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続編1 三島由紀夫 命売ります 改変(悪)版

  改変(悪)短縮版です。興味を持った方はぜひ文庫本を読んでください。

  次の客は病気の母親を慰めて欲しいという少年だ。父親の死後母親が性的不満にガマンできず、男を拵えるがすぐに逃げられ、すでに十二、三人が真蒼になって逃げた。少年は、「母親は吸血鬼なんだ」と言う。
  羽仁男は母親に会いに行き、長襦袢を脱がせると、少年の母親とも思えぬ肌の若さに驚いた。肌は白く陶器のようだった。羽仁男は常ならぬ昂奮を感じて抱きかかったが、母親は蛇のように身をくねらして、いつのまにか羽仁男が下になっているように誘導した。
  羽仁男はふしぎな陶酔のうちにあった。「はじめは腕からね」と夫人は囁くように言った。女の咽喉が何かを飲み込む音がした。それが自分の血だとわかったとき、羽仁男は旋律した。「おいしかったわ、ありがとう。今夜はこのくらいね」と、灯りの下に、近づいてきた女の唇には、血がついていた。
――それから羽仁男はこの家にずっと住みつくようになった。
  毎夜毎夜血を吸われ、次第に危険な場所が傷つけられ、静脈がひらかれ、吸われる血の量も増した。羽仁男が泊まったあくる朝から、夫人は見ちがえるように元気になった。羽仁男は体力が衰え、やっと柱につかまって立つような体力だ。
  「私ね、もうあなたの静脈の血に飽きたの。あしたの晩は、いよいよ動脈の血が欲しいのよ」
  「つまり・・・僕の死ぬときだね」
  「そう。・・・ずっと、どこの動脈にしようかと考えていたんだけど、やっぱり頸動脈がいいと思うわ」
  「好きにするさ」
  「あなたの動脈の血を十分呑んだら、私はこのまわりの石油ストーブをみんな倒して、この家を焼いてしまうつもりよ」
  「そうして君は」
  「焼け死ぬだけよ。バカね」
  いよいよ死のうとしていた夜、羽仁男は夫人と散歩中に気を失ってしまう。
  羽仁男は病院で気がついた。傍にいた看護婦が「重症の脳貧血です」と説明する。そのうち、サイレンの音をいろいろの方向からきいた。夫人の家の方向に火が炎上しているのが見えた。

  ある日、客の少年が来た。「僕、羽仁男さんに感謝しています。自殺か放火か自然発火だかと騒いでいますが、どっちみち、おふくろが死んじゃったから文句はないでしょう」
  
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