勝手にお喋りーSanctuaryー

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ナルニアには行きましたか?

2006-11-12 | 映画のお喋り
去年の5月に【ナルニアに行ける!アスランに逢える!】と言う記事をエントリーした。
児童文学の名作古典『ナルニア国物語』を映画化というニュースを読んだ時だ。
ファンタジー小説の原点と呼ばれる『指輪物語』が映画化され、近年のベストセラーファンタジー『ハリー・ポッター』が映画化され、でも『ナルニア』はないんだろうなと思っていた矢先のことだった。

嬉しかったし、期待もした。
が、同時に不安が胸をよぎった。
映画化するのはあのディズニーなのだ。
『人魚姫』(リトル・マーメード)をあそこまで改悪してしまった〔あの〕ディズニーなのだ。
(何故改悪かは、言わなくてもわかる人はわかると思う)

だが映画化が話題になり、BBC(イギリスのTV局)製作の『ナルニア』シリーズのDVDがレンタルに登場した。
映画を見る前に、信頼の置けるBBCから始めようとレンタルした。
制作費が足りないのが丸見えの着ぐるみだったりアニメだったりで、その分は映画に期待しようと思った。
ただし、内容は原作に1から10まで忠実。
セリフの一つ一つまで原作どおりだったし、主役のアスランのCGだけは豪華だった。

そしてついに映画公開の日がやってきた。
感想は『リトル・マーメード』にならなくて良かった、がまず第1だった。
公開時と、DVD発売時のネタバレは嫌なので、詳しいことは後にとっておくことにした。
やっと暇が出来、DVDをレンタルしてきたので早速・・・。

ナルニア国物語 第1章・ライオンと魔女
   監督:アンドリュー・アダムソン
   出演:アスランの声―リーアム・ニーソン
      白い魔女―ティルダ・スウィントン
      ピーター/ウィリアム・モーズリー、スーザン/アナ・ポップルウェル
      エドモンド/スキャンダー・ケインズ、ルーシー/ジョージー・ヘンリー


まず最初に、どうしても言っておきたいことがある。
この映画の主役をぺペンシーの兄弟・姉妹4人だと思うのは間違いだ。
主役は『ナルニア』と言う異世界であり、原作全7巻すべてに登場するただひとりの人物である『アスラン』なのだ。

映画を観る人は当然「人間」なので、異世界への案内役として子供たちが登場するに過ぎない。
彼らに個性は殆どなく、むしろビーバーさん夫妻やタムナスさんの方が「人間味」に溢れている。
そういう物語なんだと思わないと、この映画(原作も)見るのが辛くなる。

好きな原作を映像化される時、もっとも心配なのはストーリーが改悪されていないかだ。
そしてもうひとつは、主役や思い入れのある人物がイメージどうりかだろう。
その点でこの映画は合格だ。
主役である『ナルニア』の風景描写がすばらしくきれいだ。
もうひとりの主役の『アスラン』のCGも、威厳のある風貌も性格も文句がない。

ただストーリーの方はと言うと、原作知らない人には「?」な部分が多いんじゃないかと思う。
製作者の心情はわかる。
「冒険ファンタジー」と銘打ってしまった限り、やはり見せ場は作らなければならない。
だから氷の割れかかった川を敵に追われながら逃げるシーンとか、山場の戦場シーンにやたらと力を入れる。

反面ビーバー夫妻の漫才のようなやり取りがカットされていたり、アスランが来たことで白い魔女の力が弱まり、春の芽吹きに心躍らせるシーンがないがしろにされてしまった。
ビーバー夫妻の案内でアスランの元へ向かう旅は、厳しい冬の最中の辛い状態から、一気に春の楽しいピクニックのようなものへ変わるんだが。

アスランが来たからもう大丈夫―誰もがそう感じる。
だからこそ、その後の(ネタバレ!)アスランの死へのショックにつながるのだ。

もうひとつだけ不満を言わせてもらえば、普通の子供が戦場で指揮を執るなんてあり得ないと、映画は感じさせてしまうことだ。
サンタクロースからプレゼントされたピーターの剣と盾には、無論魔法がこもっている。
さらに秘密警察長官モーグリム(オオカミ)と戦って勝利を得た後、ピーターはアスランから騎士に叙勲されるのだが、当然ここでアスランから力を与えられる。
つまりこの時点で、ピーターはもう普通の子供では、いや子供ですらなくなっているのだ。
この点が恐ろしく説明不足だった。

一方裏切り者ユダの役を担った次男のエドモンドは、よく描かれていたと思う。
ピーターとの確執からくる反抗的な態度、白い魔女の変貌に驚き、自分がしてしまったことに気付く経緯など、原作より深い。

彼は魔法の剣こそ与えられなかったが、白い魔女との取引で戻ってこられた後、アスランと二人きりで長い話をしている。
この時、彼は初めて自分を変えてしまった負の感情から解き放たれ、ピーター同様大人の騎士として生まれ変わる。
そしてセントールのオレイアスを石に変えてしまった魔女のステッキを折って、味方に貢献する勇気を得るのだ。
(ここも説明不足だったか)

タムナスさんとルーシーの友情部分までは原作に忠実だったのに、ビーバー夫妻の家辺りから、言い出すとキリがないほど変わっていくのはちょっと淋しかった。
夜のシーンも暗すぎて、アスランの亡骸からロープを切り取るネズミの活躍がはっきりわからなかった。
ここのシーンから第2章に登場する、私がもっとも好きなキャラクターであるネズミのリーピチープにつながるのに。

まあ、全体的には原作に忠実だし、何より美しい映像に免じて水に流そう。
ちなみに作者のルイスが神学者で、この「ライオンと魔女」を通してキリストの処刑と復活を子供にもわかりやすく描いたなんて話は蛇足だろう。
衣装ダンスを抜けたら、そこは一面の銀世界。
ルーシーの驚きと感動と好奇心を一緒に体感できれば、それだけで面白い映画になる。
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