【骨折30日目】
今、もう一度、同じ場面になったら…。
もちろん、打ちますよ。絶対に勝ちたかったし。
とは、やっぱり言えない。
少し雨が降っていたから、滑りながら打てば左足は自然に滑って大丈夫だと思った。サッカーを何十年とやってきた勘だ。
だけど、そのまま、人工芝のピッチに引っかかったというか動かなかった。
センターサークルから相手陣内に少し入ったところで、味方からボールを受けた。体の後ろに流れそうな、かなり難しいボールだったのに、うまく右足のアウトサイドでトラップできて、奇跡的にツータッチ、スリータッチ、そしたら相手のセンターバックを振り切って、気づいたらキーパーしか前にはいなかった。
ドリブルすれば、そのまま1対1の場面。もう一度、前を見るとキーパーはかなりゴールの左にズレていた。
ここで、右足で巻いて打てば入る。見えてしまった。
でも距離が遠い。かなり力を入れよう。
手応えというか、右足の感触は完璧だ。
後ろから味方の歓声が聞こえる。入った。
その時、左足には激痛が走った。悲鳴に近い声が出た。
凄く憎たらしい相手だった。振り切ったDFもよく知っている実力者だった。キーパーもホント嫌いな奴だった。いつもいつも文句ばっか。でも、一度も点を取れていなかった。だから…。力んだ。
代償は左足腓骨骨折だった。
あの時から1カ月がたった。酒も飲まずに、会社にも行けず、外に出るのは整形外科に行った4度だけだ。
今も半ギプスで、松葉杖をついている。
怪我以前、毎日ストイックに走って、シニアなのにサッカーに取り憑かれていた。まるで義務のように。
なんだか、今思うとちょっと違う気がする。
もっと時間を有意義に、色々なものを見に行った方が良いのではないだろうか。
今のところ、少し人生観が変わりつつある怪我である。
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