Boxでたばこを吸っていた。
何人か先輩が一緒だった。
それはヤブカラボーだった。
「秘密結社をつくるからな、松田も入れたるわ」
「秘密結社?ですか?」
「おう、秘密結社『マングースの白い牙』や。ええやろ」
「『マングース』って」
「おう、『タスマニアンデビルの黄色い門歯』と迷ってんけどな、こっちの方がカッコええやろ」
いやいやマングースだろうがタスマニアンデビルだろうが、なんならオコジョだってかまわないんだが、でも確かに『黄色い門歯』よりも『白い牙』のほうが ... いかん、ちょっとノせられとる。
「俺だけ?」
「いや、宝饒も入っとる」
「お、チョイ待てや松須、おれそんなんいっこも聞いてへんやんけお前」
「やかましい!ワシが結社つくるゆうたらお前も入るに決まってるやんけ」
「決まってへんわ、そんなもん」そういいながら宝饒さんは引き込まれそうな素敵な笑顔である。
「で、その結社で何するんですか?」
「まずはお前のトコで作戦会議や」
「はぁ?会議って?」
「酒呑むに決まっとるやろ、わからんかぁ?」
いずれそんなことだろうと踏んではいたが、そんなもん、結社する必要ないじゃないですか、いつものこっちゃのに。
かくして秘密結社『マングースの白い牙』の活動は開始されたのである。秘密裡に、しかしいつもどおりに堂々と。
メンバーは流動的で、結社の長(何て言うんだ?『社長』か?)松須さんのいるところどこでも作戦会議となる。つまりその場に居合わせた者は自分が秘密結社『マングースの白い牙』の作戦会議に出席していることなど知る由もない、ということは、メンバー本人にも自身が結社の一員であることは秘密になっているのである。これほどの『秘密』結社がかつて存在し得たであろうか。
「あー、ナミカワさん、ナミカワさん」
とある作戦会議での一幕である。
「あー、ナミカワさん、ナミカワさん」
「わたし、皆川ですっ!」
皆川女史は松田と同期で、周りから「どうしてあんな真面目な子がこんなとこに居んだろうね」と身も蓋もない言い方をされたことのある、朴訥な中に芯の強いというか、「マーそんな硬いこといわんと」と一声かけたくなるような、ちょっと昔気質な一面もある女傑である。なぜ女傑であるかというに、元来石地さん言うところの「ガラスのハート」である松須さんの、照れ隠しの意味合いもある粗暴な言動を矯正すべく敢然と挑みかかっていったからである。松須さんの卒業まで数度にわたって繰り広げられた松須vs. 皆川バトルは、皆川女史の入学間もないこのあたりに端を発するものと思われる。
「おおっ、すまん。だけどお前ナミカワいう感じやねん、今日からナミカワにせぇ!」
無茶である。
以前にも触れたとおり、若い頃なら誰もが陥りがちな「漢(おとこ)」幻想を追い求めているようなところのある松須さんは、ことあるごとに「男っちゅうのはやな、・・・」「女っちゅうのはやな、・・・」と『懇々と』理想の男性像、女性像を説いていた。そんな折も折。
「松須さん、女の子に幻想抱きすぎですよ」
ああっ、皆川!言うてはならんことを!
「そんなん言うてたら女の子誰も相手にせんようになりますよ、そうなったら結婚でけへんし、子供も作れませんやん、そんななっても知りませんからね」
そういう大局的な話がどこから出てきたものか、なんか話があらぬ方向に向かい始めているようだが、傍で聞いている分には面白い。半笑いでコトの成り行きを見守るのみである。
「いらんわいっ!ワシは根性で細胞分裂する!」
こう言い放つ『気を使う繊細な豪傑で愛すべき人』(by 会津さん)を相手に、女傑は飽くなき闘いを挑み続けるのであった。
何人か先輩が一緒だった。
それはヤブカラボーだった。
「秘密結社をつくるからな、松田も入れたるわ」
「秘密結社?ですか?」
「おう、秘密結社『マングースの白い牙』や。ええやろ」
「『マングース』って」
「おう、『タスマニアンデビルの黄色い門歯』と迷ってんけどな、こっちの方がカッコええやろ」
いやいやマングースだろうがタスマニアンデビルだろうが、なんならオコジョだってかまわないんだが、でも確かに『黄色い門歯』よりも『白い牙』のほうが ... いかん、ちょっとノせられとる。
「俺だけ?」
「いや、宝饒も入っとる」
「お、チョイ待てや松須、おれそんなんいっこも聞いてへんやんけお前」
「やかましい!ワシが結社つくるゆうたらお前も入るに決まってるやんけ」
「決まってへんわ、そんなもん」そういいながら宝饒さんは引き込まれそうな素敵な笑顔である。
「で、その結社で何するんですか?」
「まずはお前のトコで作戦会議や」
「はぁ?会議って?」
「酒呑むに決まっとるやろ、わからんかぁ?」
いずれそんなことだろうと踏んではいたが、そんなもん、結社する必要ないじゃないですか、いつものこっちゃのに。
かくして秘密結社『マングースの白い牙』の活動は開始されたのである。秘密裡に、しかしいつもどおりに堂々と。
メンバーは流動的で、結社の長(何て言うんだ?『社長』か?)松須さんのいるところどこでも作戦会議となる。つまりその場に居合わせた者は自分が秘密結社『マングースの白い牙』の作戦会議に出席していることなど知る由もない、ということは、メンバー本人にも自身が結社の一員であることは秘密になっているのである。これほどの『秘密』結社がかつて存在し得たであろうか。
「あー、ナミカワさん、ナミカワさん」
とある作戦会議での一幕である。
「あー、ナミカワさん、ナミカワさん」
「わたし、皆川ですっ!」
皆川女史は松田と同期で、周りから「どうしてあんな真面目な子がこんなとこに居んだろうね」と身も蓋もない言い方をされたことのある、朴訥な中に芯の強いというか、「マーそんな硬いこといわんと」と一声かけたくなるような、ちょっと昔気質な一面もある女傑である。なぜ女傑であるかというに、元来石地さん言うところの「ガラスのハート」である松須さんの、照れ隠しの意味合いもある粗暴な言動を矯正すべく敢然と挑みかかっていったからである。松須さんの卒業まで数度にわたって繰り広げられた松須vs. 皆川バトルは、皆川女史の入学間もないこのあたりに端を発するものと思われる。
「おおっ、すまん。だけどお前ナミカワいう感じやねん、今日からナミカワにせぇ!」
無茶である。
以前にも触れたとおり、若い頃なら誰もが陥りがちな「漢(おとこ)」幻想を追い求めているようなところのある松須さんは、ことあるごとに「男っちゅうのはやな、・・・」「女っちゅうのはやな、・・・」と『懇々と』理想の男性像、女性像を説いていた。そんな折も折。
「松須さん、女の子に幻想抱きすぎですよ」
ああっ、皆川!言うてはならんことを!
「そんなん言うてたら女の子誰も相手にせんようになりますよ、そうなったら結婚でけへんし、子供も作れませんやん、そんななっても知りませんからね」
そういう大局的な話がどこから出てきたものか、なんか話があらぬ方向に向かい始めているようだが、傍で聞いている分には面白い。半笑いでコトの成り行きを見守るのみである。
「いらんわいっ!ワシは根性で細胞分裂する!」
こう言い放つ『気を使う繊細な豪傑で愛すべき人』(by 会津さん)を相手に、女傑は飽くなき闘いを挑み続けるのであった。