※前回の京都の記事はこちら(22節・山形戦)
※前回の愛媛の記事はこちら(31節・徳島戦)
一時は首位に立っていたものの、失速が顕著である最近の京都。
ミッドウィーク開催となった25節(7/30・金沢戦)での試合内容がケチのつき始めで、金沢のハードワークに終始押され気味で、試合終了間際に小屋松のゴールで辛くも引き分けに持ち込んだという一戦。
その2戦後の27節でも下位に沈む栃木相手に大苦戦、ボールポゼッションを高めて攻め込むもカウンターで沈んで先制を許し、さらにビルドアップのミスで2失点目。
ここから怒涛の攻撃で2点を返したものの、これも辛くも引き分けという結果に終わり、支配率は78対22と圧倒しながら勝ちきれなかったという内容でした。
この2戦がマイナス要因を呼び込む事となり、28節以降で7戦4敗と全くリズムを掴めず、自動昇格が危うくなってきている現状な京都。
救いは、4敗いずれもアウェイな事でしょうか。
そんな状況を打破しようとしているのか、あるいは深刻な駒不足からか、31節(岡山戦)から大ベテラン・田中マルクス闘莉王がスタメン起用されています。
それに伴いフォーメーションも3バックに移行し(闘莉王が3バックのセンター)、前節からは2トップを採用し、3-3-2-2のような形で臨んだこの日の試合。
前節・鹿児島戦は久々にアウェイで勝利してホームに帰ってきたこの日、負の要素を吹き飛ばす勝利を挙げられるでしょうか。
序盤はお互いロングパス・スルーパスの応酬。
ポゼッションサッカーを理想形とするチーム同士の対決とは信じ難い内容でしたが、90分間というスパンで行われるのがサッカー。
後のための布石を打つ事も重要であり、戦略が試されるスポーツでもあります。
先に本来の「自分達のサッカー」に移ったのは京都。
前半13分、敵陣で庄司がパスカットすると、最終ラインへ戻してから安藤が右サイドに展開します。
金久保・福岡・安藤がパス交換した後、金久保が出したスルーパスが愛媛DFに当たりゴールラインを割りコーナーキックに。
そのコーナーキック、キッカー庄司のクロスに闘莉王がヘディングで合わせたのがこの日のファーストシュートでした。(威力は無くGK岡本がキャッチ)
これでエンジンが掛かったか、その後立て続けにミドルシュートを打つも、愛媛ディフェンスのブロックに遭い得点には至らず。
すると流れは愛媛に傾きます。
序盤に見せていたロングボール攻勢は影を潜め、攻撃時はじっくりボールを繋ぐとともに、守備時は前線からのプレスを機能させ京都にボールを繋がせません。
23分、中盤でのパス回しから神谷が縦パスを入れ、山瀬がポストプレイで繋いだボールを下川がミドルシュート。(京都・安藤がブロック)
26分・28分にもそれぞれ藤本・神谷がシュートを放ちます。
下位に低迷している愛媛ですが、その組織力は決して侮れず。
特に攻撃力は非常に厄介で、かつ個の力に頼るという事も無い。
パスサッカーを基調としつつ、相手や状況による柔軟な対応も厭わず。
この日はコイントスの結果陣地を選んだ上での、立ち上がりのロングボール攻勢を見せました。
その組織を縁の下で支えているであろう、今季加入した大ベテラン・山瀬。
セントラルMFとしての存在感はまだまだ健在で、ボランチ・シャドーの両方が出来るという事もあり、スタメンでも途中出場でもチームの方向性を定められるのは大きいです。
この日はシャドーでのスタメンで、もう一人のボランチ・シャドー兼任である神谷はボランチに。
良い感じに試合のペースを握っていた愛媛。
しかしそんな流れの中での前半34分、京都の攻撃。
最後方から庄司が縦パスを送り、一美のポストプレイを受けた金久保が裏へスルーパス。
これに仙頭が抜け出してGKと一対一になり、落ち着いてシュートを決めた仙頭。
縦に速い攻撃というあまり京都らしくない中身だったのもあり、試合の流れをぶった斬る先制点となりました。
その後はボールキープして冷静さを取り戻しにかかる愛媛ですが、好機を作れないでいると、逆に京都が攻撃チャンスを作っていく展開に。
そして39分に再び庄司の縦パスで、仙頭が裏に抜け出すというシーンを作られる(GK岡本が飛び出してクリア)と、愛媛は早くも決断。
山瀬と神谷のポジションを変更し、ボランチ山瀬・シャドー神谷の布陣で以降通します。
すると前半の残りは愛媛の時間となります。
43分、中盤でのボール奪取から近藤がドリブルで駆け上がり、エリア内右へ進入してシュート。(京都・本多がブロックでコーナーに)
その後コーナーキックの連続から2本シュートを重ねる(田中・茂木)と、アディショナルタイムにも藤本にチャンスが。
前野のロングパスがルーズボールとなったのを近藤が拾い藤本にパスを送ると、エリアに入るかどうかという所からシュートを放ちますが、惜しくもゴール右に外れます。
そして前半が終了。
後半が始まっても愛媛ペースは続き、後半3分に早速近藤がエリア手前からのミドルでファーストシュート。(枠外)
しかし京都もやられっぱなしでは無く、8分には浅い位置でのフリーキックから庄司が左に展開し、小屋松がカットインの姿勢を見せてからクロス。
これをファーサイドで闘莉王(フリーキックのため前線に上がっていた)が落とし、そこを福岡がシュートしますが枠外に。
基調である「ポゼッションを高めてからの重厚な攻撃」は見る影も無かったこの日の京都ですが、それでも昇格争いに加わっている身、どんな内容でも勝利を掴むという姿勢は責められず。
そしてそんな姿勢(かどうかは定かでは無いが)が追加点を生みます。
闘莉王のパスカットからのカウンターで、仙頭のスルーパスに抜け出した一美がそのままドリブルでエリア内に入り、追走してきた愛媛・山崎を切り返しでかわします。
飛び出してきたGK岡本もその延長でかわし、後の反転シュートがあっけなく無人のゴール(ブロックに入ったDFが居たけど)に突き刺さりました。
2点リードを奪った京都。
それでも自身の基本のサッカーが出来ず、リズムを作れていなかった事がその後痛手となって帰ってくる破目になります。
2点目が入った後半12分以降、20分まで双方チャンスらしいチャンスは無く展開していきます。
愛媛は攻めあぐね好機を作れずにいましたが、それでも京都は相手の攻撃を切り一息付ける瞬間があまりにも少なかった。
この間に(15分)、愛媛は藤本→丹羽へと交代。
その後半20分。
愛媛はじっくりボールを回して好機を伺い、エリア内にボールを送る→京都がクリアという流れを何度か歩んだのち、左サイドで前野がスルーパス。
これを下川が受けるも京都・庄司に奪われ、庄司はボールを挟む形になってしまい身動き取れず、下川のアタックを受けたためコーナーキックに逃れます。
そのコーナーキックでも波状攻撃、キッカー神谷のクロスが跳ね返された後、近藤がエリア内左へ進入してシュート。
これも闘莉王にブロックされますがさらに神谷が拾い、カットインしてエリア内左から巻くシュート。
芸術的な軌道でゴールへと突き刺し、1点を返します。
そして27分、今度もエリア内に迫りながらもじっくりとパスワークで攻める愛媛。
先程と同じく前野のスルーパスで近藤が裏を取り、エリア内左からクロスを上げます。
これに山瀬が飛び込んでヘディングシュート、GK加藤は一歩も動けず、ボールはバーの内側に当たってゴールイン。
ポゼッションを高めた末の、京都とは対照的な2得点による見事な同点劇を演じました。
こうなると逆転へのムードは高まるだけで、新潟戦・千葉戦の再現が期待されました。
しかしそんな中、自陣ゴール前で際どいプレーが29分に起こります。
GK岡本を交えたパスワークの最中、あろう事か山崎が京都・小屋松のプレスでボールロスト。
すかさず中央へパスし、一美がトラップするシュートチャンスが生まれたものの、戻ってきた山瀬が撃たれる前にクリアしコーナーキックに逃れました。
肝を冷やした愛媛サイド、その後は得点シーンのようなボール支配からの好機は影を潜める事になり、当然3点目の匂いも薄れ始めます。
一方の京都、32分に仙頭→ジュニーニョへと交代し1トップへとシフト(3-4-2-1?)し、ミラーゲームへと移行。
すると以降暫くは京都のペースとなりますが、試合も終了が近付いており、疲労のためかすぐ終わる事に。
40分のコーナーキック、キッカー庄司クロス→本多落とす→闘莉王トラップして反転シュート(愛媛・山瀬がブロック)というのが最後のシュートでした。
そして京都がペースを失うと、再び愛媛が攻勢をかけます。
43分には前野のロングパスを下川が胸で落とし、有田(西岡と交代で出場)がダイレクトでシュートを放つも大きく枠を外します。
アディショナルタイムにも前野が左サイドのドリブル突破でチャンスを作り、クロスを上げると神谷がトラップしシュート。(京都・黒木がブロック)
最後の方はポゼッションに拘らない攻撃を展開しましたが、勝ち越し点は生まれず。
2-2で引き分けに終わる事となりました。
来年は、亀岡市に完成予定の新スタジアムを本拠地とする事が内定している京都。
その初陣となるシーズンを、J1かJ2どちらで迎えるかで今後の運命は変わっていきそうですが、サッカーのスタイルを形成・維持する事は忘れてはならない。
自身のスタイルを貫こうにもままならないこの日の試合内容を見て、そんな事を思う次第です。