初夏の風物詩である浅草三社祭が終わると、いよいよ関東地方も夏の到来である。
我が家では、この季節に最も夏を感じるのは、南の風が運んで来る新木場からの材木の香りだった。
そう言えば、3年前のちょうど今頃、私は車のトランクにタックルを忍ばせ、夜明けの中央道を長野へ向かって走行していた。
早朝出発したのは、仕事の前にひと振りしようという企みがあったからである。
ところがその日は、前日まで降り続いた雨の影響で、あいにく川は増水し濁りが入っていた。そこで急遽予定を変更して『槻の池』というポンドスタイルの管理釣場へ行ってみる事にした。
『槻の池』は、八ヶ岳が望める高原避暑地の一画にあり、釣場へはゴルフ場や別荘が立ち並ぶ場所を通過して行かなくてはならないのだが、普段ゴルフや別荘などというものに縁の無い私は、綺麗に整備された広大な敷地に戸惑うばかりであった。
ところが、池に着いてみると、どこかの管理釣場のように、魚が多過ぎるという事も無く、コンディションの良い魚が多かった。しかも、日中からモンカゲロウのハッチがあって、綺麗なニジマスが大きなドライフライに飛び出して来たのである。
私はその日の仕事を早々に片付け、夕方には再び『槻の池』でロッドを振っていた。
ところが、ライズは頻繁にあるものの、何故かドライフライには全く反応が無い。そこで試しにモンカゲロウのスイミングニンフを泳がせてみたところ、突然大きなニジマスが追って来て、フライをくわえ反転した。そして、向こう岸まで到達してしまいそうな勢いで走り出し、危うく50ヤードのバッキング全てを引き出されそうになった。上がって来たのは、60センチを超える素晴らしいコンディションのニジマスだった。
もう今頃は『槻の池』だけでなく、あちこちでモンカゲロウがハッチしているに違いない。
そして、そのモンカゲロウを捕らえようと、ニジマスやブラウン達が水面下で動き回り、湖面を盛り上がらせているのだろう。そう思ったら、もう居ても立ってもいられなくなって来た。
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