清少納言の恋の場の歌 2.
馬場あき子氏著作「日本の恋の歌」~恋する黒髪~ からの抜粋簡略版
たのめたる夜見えざりける男の後にまうできたりけるに
出で逢わざりければいひわづらいて、つらきことを知ら
せつるなど、いはせたりければよめる
よしさらばつらさは我にならひけり頼めて来ぬは誰か教へし 「詞花集」雑上
「清少納言集」「Ⅰ」の詞書を参考にすると、約束して待たせた夜をすっぽかした男が、その後久しい無沙汰の後やってきて「み心のつらさにならいにける」(あなたがいつも私につらくされるお心のまねをしたんですよ)などといった時の返事になっている。この場面の方がわかりやすいかもしれない。「詞花集」の方では、すっぽかしを味わった後の清少納言が、仕返しのように男に逢ってやらなかったので、「つらい目にあわせるのですね」などと男が欺いた時の歌になる。歌は、「つらい思いを味わうことは私に教えられたと仰しゃる。それなら約束して来ないというすっぽかしは、いったい誰が教えたのですか」というもので、「私は教えない」とすれば、「そんなことをして平気な女などとつき合っておいでなのですか」という皮肉とが二重の物言いになっている問いかけの妙味がある。
続く(かもしれない)