再読のための覚え書き
松風
石塚友二(1906-1986)
作者自身の結婚を描いた私小説。
東京に出てきて独り暮らしの「私」はもう35歳になり、郷里の両親は、自分の結婚を今か今かと待っている。
ある日、友人が留守中の「私」の家を訪ね、「良い女性を紹介したい。君のことを知っていて、君となら一緒になってもいいそうだ」という旨の書き置きをする。
しかし、「私」にはその女性の見当がまったくつかないものの、冷え込んだ心に温もりを感じた。「私」は長年恋焦がれた女性に失恋したばかりだったのだ……。
「窮乏を厭わぬ心底から噴き上がる凛々しい品位には、恥ずべきことながら私には過ぎた嫁かも知れぬと、どこかで首肯させるものがあった。願わくはこの謝意に似た思いが愛情に変わって行かんことを、と私は念じた。まことに念ずる思いに堪えなかったのである。」
2023.1.4読了
松風
角川文庫
昭和30年11月10日初版発行
旧仮名遣い
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