陰陽

3月31日、カンプノウ。バルセロナベンチ横のコーチングゾーンには、全く落ち着きのない男がいました。

ペップグアルディオラ41歳。

右へ動き、左へ動き、上を向いて、今度はうつむく。腕を組みジーッと考え込み、ふと気づいたかのようにベンチに戻りコーチと話し込む。

その姿は一種、病的に見えました。

消耗。彼が退団の理由に挙げたその言葉は、嘘偽りのない本音でしょう。愛しすぎるクラブゆえ情熱を注ぎすぎたのです。

4月27日、長良川競技場のアップゾーンに観客の視線を浴び続ける男がいました。

三浦和良45歳。

前半の20分過ぎからのアップ開始は、後半からの出場を期待させるものでした。しかし出番は
やってきません。

後半半ばにはスネ当てを装着し、短パン姿になりました。今度こそ出場か…。しかしまだまだお呼びはかからない。

結局、試合に出場したのは残り5分。ボールには競り合いで一度触れただけでした。

試合終了後、キングの表情は曇っているように見えました。コーヒーのテレビCMで見せる笑顔とは対極にある苦悶の表情。

それでも視線は鋭く前を向いていました。

プライドをズタズタにされたって、這い上がり続ける精神力には全くもって頭が下がります。

輝くピッチの横にも、自分と全力で向き合い戦っている男たちがいます。

そんな彼らを通して見るサッカーは、かなり苦いけれど、凄く深くて魅力的な味わいがあるのです。

思考

勝負の神様は時に意地悪です。

バルセロナはチェルシーとホームで引き分けチャンピオンズリーグ連覇の夢を絶たれました。

メッシのPKが入っていれば…。バーにあたりゴール側に落ちていれば…。ミュンヘンで相手を完全に翻弄するフットボールが見れたかもしれません。

バルサの相手はチェルシーではなく、レアルでもなく過密日程だった気がします。頭をフル回転しなくてはならないポゼッションサッカーには疲労が足かせでした。特にメンタル、思考の部分。

頭が疲れると、どうしても安全なパスを選択しがちになります。取られてカウンターされたらどうしよう。独創的な動きは制御され、ただ時間だけが過ぎていく…。

バルセロナは全てのタイトルを狙わなければならないチームです。
リーガにも、可能性が残ってしまったため捨てゲームが作れなかった。メンタルを休める時間が足りなかった。

逆に考えると素晴らしい挑戦だったと思います。全ての可能性を信じ全力で戦い、力尽きたのですから。

ペップはこういいます。我々のシーズンではなかった。負けて学ぶことも多い。

ユーロ、五輪を経てやってくる来シーズンはコンディション的にはさらに厳しい1年になります。

カテナチオが、美しいサッカーを喰ってしまうことは何年に一度かで十分。

フットボールの将来ためにも、バルサには立ち上がってもらわないと困る。

ファンの皆さま、こういう時はすっきりさっぱり忘れましょう。

This is football

これがフットボールさ

知性

4月23日は、スペインのカタルーニャ地方において、サンジョルディの日という祝祭日にあたります。

この日は、男性が女性に薔薇を贈り、女性からは男性に本を渡す風習があるそうです。

サンジョルディとは昔、カタルーニャ地方を襲ったドラゴンを倒した若き英雄の名前だそうです。その聖人の知性をたたえ本をプレゼントするようになったとか。4月23日は、かのシェイクスピアの命日でもあるそうです。

だからでしょうか。だからなのでしょう。バルセロナではセスクファブレガスの本が発売されました。

24歳にして、自伝ができるなんて…。まぁ濃い人生を送っている訳でありますが。

現在バルセロナは、敵地でチェルシーに敗れ、首都から来たレアルにまで敗れリーガの優勝が絶望的になりました。

連敗。

これ以上ない苦境の中、明日、イングランドから来る青いドラゴン、チェルシーを迎え撃たなければなりません。

サンジョルディになりうる英雄は誰なのでしょうか？

本命はメッシでしょう。ただ私は大穴にセスクを推します。

最近のペップ采配を見ていると背番号４の存在価値は低くなっている気がします。

だけどアーセナルでキャプテンを務め上げた男です。
フットボールの知性を多く持つ男です。

このタイミングでの自伝出版は、なによりカタルーニャが期待している証。

カモン！ファブレガス‼

ゴールを決めて、君よ聖人になれ。

匂い

以前、私が愛読していたサッカーダイジェストにこんな見出しがありました。

中村の匂い。

匂いというのは、いわば雰囲気、空気。当時JFLにいた中村憲剛を見た記者が、既に第一線で活躍していた中村俊輔を重ね合わせた、という訳です。

その目に狂いはありませんでした。その後の憲剛の活躍は、知っての通り。都立久留米から中央大。地味なキャリアの華奢な青年は川崎を引っ張り、日本代表のキーマンにまで成長しました。

そして今回、ACL名古屋vs天津で私の鼻を刺激する選手が現れました。

ブスケッツの匂い。

スコアレスドローに終わった退屈な90分。しかし後半途中から出場したボランチに救われました。

その名は磯村亮太。
ユースから生え抜きの21歳。ザックジャパンにもサプライズ選出されたグランパス期待のMFです。

何よりボールを受ける角度がいい。ボールを受けた時の力の抜け具合がいい。そして、相手の間に入る二三歩、動き出しのセンスがいい。ただ、単純なパスミスが多いのも玉にきずですが。

彼は間違いなくサッカーIQが高い。バルサや欧州サッカーから多くを吸収している選手です。伸びしろがある。

残念ながら、ピクシーは高い守備能力をボランチに求めているため出場機会が多くありません。

ただ…結果は出ていてもグランパスの試合はどうも美しくない。面白くない。

それを一番感じているのは、ファンタジスタであったストイコビッチ本人でしょう。

結果と内容。確かに両立させるのは難しいけれど…。

ピクシーと磯村。
二人の関係が、将来のグランパスの匂いを握っているかも知れません。

事情

困った迷いネコであります。
奈落の底にまっしぐらなのであります。

ひろしです。
マラソンのカンボジア代表に決まっていたのに、国際陸連に認可してもらえず、五輪は幻になりそうです。

ひろしです。
あんなに頑張って走ったのに、カンボジアの招き猫なんて言われています。

ひろしです…ひろしです。

あんまり、真剣に追いかけてはいませんが、この問題の答えはすぐにわかります。

だってオリンピックって国別対抗戦じゃん。そりゃ日本だって闘莉王が出たこともあるけれど、そもそも、それもおかしい。

色々事情があるから、頑張ったんだから…。でもカンボジアの人は応援しないでしょ。

テレビを眺めていると、同情的な意見が大多数。日本っておかしい国になっちゃったんだなぁ。

レベルは違えど、原発問題だってそう。動かさないと日本の経済が回んなくなるよ。っておいおい。何が東北で起きたか、もう忘れちゃったんですか？

事情を絡めて複雑にして、小学生でも分かる真実を分かりにくくする。

その事情っていうのが、お金だから、誰かの利権だから、凄く空しく見える訳です。

猫は五輪に出るべきじゃない。
原発は動かすべきじゃない。

簡単なことだと思うのですが。