長く添いとげる色好みなどはあり得ない。ましてこれは色好みを互いに認めあってはじまった恋である。恋の情感が古くなることは許されないことだ。二人の間には久しい空白が生まれていった。
  そして相互に、あの蜜月は本当に忘れがたい心尽くしの日々だったかが内包されてゆく。「忘れやしぬらん」という不安とともに、なつかしさの情が濃くなる。そして二人はもう一度歌を交わす。けれどその仲は戻ることはない。この恋は忘れられない日々を回想の中に残して終止符をうったのである。

    うちとけて君は寝ぬらむわれはしも露とおきゐて思ひ明かしつつ 男

     かへし

    白露のおきゐてたれを恋ひつらむわれは聞きおはず石上(いそのかみ)にて 女


^^^^^^^^^^^「平中物語」から抜粋編集
さて、そのころ、ひさしく行かざりければ、男、いとほしがりて、またつとめて、かくなん。

  うちとけて君は寝ぬらんわれはしも露とおきゐて思ひ明かしつ

と言ひたるに、この女は、夜一夜(よひとよ)、ものをのみ思ひ明かして、ながめ居たるに、持て来たりける

  白露のおきゐてたれを恋ひつらむわれは聞きおはず石上(いそのかみ)にて

この女の住みける所をぞ、「石上」とはいひける。

***********翻刻
さてそのころひさしくいかさりけれはおとこいとほしかりてまたつとめてかくなん

うちとけてきみはねぬらん我はしも露とおきゐておもひあかしつ

といひたるにこの女はよひとよものをのみおもひあかしてなかめゐたるにもてきたりける

白露のおきゐてたれをこひつらんわれはききおはすいその神にて

女のすみけるところをそいそのかみとはいひける又このおなしをとこ女ともありけり

*投稿者:私には難解。この例はたぶん女の方の気持ちが変わった感じでしょうかね。

おわり

参考 馬場あき子氏著作
 「日本の恋の歌 ~貴公子たちの恋~」


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