勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

偏見は誰の心にもある

2006-11-24 | 映画のお喋り
クラッシュ】 2004年・アメリカ
 監督・原案:ポール・ハギス
 出演:サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、他


あの名作『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本を書いたハギスの監督デヴュー作品。
2005年度のアカデミー賞作品賞・脚本賞を受賞している。
(詳しいストーリーはリンクしてる映画の公式HPに飛んでください)

人種偏見をテーマにしているが、攻撃的でも思想的でもない。
淡々と登場人物のドラマを描いている。
様々な人種がそれぞれの背景を背負いながら、この映画の中で交錯して行く。
登場人物が多すぎて、名前と顔を覚えるのがちょっと大変。
だが繊細な織物のように紡がれた個々のストーリーが重なっていくにつれ、そう言う煩わしさは消えていく。

映画を見終わった最初の感想は、LAには住みたくない!だった。
人種問題でこれほど緊張しながら生きていくのは、やはり能天気な日本人には無理なんじゃないだろうか。

だが・・・と考えてみた。
この映画において、白人至上主義・人種差別主義者の代表みたいに思われているライアン(マット・ディロン)だって、そんなに悪い人じゃない。
自分の命を賭けて、爆発寸前の車の中からアフリカ系の女性を救い出している。
しかも逆差別(マイノリティ優遇政策)によって、父親の会社は倒産。
17年も警察で働いているのに、病気になったその父親に満足な医療を受けさせてやれないほど貧しい。

一方で、ライアンの行動に嫌悪感を抱き、嘘をついてまで相棒を辞めてしまった若い警官・ハンセン(ライアン・フィリップ)は、まったく人種偏見がない模範的な若者に見える。
実際そうなのだろう。
だが夜のハイウェイでアフリカ系のちょっと悪そうな若者のヒッチハイクに応じた後、車内で緊張し続ける。
そしてズボンのポケットのふくらみを見て、銃であると思い込む。
この誤解が、その後の悲劇を生むわけだが・・・。

偏見の塊のようなライアンが任務であればアフリカ系女性の為に命を賭け、好青年のハンセンがちょっとした誤解からアフリカ系の青年を・・・。(ネタバレになるので言い切れないが)

ほんの少しの切っ掛けがあれば、異人種同士の緊張感は憎悪にまで変化するのだ。
その人の性格も、背景も、主義もない。
肌の色の違うものに対して、人はこうまで違和感を持つ。
誰の心の中にも、人種や国や思想に対する偏見は潜んでいるのだ。

堅い話になってしまったが、映画はストーリーがよく出来ているので面白い。
重すぎもせず、暗すぎもせず。
気持ちを入れ替えて、明るい将来に向かう人たちがいる反面、不幸な結末で終わってしまう人たちもいる。
リアルな人生ってそんなもんだし。
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