アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

布売りの老婆たち

2008-09-22 | その他の国の旅
観光シーズンには多くの外国人観光客でにぎわう南海岸のビーチ。


大きなずだ袋を2つ担いだ老婆が、ホテルのテラスで朝食をとっていた私に向かって歩いて来た。

中から取り出したのは、簡素なつくりのシャツとビーチで身につける大きめのサロン。
昨日もこうして衣服を売り歩く老婆が私の元にやってきて、私は当たり前のように軽く老婆を追い払った。
ただ「No.」と、袋の中身も見ずにキツく断ったのだった。


テラスにやってきた老婆は、執念に私に向かって衣服を差し出した。
老婆はひどく痩せていて、こんな身体でよく重そうな袋を2つも持ち歩けるな、と私は思った。
そういえば彼女が歩いて来たのは砂浜で、歩くだけでも相当タフな仕事に違いない。

こうやって一日でいくら稼げるんだろう、と私はそのずだ袋を見つめながら思った。


15分か20分ほど考え続けて、私は結局、柔らかそうな黄色い布を一枚買った。
ところどころにシミが付いていたけれど、鮮やかなその色が何となく魅力的だった。


値段は500円ほど。外国人向けの豪華なディナーと同じ額。
だから地元の人にとっては5000円ほどの価値がある。

決して賢い買い物じゃない。


こうやって老婆を相手に金を払う私は、確かにひどく間抜けだろうと私は思った。
けれど15分か20分間考え続けた結果、それが本当にただの間抜けなのかどうか、やっぱり答えは見つからなかったのだ。


彼女が去った後も、私はそのことをずっと考えていた。

綺麗なホテルのテラスから私の何倍も長く生きている女性を見下している自分は、一体何様なのか。
私は一体、彼女よりエラいことを何かひとつでも成し遂げただろうか。


けれど考えても分からないなら、とりあえず彼女が売る物を買ってみる方がいいと、確かに私は判断したのだった。
後悔するかもしれないし、気持ちがスッキリするかもしれない・・・。
そして結局スッキリすることはなかったけれど、少なくとも、だれが富を得ているのか分からないような都会の一角で500円を費やすよりは、よっぽど納得がいく買い物だろうと、私は自分に言い聞かせていた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿