※前回の北九州の記事はこちら(11節・松本戦、1-2)
※前回の長崎の記事はこちら(9節・山形戦、3-1)
昇格候補に挙げられていながら、黒星が先行する重苦しい状況の長崎。
溜まらず11節・水戸戦(0-1)の終了後に監督交代の断を下したフロント、吉田孝行氏が監督の座を降ろされ(解任でも辞任でも無く、配置転換との事らしい)、代わりに松田浩氏が就任。9節に山形・石丸清隆前監督に引導を渡した長崎ですがすぐ後自らもそうなってしまうとは何とも
アカデミーダイレクターという役職から、3連戦の最中での急な就任となった松田氏、既に還暦を迎えている大ベテラン。
そんな中で行われた5月5日の12節(秋田戦・1-2)では、ホームで大々的なイベント(とはいってもあくまで動画内で)が催されておりましたが、何処と無くチームへの不安が先行するような状況。
それを払拭するべく、この日から指揮を執った松田氏。(12節は佐藤一樹氏が代行監督を務めた)
その松田氏は2013年の栃木以来の監督業であり、守備構築が第一という監督で、ポゼッションスタイルを謳って停滞・低迷しているクラブを建て直すには腕の奮い甲斐がありそうな状況です。
しかし、戦術の発展のスピードは凄まじいものがあるのがサッカーというスポーツ。
ブランクを経ての就任とあり、前回時から自身がどれだけアップデートさせられるかという難しい問題も生まれて来るでしょう。
この日の相手の北九州は、同年代の小林伸二氏が監督を務めるクラブ。
彼も北九州ではその問題をサッカースタイルの転換を行う事でクリアし、更なる実績を上げている監督業となっています。
果たして長崎での松田氏はどうなっていくか。
2トップ(4-4-2)にしたうえ、エジガル・ジュニオと都倉を起用する「ツインタワー」のような布陣を敷いた長崎。
早速FW目掛けたロングボールを基本とする攻撃を見せていきます。
そのうえで、今まで基本であった「ボランチ一枚が最終ラインに降り、サイドバックを高い位置に上げたうえでのビルドアップ」は影も形も無くなり。
SBはボールが敵陣に入るまでは上がりを自重しており、ともに攻撃に定評のある毎熊(右)・亀川(左)は、傍らから観ていて手持ち無沙汰といった感じ。
サイドに叩かれたボールを受けるのはもっぱらSHで、従来のような中に絞る事はあまり無いという配置。
それでも前半9分にカウンターの流れで、エジガルポストプレイ→澤田ドリブルで敵陣へと運び、澤田のスルーパスを追い越して受けクロスを入れた亀川。
このマイナスのクロスを加藤大がシュートに持っていきましたが、枠を捉えられず。
一方の北九州は、連戦に加え離脱者もありで、かなり弄られたスタメンに。
ドイスボランチには高橋と井澤で、本来右サイドハーフの高橋は前年から苦境の際は流用されており違和感は少ないですが、井澤は前節がJ2初出場でこれが2試合目。
空いた右SHに新人・前田をあてがう思い切った起用。
また前回観た際には右SBだった本村がセンターバックに起用されていたり、その右SBには藤谷が初スタメンとなっていたりと、これまでとは異なったメンバー選択となっていました。
それでも、井澤が最終ラインに降りるのを基本とした3-1-6でのビルドアップを貫く北九州。
井澤が中央へと入り、両CBがかなり広く間隔を取っていたのがこの日の特徴でした。
14分には井澤が右の本村へパスを出すと、本村は対角線で裏へと送るロングパス。
走り込んだ乾がダイレクトで中央へ送り、エリア内左へ走り込んだ永野がシュートを放つ(ゴール左へ外れる)という具合に、この基本形から好機を演出。
北九州の攻撃を凌ぎ、そこからカウンターで長崎が好機を作るという序盤の流れ。
それに慣れを見せ始めたか、徐々にサイドアタックの羽を広げていく長崎。
左サイドで亀川が攻撃に絡み出していくも、逆の右サイドでは依然控え目。
21分に左からのクロスで都倉のヘディングシュート(枠外)が生まれたものの、無得点のまま飲水タイムへ。
中断明け、最初に決定機を掴んだのは北九州(27分)で、左からのスローインによる攻撃。
ここから富山がサイドチェンジし、右サイドで受けた藤谷から低いクロスが入ると、中央で佐藤亮がフリック。
そしてファーサイドで受けた富山がシュート、左ゴールポストに当たり跳ね返るも、佐藤亮が詰めてネットに突き刺し。
先制ゴール……と思われましたが、最初のシュートの前の富山がオフサイドと判定され、ぬか喜びに終わってしまいました。
絶好機を逃した北九州はペースを失い、長崎が押し気味の展開に。
無失点で推移し余裕が生まれたのか、31分には左での攻撃からGK徳重まで戻されると、逆の右で攻撃。
それもフレイレが右へ展開すると共に、SBの毎熊が一気にオーバーラップ、ルアンのスルーパスを受けて毎熊が切り込むという攻撃。(シュートまでは繋がらず)
これまで自重気味だった毎熊も羽を伸ばした事で、主導権を握った長崎。
33分には相手のパスミスから、中央で都倉がミドルシュートを放つもGK吉丸がセーブ。
43分には左サイドを亀川がドリブル、中央に送ったパスを加藤大がダイレクトでエリア内に叩き、受けた澤田がシュートするもゴール右へと外れ。
前半の終盤は1分毎に好機を作っていた長崎ですが、ゴールを奪う事は出来ず。
スコアレスのまま折り返す事となりました。
共に交代無く迎えた後半、ともに早くボールを前へ運ぶ攻撃を敢行するも好機に繋がらず、右往左往するボールという入り。
ここから流れを掴むのはどちらか注目された後半4分、カイオ・セザールがドリブルからパスを送った所を北九州・井澤が倒してしまい反則・警告。
これで均衡が崩れ長崎ペースとなり、セットプレー攻勢を経ても尚押し気味に展開します。
9分ルアンのスルーパスを毎熊が受け、クロスを入れるも跳ね返され、拾い直してバックパスののちルアンが手前から再度クロス。
GK吉丸がパンチングで逃れるも、左サイドで亀川が拾い、カイオがカットインからミドルシュートを放つもGK吉丸がセーブ。
15分には毎熊が自陣からドリブルで持ち上がり、右サイドを一気に突破したうえでカットインからシュート。(ゴール右へ外れる)
前半とは一変して、アクセル全開のように攻め上がる毎熊。
劣勢の北九州、打開すべくベンチも早めに動き。
12分に藤谷→六平へと交代の後、17分には前田→野口へと交代。
六平はボランチ・野口はサイドバックが主なたため、ポジションチェンジも考えられましたが、両者そのまま入る事に。(六平右SB・野口右SH)
ここから暫くはペースを取り戻し、20分には右サイド奥でパスを繋いだのち、戻しを受けた井澤がミドルシュート。(ブロック)
後半始めてフィニッシュに辿り着くも、主導権を奪うには至らず23分に飲水タイムへ。
明ける際長崎ベンチも動き、ルアン→米田に交代。
こちらもSBが本職の米田がそのままSHに入るという起用を見せます。
再び長崎ペースの流れとなり26分、右サイドから加藤大が対角線のロングパスを送り、これを受けたのは都倉。
ドリブルで自ら運び、エリア内へと進入しシュートを放つも、ブロックに阻まれコーナーキックに。
そこからもキッカー加藤大のクロスをファーサイドで合わせた都倉、ヘディングシュートは枠を捉えるもののまたもブロックに阻まれ。
積極的に得点を狙ったこの日でしたが、復活のゴールはお預けとなりました。
相手の圧を受け続ける展開を強いられる北九州。
最後の交代カードは34分で、一気に3枚替えを敢行。(永野・富山・佐藤亮→斧澤・前川・平山)
それでも一向に上向かず、焦りを見せる北九州。
早めに好機を作らんと積極的に裏狙いのパスを送るものの、繋がらずというシーンが頻発します。
また守備面では後追いの反則も目立ち、疲労感も明らかに伺えるようになってきた終盤戦。
対する長崎も、36分にエジガル・加藤大→玉田・秋野へと2枚替え。
北九州が反則を頻発する展開となり、遠目からでもクロスを選択するも、こちらも決め手に欠き。
無得点のままアディショナルタイムも目前に迫り、45分に最後の交代カード。(都倉・澤田→富樫・鍬先)
毎熊が一列上がり右SHとなり、米田が左SHにシフトと、SBが4人かと錯覚するような布陣になります。
しかし最後はそれが奏功する事に。
ATも2分を過ぎて長崎の攻撃、最終ラインから右へと展開し、ボールを持った毎熊が富樫とのワンツーも絡め前進。
そしてグラウンダーでクロスを入れると、中央で待ち構えていた米田が右足を振り抜いてシュート。
SBからSB、もといSHからSHという攻撃が炸裂し、最後の最後に先制点を奪った長崎。
再開後もボールを支配し、敵陣左サイド奥でボールを回して時間を使い、無事に試合を終わらせ。
松田氏の初陣を胸すく勝利で締めくくりました。
今季のリーグも3分の1を消化する目前となり。
新潟・琉球のロケットスタートの影響もあり、勝ち点19未満のクラブが7位以降緩やかに分布されている感があり。
ここから上位を伺うクラブがあるのかと同時に、残留争いの方はデッドヒートとなりそうな予感もしますが、果たして今後どう推移していくか。