勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

石油は政治と人を変える

2006-11-22 | 映画のお喋り
昔、人々は黄金を求めて殺し合った。
今、人々は石油の利権を巡って殺し合っている。

石油産出国の王位継承権を持った王子の決断ひとつで、人々の運命が回り始める。
アメリカ司法省、CIA、大手石油会社がそれぞれの利益の為に動き出し、職を失った労働者はテロリストになる。
家族に背を向けても理想を追い求めるエネルギーアナリストの言葉に耳を傾け、大国のエゴから王国を守ろうとした王子に魔の手が迫る。

ノンフィクションの原作から作られた緻密なストーリーが光る映画。
石油製品に囲まれながら暮らしている私たちは、この映画を見ても沈黙しているしかない。
豊かな生活を追い求める人々が、大国のエゴとテロリストの存在を許しているとわかっていながら。

【シリアナ】 2004年・アメリカ
  監督・脚本:スティーヴン・ギャラガ
  出演:バーンズ/ジョージ・クルーニー、ブライアン/マット・デイモン
     ホリデイ/ジェフリー・ライト、ワシーム/マズハール・ムニール、
     ナシール王子/アレキサンダー・シディグ


『トラフィック』のスティーヴン・ソダーバーグ製作の映画。
正直ある程度の知識と地理感覚がないと難しい映画だ。
映画は4人の登場人物の行動を丁寧に追いかけていく。

〔主な登場人物〕

☆ボブ・バーンズ―CIAの工作員。ナシール王子の暗殺を命じられる。
引退を決意しているベテラン工作員のバーンズは、アラビア語が話せる利点から、大切な任務を任されることに。
初めは駒として動いていたバーンズだが、次第に裏側の陰謀を嗅ぎ付けていく。
その時彼の取った行動とは・・・。

☆ブライアン・ウッドマン―スイスのエネルギー商社に勤めるアナリスト。
息子を失うという不幸な事件を通じて某国の王位継承者・ナシール王子と親しくなったブライアン。
大手石油会社に利益の多くを吸い上げられるシステムに疑問を持った王子は、ブライアンの知識と助言に惹かれる。
二人は理想を語り、それを実行に移そうとしていたが、王子には様々な危険が迫っていた。

☆ベネット・ホリデイ―大手石油会社に雇われた弁護士。
テキサスの小さな石油会社キリーン社は、カザフスタンの採掘権を手に入れて、一躍大手にのし上がる。
キリーン社との合併を計画している最大手のコネックス社は、キリーン社が何故採掘権を手に入れたのか、それを調べるようホリデイの会社に依頼する。
ホリデイのボス・ホワイティングは部下を切り捨ててのし上がってきた冷酷な切れ者。
ホリデイは同じ件を調査しているアメリカ司法省、そして自分のボスとも戦いながら、ナシール王子の弟である第2王子に近づいていく。

☆ワシーム―某国へ出稼ぎに来ているパキスタン人の青年
ナシール王子はアメリカの影響力から逃れる為、自国の採掘権を中国に移してしてしまう。
その為に職を失ったワシームは、次の職も見つけられず、滞在許可証の更新も認められず、役人から酷い扱いを受ける。
すべての夢と希望を失ったワシームのたった一つのよりどころはイスラム教だけ。
そんな彼に言葉巧みに近づいた過激派の指導者は、彼を自爆テロへと向かわせる。

〔さらにネタバレ〕
某国のハマド国王は、結局アメリカの言いなりになって、第2王子に王位継承権を渦リ渡す。
映画はアメリカの、そして大手石油会社の勝利で終わる。

原作はCIAの検閲によって、伏字だらけのまま出版されたらしい。
石油の代替エネルギーが、大量に安価に生産されるようになる。
その日が来るのは、技術的な面より政治的な面で難しいのではないか。
そんなことを考えた。

もしも石油の代替エネルギーを開発できたとしても、多分その関係者の一切は、速やかに葬り去られるに違いない。
どこかの大国の闇に隠された手によって。
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