「花子とアン」で仲間由紀恵演じる蓮子さまは、歌人の柳原白蓮。
大正三美人と歌われ、大正天皇の従妹にあたる華族の家柄。
何と言っても白蓮を有名にしたのはスキャンダラスな人生だ。
林真理子は、この小説を書くにあたって実に多くの文献を読み、
白蓮や炭鉱王伊藤伝右衛門ゆかりの人々にも会い取材している。
また宮崎家の厚意により、門外不出の白蓮と龍介の700通にも及ぶ書簡も見せてもらったそうだ。
巻末には数多くの参考文献が記載されており、いかに白蓮が注目されたかが伺われる。
読み終えて、白蓮はなんとつまらない女なんだろう・・・としか感じられず。
炭鉱王伊藤伝右衛門も、ただの無学でがさつな好色な男・・・と。
どこにも彼の人物像が描かれておらず、
やっと最後に、駆け落ちを見逃してやる伝右衛門に男気が感じられたのが救い。
白蓮と龍介との恋文も、姦通罪のあるあの時代の秘められた恋ゆえ、
最初は興味を持って読んでいたが、まあ他人にとってはどうでもよく途中で読むのを止めた。
白蓮の淋しさや苦悩と葛藤、内面の心の叫びが伝わってこず、華族と言うプライドで上から目線で人を値踏みし
不幸の原因は全て伝右衛門にあるという姿勢。
友人の夫に横恋慕。夫ではない誰かを思う恋の歌を当てつけのように堂々と読み、
あげくに伝右衛門にない知的な若い男との恋におぼれて行った・・・。描写が実に生々しい。
白蓮は豪放磊落な伝右衛門の良さを見つけることが出来なかった。
伝右衛門の複雑な家系のドラマもドロドロと描かれており、ずいぶんと下世話な物語に終始した。
「アンと花子」では脚本家中園ミホは、全ての人に愛情を持って描いていた。
道ならぬ恋に走った蓮子も、最後まで妻を愛した嘉納伝助も、人妻と知りながら恋に落ちた龍一も。
世間の轟々たる非難も覚悟の上で結ばれた二人。誰もが丁寧に生き生きと描かれていた。
まあよく、両家から異議申し立てがなかったことです。
林真理子がどう描くのか期待していただけにがっかり。