※前回の清水の記事はこちら(42節・水戸戦、1-1)
※前回の山形の記事はこちら(42節・甲府戦、2-1)
<清水スタメン> ※()内は42節からの変更
- リーグ戦での累積警告の持越しならびに出場停止は無し。よって42節で8枚目を貰ったホナウドも出場可能で、スタメン出場。
- リーグ戦で未出場のGK大久保がスタメンに。レギュラーGKの権田はベンチ外。
<山形スタメン>
- リーグ戦での累積警告(以下略)4枚目を貰った後藤優も問題無くスタメンに。
今季から入れ替え戦が無くなったのが、最大の動きである昇格プレーオフ。
2018年に「決定戦」と釘打たれ再導入されてからというもの、1回勝負かつホームのJ1チームが引き分けで勝利というレギュレーションもあり、文字通り最後の壁に。
ウィルス禍により3度のみの開催となったものの、J1側の完勝といえたの2018年の磐田(vsヴェルディ、2-0)のみ。
2019年の徳島も2022年の熊本も、引き分けで涙を呑む形で昇格ならず。
しかし今年はそれが無く、勝ち上がれば問答無用で昇格なので各関係者のモチベーションも相当なもの。
さて初戦ですが、前年と違い2試合同時開催とはならず、土曜に行われたのは清水vs山形。
2週間のインターバルの中、自動昇格を逃して意気消沈という精神状態からの脱却を図った清水と、5連勝で逆転出場を果たした勢いを保つべくとなった(と思われる)山形の一戦となりました。
清水はGK権田が、山形は川井がベンチ外という具合に、その間のアクシデントを想像させるメンバー人選。
試合が始まり、ロングボール中心の立ち回りで入る清水。
その中で2度攻撃機会を掴み、中山を走らせる裏へのロングパスをGK後藤雅が前に出てクリア(前半2分)と、ペースを保ちながら試合を動かしに掛かり。
しかしレギュレーション上、最初からとにかく1点が欲しい状況の下位・山形の思惑の方が強かったようで。
3分にこぼれ球を野田がダイレクトで縦パス、受けたチアゴが持ち上がりを経て左ポケットへラストパスを送り、藤本がシュート(クロス?)するもホナウドがブロック。
その跳ね返りを中央で南がシュート、GK大久保がセーブとまず有効打を放ち。
すると6分にも、シーズン中でお馴染みの縦に速いサイド突破、スルーパスに走り込んだチアゴの奥からのクロスをイサカが合わせヘディングシュート。
GK大久保がセーブし、尚も右にこぼれた所を山田が走り込んでシュート、しかしこの強烈なボールもセーブした大久保。
権田の代役というにはおこがましい程の大久保の活躍で清水の失点は防がれたものの、それを盾とした山形が最初に自身のペースに入り。
GKを含めた最終ラインで繋ぐビルドアップに入り、清水の守備の様子を観察。
2トップ(守備時)のサンタナ・乾はボランチを切るものの、南・高江の巧みな動きに対し完全にはなされず。
その分清水のドイスボランチも、前に出てそれをカバーするかないしは待機するか迷っていた感があり、それにより出来たスペースを突いて前に運ぶといった立ち回り。
しかし清水は12分、こちらも例によって乾がボランチよりも後ろに降りてパスを出し入れするビルドアップ。
そして前進した山原から受け直した乾、中央からミドルシュートを放ち(GK後藤雅セーブ)ゴールを脅かします。
これを境に清水の攻撃が続く流れとなり、それに伴い最終ラインから繋ぐシーンも増え始め。
押され始める山形でしたが19分に再び好機、西村の裏へのロングパスが一気に右ポケットを突き、走り込んだ後藤優のシュートをまたもGK大久保がセーブ。
浮いたボールをさらにチアゴがヘディングで詰めるも枠外と、ゴールの匂いは相変わらず強く。
時間経過で清水は修正を図って来たか、以降優位に立ち。
ビルドアップでは4バックがしっかり幅を取り、サイドを振るパスワークを増やし。
それにより山形は、ウイング(サイドハーフ)がセンターバックに出て来る状況が激増し、サイドバック同士のマッチアップを強いられていきます。
ハイプレス故に前に出なければならないSB、それを剥がされて深めまで進入を許してしまうという繰り返し。
24分に左への展開から、山形の(山田が前に出て来る)その姿勢を見るや山原がスルーパス、受けた中山に対し西村が対応を余儀なくされる状況に。
そして奥へ切り込んだのち入れられた中山のクロスに、岸本が脚で跳び込むも合わずという、相手のお株を奪う早い運びによる決定機。
その後もサイドの跳梁、特に左で中山が果敢に仕掛けるシーンを増やす清水。
32分にはサンタナとのワンツーで切り込む中山、奥から上がったクロスをファーサイドで乾がボレーシュート(ゴール左へ外れる)と、フィニッシュも膨らんでいきます。
相手をペースに巻き込んだというような清水。
全体積極的にもなり、2トップも最終ラインまでプレッシャーを掛け、それに伴いボランチ2人が山形のボランチをチェックしにいくという姿勢も見せ始め。
そうなると待っているのは敵陣で奪ってからの好機で、40分に中山の反則気味のディフェンスで奪い左サイドでパスワーク、奥へ切り込んだ中山のパスをポケットで受けた乾がマイナスのクロス。
これは合わずに流れるも戻しを経て右手前から原のクロス、跳ね返りの落とを拾った山原が左ポケットへ切り込んでシュート(ブロック)と、敵陣で展開されるサッカー。
42分にも中山の敵陣でのディフェンスから、こぼれ球を拾ったサンタナが中央からミドルシュート(ゴール左へ外れる)と、個の力に組織力も加味されて最強に見えるような押し込みを見せます。
それを前にした山形は35分以降攻撃機会を全く得れず、終盤を迎えても清水の攻勢は続き。
耐え凌ぐ山形の膨らんでいく反則を下にしたセットプレー攻勢となり、出来ればモノにしたいが、そうで無くても時間経過で引き分けの可能性が高まるという両得の立ち回り。
そしてアディショナルタイム、左スローインからサンタナがフリックで浮かせ、中山が落として収める勢いのままにエリア内を突く好機。
そのまま奥に切り込みましたが、GK後藤雅が前に出て抑えて撃てず。
逃したと同時に前半終了となり、スコアレスで勝負の後半戦へ。
後半もその流れのままに、開始1分でスローインを収めたサンタナに対する野田のチャージで反則。
敵陣ながら中盤という位置にも拘らず、放り込みを選択する清水。
前半よりも一層その選択のラインを下げたようで、当然ながら引き分けで良しという判断の下であり。
そんな思惑の相手をひっくり返したい山形、3分に高江の縦パスを収めたイサカがキープから左へ展開しチアゴに託し。
そしてワイドからカットインで脅かすチアゴ、シュートはブロックされるも、中央へこぼれた所を高江がダイレクトでミドルシュート。
鈴木がブロックするもエリア内の山田に当たりこぼれた所を、藤本がシュートと決定的な一撃を放ちましたが、GK大久保がこれも右手一本でセーブと打ち破る事が出来ず。
ならばと6分、右サイドから山田縦パス→後藤優ポストプレイ→イサカドリブルで前進すると、ホナウドに倒されるも山田が拾い。
アドバンテージかと思った刹那、その山田も山原に倒された事で反則の笛が鳴り(山原に警告)、エリアからすぐ手前での直接FKを得ます。
右ハーフレーンという横位置でどうするか思案を巡らせた結果、高江の小さな蹴り出しを経て小野がシュートと変化を付け。
しかし躊躇わずに前に出た清水により(鈴木のブロックで)防がれます。
前半同様好機は掴む山形ですが、清水の立ち回りの変化を受けて若干焦りが強まったでしょうか。
9分にはボランチのパス交換から前進を果たすも、高江のポケットへのスルーパスが大きくなってしまい藤本には繋がらず。
11分には自陣で攻撃開始という所で、高江がパスを眼前の小野に当ててしまい跳ね返り、白崎が拾った事で清水の攻撃に。(その後右奥を突きポケットから乾がクロスも合わず)
繋ぎの精度も乱れがちとなり、反撃の機運を高められず。
12分に清水の方が最初に動き、山原・中山→吉田豊・カルリーニョスへと2枚替え。
左サイドアタックの割合が多かった清水、燃料補填のためその左2人を代える采配となったでしょうか。
セットプレーでは時間を使う清水ですが、立ち回りの中では相変わらず積極性を貫き。
中盤でバチバチとやり合い、激しくボール権が入れ替わるという絵図も増えていき。
その果てに、14分にこぼれ球に対し小野とサンタナがスライディング同士で激突してしまう一幕が生まれたものの両者大事には至らず起き上がり。
読み辛い流れですがそれでも清水の有利な立場は不変であり、16分にカウンターに持ち込んで岸本が右ポケットを突いたものの、シュートかクロスか中途半端な脚の振りをしてしまった結果ミートせず終わり。
18分にホナウドが右手前からクロスを送り、ファーサイドを狙った結果ゴールに向かう軌道となり、GK後藤雅がコーナーへと逃れるセーブ。
ミスも見られるなど、何処までが狙った攻撃か判らない流れとなるも、ミッション的には問題無く時間が進んでいきます。
19分に山形ベンチも動き、藤本→デラトーレへと交代。
山形は、前半に多発していたSBが前に出る所を突かれる弱点は修正を図った模様。
きちんと相手SBに対してWGが対処する姿勢はとるようになりましたが、それに伴いサイドで押し込まれると、最大の武器であるチアゴの自陣でのプレーの時間が長くなるというトレードオフ。
守備対応に追われるシーンが目立ったものの、それでも失点=2点必要=窮地という戦いなので仕方無く。
CKから西村がヘディングシュートを放つ(27分・枠外)など、攻めの姿勢は貫くものの、前半立ち上がりのような苛烈なフィニッシュが勝ち抜きに必要なのは言うまでも無く。
何とかそれを果たさんと、29分に再度交代し高江・後藤優→小西・高橋潤へと2枚替え。
一方、22分に岸本→北川へと交代した清水。
その北川も右ワイドに張るシーンが目立つなど、かつてのストライカーもシステムに順ずる献身性が強まり。
そんな中、32分に白崎の敵陣でのパスカットから、拾った乾の横パスをエリア内で受ける好機を迎えた北川。
しかし山形ディフェンスの抵抗もありボールキープを経て乾に返し、その乾のラストパスからシュートを放ったのはサンタナ。
最後は現エースのフィニッシュとなったものの、ゴール左へ外れてしまい決められず。
サンタナは続く34分にもミドルシュートを放つ(GK後藤雅キャッチ)など、その威力で山形サイドに最後までプレッシャーを与えます。
35分に山形は最後の交代で、チアゴ・イサカ→泉・横山へと2枚替え。
最後にウイング双方を入れ替え、そのフレッシュさで勝負する姿勢を取ったでしょうか。
その通りに事態は好転し始めるも、40分に清水も最後の交代。
サンタナ・乾の2枚看板を退かせ、宮本・北爪を投入します。
これにて守備固めの3-4-2-1になるかと思いきや、北爪が右サイドハーフとなり4-2-3-1を保つ事を選択。
白崎が乾のポジション・北川がサンタナのポジションに回ります。
リーグ戦終盤の戦いでは、(点を取らなければならない状況もあり)3-4-2-1へのシフトが裏目に出るのが多かっただけに、少しでも不安の色を出さない事に努めた感があり。
その後清水がCK攻勢に持ち込み、その2本目の右CKでニアにクロス→鈴木フリック→原ヘディングシュート(41分・枠外)と、リスク無しで勝ち越しを狙う姿勢を貫き。
時間も押し迫り、ペースも握られる事で厳しくなる山形。
最早一刺しを狙うしかなくなる中、その機会は45分に訪れ、左サイドを小野スルーパス→泉走り込んでクロスと素早い運び。
この低いボールを高橋潤が合わせるも前方のデラトーレに当たってしまい跳ね返り、不運な形で逃してしまうのか……と思った刹那、小西が反応してダイレクトでシュート。
しかしこれもゴール右へ外れてしまい、無情な結果に終わる事となり。
そしてATへ突入。
清水は北川のゴールバーを掠めるミドルシュートなど、得た好機では先制を狙う姿勢ながら、ボールキープに重みを置き時間を使い。(それでも山形が前に出ざるを得ないので好機が生まれるのですが)
山形は最後まで普段通りの攻めを貫き崩さんとした(最後の場面では野田のロングパスに西村が上がって合わせにいきましたが)ものの、厳しい状況を打開する事は出来ず。
そして試合終了の時を迎え、0-0のまま引き分け。
清水が勝ち上がり、山形はここで涙を呑む結果となりました。
スコアレスながら、決定機の応酬で撃ち合いの要素も含んだ見ごたえある試合だったでしょうか。
これにより清水は暗雲を振り払った……と判断すべきか否か。
というより、その判断よりもとにかく次戦も勝つ事を最優先とした準備が行われるはずなので、外野からとやかく言うのは場違い感があり。
決勝は国立開催でVARも導入される大一番となりますが、その結末はどんなものか。