<横浜Mスタメン> 4-2-1-3
GK 高丘
RSB 松原 CB チアゴ・マルチンス CB 畠中 LSB ティーラトン
DH 喜田 DH 扇原
IH マルコス・ジュニオール
RWG エウベル CF オナイウ阿道 LWG 前田
<神戸スタメン> 4-4-2
GK 前川
RSB 山川 CB 菊池 CB トーマス・フェルマーレン LSB 酒井
RSH 井上 DH セルジ・サンペール DH 山口 LSH 中坂
FW 古橋 FW 佐々木
1敗しかしていないクラブ同士の対戦。
しかし川崎という絶対的王者が居るため、追っても追っても背中に届かないような感覚を覚えてしまうものでしょう。
リーグ戦では前年低迷した神戸。
シーズン途中にイレギュラーな監督交代もあり、三浦淳寛氏の体制そのままで挑んだ今季、開幕前には懸念がどうしても拭えませんでした。個人的には10試合ぐらいでまた監督交代になるのではと思っていた(失礼)
そんな予想は見事に覆され、ここまで僅か1敗で推移。
特に前年まで足りなかったチーム強度が冴え渡り、スタミナ勝負を制し土壇場で追い付く試合を量産しています。
まあこの現象は、クラブにとって狙い通りかどうかは疑問なのですが。
神戸の象徴ともいうべきアンドレス・イニエスタが、開幕から長期離脱を強いられており、やむを得ずの方針転換という可能性も考えられ。
その他助っ人もフェルマーレンにドウグラスと離脱が目立つ今季。
新加入のリンコンは素材型で未知数、アブユ・マシカはケニア代表で現在フィットし始めているものの何とも言えず。
そんな状況のため、日本人の既存選手にも多大なチャンスが与えられ、戦力として定着している。
全くもって近年の神戸らしくないといえばらしくないですが、壮大なスケールを掲げたまま沈んでしまうよりはずっと良いはずでしょう。
前半立ち上がり、マリノスは例年通りに、ポジションチェンジを頻繁に行いつつパスワークで攻め上がるサッカーを繰り広げ。
前半3分には松原がスルーパスを送り、エリア内右へ走り込んだマルコスがクロスを上げ、オナイウが合わせにいくもGK前川が辛うじてパンチングでクリア。
フリーマン的に動き回るマルコスを軸に、マリノスの波状攻撃が繰り広げられると思われたシーンでしたが、以降はそんな展開にはならず。
守備強度をこの日も保ちつつ、マリノスのパスワークに対し徹底抗戦する神戸。
特にセンターバック・菊池が前に出て、潰したりパスカットに成功したりするシーンが目立ちました。
流石にJ2から一年で個人昇格した男は一味違い、多少時間が掛かったものの、2年目の今季はレギュラーに完全定着し活躍を見せているようです。
「攻撃は良い守備から」の格言通りに、徐々に好機を作り出す神戸。
この日は中盤の底であるサンペールを軸とした、裏狙いのロングパスがメインの攻撃の手口。
15分には左→右へのサイドチェンジで振ったのち、サンペールが中央へとロングパスを送ると、エリア内に走り込んで受けたのは古橋。
トラップで追いすがるマリノス・チアゴを剥がしてシュートしますが、GK高丘のセーブに防がれました。(尚も中坂が詰めるもブロックに阻まれる)
そんな中、17分頃にピッチ上でマリノス・マルコスが下半身を痛める仕草を見せ始め。
するとベンチはすかさず動き、交代の準備を敢行します。
その後もプレーを続けたうえ、まだやりたそうな表情を見せていたマルコス。
結局20分に天野と交代し、ピッチを退く事となりました。
攻めながらもフィニッシュに辿りけないマリノス、22分に神戸最終ラインへプレスを敢行。
そして右コーナーキックを得て、その二次攻撃で天野のロングパスに前田が合わせボレーシュートにいくもミートせずに終わり。
初シュートを放ったもののスカッとせず、そのまま飲水タイムが挟まれます。
その後神戸が、GK前川のフィードを中心に組み立て。
この前川のキックは前線目掛けて……では無く、上がり目のサイドバックをターゲットにしたもので、これを一貫して終始続けていました。
放送席で「巧い」と評価されていたものの、後にこれが一つのターニングポイントになる事となりました。
神戸の強度の前に、マリノスが好機を作れずに時間が進んでいく流れ。
マリノスはCBのチアゴが自らボールを運ぶ場面が目立ち、そこからでしか好機が生まれないという展開を強いられます。
神戸ペースに傾いているのは明らかでしたが、それを失いかねないプレーが31分。
最終ラインでの繋ぎをオナイウが奪ってマリノスの攻撃、拾った前田がエリア外でGK前川と一対一になり、左へかわしエリア内へと進入した前田。
しかし放ったシュートは戻って来た菊池にブロックされモノに出来ず。
危うい場面を自ら作ってしまった神戸、以降マリノスの怒涛の攻撃が始まる事に。
33分には神戸・サンペールの反則で得た直接フリーキック、キッカー天野が直接狙いシュートもゴール左へ外れ。
37分は左サイドから攻撃、パスワークののちティーラトンが縦パスを送り、受けた天野からクロス。
前田が逆向きで跳び込んでフリックの形になり、ファーサイドでエウベルが受けてシュートするもGK前川がセーブ。
押し込まれているのは明らかで、我慢を強いられる神戸。
そんな展開が続き、迎えた41分でした。
右サイドから松原の縦パスを受けた天野が左奥へとロングパス、ティーラトンが一気に走り込み、最奥から低いクロス。
GK前川が弾いたボールがフェルマーレンに当たり、これがゴールに吸い込まれてしまい、オウンゴールの形となりマリノスが先制します。
その後もマリノスペースは続き、アディショナルタイムには天野がミドルシュートを放つ(ブロック)など、良い流れのまま前半を終了。
反撃に出たい神戸、ハーフタイムで井上・サンペール→リンコン・郷家へと2枚替えを敢行。
リンコンがFWに入り、佐々木が右サイドハーフへ回ります。
しかし前半からの流れは変わらず、立ち上がりから連続して好機を作っていくマリノス。
神戸はマリノスの攻勢を凌ぎ、反撃を試みようとするも、目立ったのはリンコンに出したボールが悉く奪われるシーンのみという状態に陥ります。
14分までマリノスのシュートは2本のみでしたが、体感的には押し込まれ続けているという流れ。
ここで神戸サイドは再び動き、イニエスタ投入に打って出ます。(佐々木と交代、同時に中坂→マシカへと交代)
リンコンが1トップの4-2-3-1へと変化させ、そのトップ下に入ったイニエスタ。(マシカは右SHで、古橋が左SHへシフト)
その後、神戸の最初のチャンス。(16分)
左サイドでリンコンがボールに絡んで古橋が抜け出し、右へロングパスを送ると、受けたマシカがエリア内へ切り込みマイナスのクロス。
中央で郷家が走り込んでシュートと完璧な流れを作りましたが、マリノス・チアゴのブロックに阻まれます。
尚、ここでブロックしたチアゴが足を攣らせてしまい、長い治療時間が挟まれる事に。
その影響もあったか、少々早めの22分に飲水タイムとなります。
そして中断明け、本領を発揮するイニエスタ。
守備面は未だ苦しそうで、守備時は上がり目、攻撃時は下がり目という前時代的な司令塔のように動かざるを得ないのが辛い所。
しかし一度ボールを持つと、説明不要の縦パス・スルーパスを前へ通す能力がズバ抜けている所を見せていきます。
23分、イニエスタのスルーパスにマシカが抜け出し、エリア内に進入してシュートを放つも(ディレイで)僅かにオフサイドに。
33分にはGK前川から組み立て、中央で受けた郷家がドリブルから左へ展開し、受けたイニエスタがスルーパス。
そして走り込んで受けた古橋がエリア内左へ進入、シュートを放ったものの惜しくも左サイドネット。
着実に好機を掴んでいった神戸でしたが、ここで前川がビルドアップに絡み、そこから絶好機を作った事で色気付いてしまったでしょうか。
そして35分、運命のシーンが。
バックパスを受けたGK前川はエリア外へドリブルで持ち上がると、左へフィード。
ここも上がり目の位置に居た酒井を狙ってのものでしたが、自身が上がっていた所為かキックミスとなり、マリノス・水沼(前田と交代で出場・28分)に手前でカットされて攻守交替。
そして中央のレオ・セアラ(オナイウと交代で出場・28分)を経由してエリア内左でエウベルがシュート。
戻っていた前川がセーブするも、中央へ転がった所を天野が詰め、ネットに突き刺さりゴール。
手痛い追加点を献上する事となってしまった神戸。
2点差となり、直後に山川→初瀬へと交代。(酒井が左SB→右SBにシフト、初瀬が左SB)
同時に古橋とマシカのポジションチェンジも行われ、以降前川のフィードは、左SHのマシカへのものも加わるなど微調整。
いくら相手がマリノスで、点差が付いても守りに入る事が無いチームとはいえ、ここから巻き返すのは難度が高く。
44分にイニエスタが中央突破を見せ、古橋とリンコンのポストプレイを交えたのち左へ展開。
受けたマシカがシュート(枠外)というのが見せ場だったでしょうか。
チアゴの治療の影響もあり5分となったATでも何も起こせず。
結局2-0のままマリノスが勝利に辿り着き。
2敗目を喫する事となってしまった神戸。
尚、この日の2日後が誕生日であるイニエスタ。
その後、前日に「記者会見」がクラブから予告される事となり。
引退宣言か……とも噂されたものの、当日発表された知らせは、契約更新(2年)という朗報でありました。
この試合の後半のように、巧みなパスで攻撃を作っていたシーンを浮かべると、まだまだ不可欠な選手である事に変わりは無く。
現状のスーパーサブ的な役割を経て、スタメン復帰するのは何時となるでしょうか。