再読のための覚え書き
禁断
若杉慧(1903-1987)
瀬戸内海の島。
国民学校の女学生の内藤みふねは、受け持ちの教師花巻貞雄の個人教授を受ける。夜の宿直室に通ううちに、いつしか二人は教師と生徒以上の関係になってしまった。
みふねの妊娠を知った花巻は、船で尾道に渡り、処置を求めてみふねとともに産婦人科を探すのだが……。
「わたしが子供であることを知りながらどうしてみんな意地悪く大人扱いするのだろう。私を救ってくれる人はいないのだろうか?わたしがわたしを救うほかには?そしてその方法は?……」
若杉慧の「エデンの海」が生を求める話ならば、この「禁断」は生を拒む話。乾いた文体は、二人の焦燥と苦悩が描き、やがてサスペンスのような緊張感を高めてゆく。
2022.9.12読了
禁断
角川文庫
昭和32年9月30日初版発行
昭和33年7月20日再版
旧仮名遣い
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