昨日の15時過ぎに、ぜんさんがイベリコ豚セクレタを持ってアウラにいらした。
ぜんさんがお肉を持ってアウラに来たのには訳があった。
インターネットで買ったイベリコ豚セクレタとアウラで使っているイベリコ豚セクレタとの味が全く違う…本当にイベリコ豚のセクレタなのか?
…というものだった。
(詳しくは、昨日の記事『真偽はいかに…』をご覧下さい)
ぜんさんも肉の品質を落とさないために、冷凍状態になっていた肉を慎重に解凍して保冷バッグにいれて持ってきていた。
話を伺うと肉の解凍の仕方としては、最善の方法で良い状態だと思う。
アウラの冷蔵庫からイベリコ豚セクレタを取り出して、双方の肉を見比べてみた…。
脂のつき方などは、若干違うが…見た目は大きく変わらない。
よく見るとアウラで使っているイベリコ豚は、解凍して開封した後でもドリップ(肉汁や血)が全くでていないが…。
ぜんさんのお持ちになったイベリコ豚は、メーカーの袋に入っておらず、独自の真空パックに入っていた。
こちらには、かなりのドリップがでている。
ドリップがでているということは、素材の味がでてしまっているということ…。
グリルに火を入れてグリエ(網焼き)にした。
肉の中心部分がロゼ(ピンク色、ミディアムの状態)になるように焼いた。
(ぜんさんの肉は、すでに肉汁を失っている為、焼いた時に肉汁を失わないようにミディアムレア気味に焼いた)
双方の肉をスライスして食べ比べてみた。
ぜんさんが買った肉は、イベリコ豚セクレタには違いがないが、口に入れたときに肉汁があふれだしてしまう。
味が先に流れ出してしまうため噛んだ時に味が出てくるという感じではない。
アウラで使っているイベリコ豚は、口に入れても肉汁はでてこない。
噛んだ時にじわ~じわ~っと旨みがでてくる。
ぜんさんの指摘の通り、味の格差は歴然としている。
イベリコ豚のセクレタであっても品質の違いは明らかである。
考えられることは…
肉の細胞組織に保水力がない。
細胞組織が壊れかかっている状態というのだろうか…。
だから、噛まなくても味や旨みの水分が先にでてきてしまう…。
先に味がでてしまうと口に残るのは味と旨みのない肉。
だから口の中で噛んでいても美味しい肉汁はでてこない。
ただ、味気のない肉を飲み込むために噛んでいるという具合。
冷凍と解凍の方法に問題があったり、一度解凍したものを再び冷凍したものなどに、このような劣化が起こることがある。
話は変わるが…
僕は、生で仕入れた鮮度の良い肉や魚を冷凍することはない。
店が暇になって素材が冷蔵庫にあまっても、冷凍保存することはない。
ただ努力することは、生の良い状態の時に売り切ることだ。
ランチに使うこともあるし、前菜にしたりパスタにしたりして…
メニューや売り方を工夫して、とにかく売り切る。
マイナス20~30度なんて急速冷凍なんて世界には入らない。
マイナス50度以上の一瞬にして凍る世界が必要だから…。
せっかく鮮度の良い生の素材を仕入れたのに、何故その素材を劣化する必要があるのか?
生産者や僕に素材を届けてくれた仲間の努力は水の泡…。
それだけは避けたいと思っている。
ただ、皆さんの家庭での話は別物だと思う。
何故なら、その家庭での事情があると思うから…。
話を元に戻します…。
ぜんさんが買ったインターネットで販売しているページを見ても僕が使っているイベリコ豚のメーカーとは違うパッケージなので、まずスペインのイベリコの生産者とメーカーが違う。
電話でお肉屋さんの秀さんに確認をしてみた。
日本に来ているイベリコ豚を輸出しているメーカーは沢山あるらしい…
その中で、秀さんが認めたメーカーは、2社しかなかったとの事。
その1社がアウラで使っているメーカーである。
(注:メーカー名は秘密にしておきたい。何故ならこのメーカーの商品が売れすぎてしまうと仕入れ価格が高騰しすぎてしまう)
そしてもうひとつ考えられるのは…
ぜんさんが持ってきたイベリコ豚は、自前の真空パックに入っていた。
これは、メーカーがパッケージしたものを小分けにして計量して真空パックしているものだと思う。
この時に、解凍してから小分けして真空パック、再び冷凍というステップを踏んでいれば…品質は、この段階で極度に落ちる。
冷凍状態を保持したままで、小分けしてから真空パックをしていれば問題はない。
解凍した肉に真空をかけると真空機の真空度合いの調整にもよるが、素材に含んでいる空気までも抜ける。
この時、ドリップ(肉汁や血)も一緒に出てきてしまう。
ここでも品質は落ちる。
秀さんは、肉を加工した時の自前での真空は好まない…。
真空機の調整を窒素を混合させる調整にして、素材を袋に入れた後、脱酸素剤(よくお菓子などに入っている小さな食べられない袋)をひとつ袋に入れて余分な空気だけを抜いて密封する。
何故、脱酸素剤を入れるかというと…
酸素が素材を酸化させると劣化して腐るからだ。
酸素がない分、劣化と腐食のスピードは落ちる。
僕が、素材の仕入先にこだわるのには訳がある。
優れた美味しい素材を仕入れて初めて美味しい料理が生まれる。
美味しくない素材を美味しいものに誤魔化すには限界があるし、美味しい素材に変える魔法を僕は持っていない。
本物のプロから品物を買うのが一番だから…。
その素材を使えば、例えもし僕の腕が少々悪かったとしても美味しい料理はできる。
インターネットでの食材の購入というのは難しいものだと思い知らされた事件だった。
ぜんさんが買ったことにも…なんだか責任を感じてしまった。
僕が使っている素材と同等もしくは、それ以上の商品しか紹介することは出来ないですね。
一度、自分でとってみて確認をしてから、ご紹介することにします。
勿論、美味しいものを美味しいままに届けようと努力している通販業者さんも沢山おられるに違いない。
このイベリコ事件のお店が悪いとも僕は思っていない。
努力をしていてもイレギュラーというのが生じることはある。
イベリコ豚ブームが蔓延していることは事実。
これに便乗しているお店も多いだろう。
流行…これに落とし穴が多くなるのは仕方ないのかな?
あまりに長くなってしまったので、イベリコ種の豚について少し書きたかったですが、機会を見つけて改めて書くことにします。
イベリコ豚ブーム…まだしばらく続きそうですね。
でも、美味しいのは確かです。
確かな所から確かなものを仕入れて試してくださいね。
『イベリコ豚セクレタ』の記事から、商品のリンクははずしました。
リンクをはってしまった不手際を深く反省し…
今後の糧とさせて頂きます。
もし、リンクをはずす前に、ここから買われた方がいらっしゃったなら…
大変、申し訳ありませんでした。
今後、僕が取り寄せて確認した後に、ご紹介いたします。
2006年9月22日
aura cucina
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ぜんさんがお肉を持ってアウラに来たのには訳があった。
インターネットで買ったイベリコ豚セクレタとアウラで使っているイベリコ豚セクレタとの味が全く違う…本当にイベリコ豚のセクレタなのか?
…というものだった。
(詳しくは、昨日の記事『真偽はいかに…』をご覧下さい)
ぜんさんも肉の品質を落とさないために、冷凍状態になっていた肉を慎重に解凍して保冷バッグにいれて持ってきていた。
話を伺うと肉の解凍の仕方としては、最善の方法で良い状態だと思う。
アウラの冷蔵庫からイベリコ豚セクレタを取り出して、双方の肉を見比べてみた…。
脂のつき方などは、若干違うが…見た目は大きく変わらない。
よく見るとアウラで使っているイベリコ豚は、解凍して開封した後でもドリップ(肉汁や血)が全くでていないが…。
ぜんさんのお持ちになったイベリコ豚は、メーカーの袋に入っておらず、独自の真空パックに入っていた。
こちらには、かなりのドリップがでている。
ドリップがでているということは、素材の味がでてしまっているということ…。
グリルに火を入れてグリエ(網焼き)にした。
肉の中心部分がロゼ(ピンク色、ミディアムの状態)になるように焼いた。
(ぜんさんの肉は、すでに肉汁を失っている為、焼いた時に肉汁を失わないようにミディアムレア気味に焼いた)
双方の肉をスライスして食べ比べてみた。
ぜんさんが買った肉は、イベリコ豚セクレタには違いがないが、口に入れたときに肉汁があふれだしてしまう。
味が先に流れ出してしまうため噛んだ時に味が出てくるという感じではない。
アウラで使っているイベリコ豚は、口に入れても肉汁はでてこない。
噛んだ時にじわ~じわ~っと旨みがでてくる。
ぜんさんの指摘の通り、味の格差は歴然としている。
イベリコ豚のセクレタであっても品質の違いは明らかである。
考えられることは…
肉の細胞組織に保水力がない。
細胞組織が壊れかかっている状態というのだろうか…。
だから、噛まなくても味や旨みの水分が先にでてきてしまう…。
先に味がでてしまうと口に残るのは味と旨みのない肉。
だから口の中で噛んでいても美味しい肉汁はでてこない。
ただ、味気のない肉を飲み込むために噛んでいるという具合。
冷凍と解凍の方法に問題があったり、一度解凍したものを再び冷凍したものなどに、このような劣化が起こることがある。
話は変わるが…
僕は、生で仕入れた鮮度の良い肉や魚を冷凍することはない。
店が暇になって素材が冷蔵庫にあまっても、冷凍保存することはない。
ただ努力することは、生の良い状態の時に売り切ることだ。
ランチに使うこともあるし、前菜にしたりパスタにしたりして…
メニューや売り方を工夫して、とにかく売り切る。
マイナス20~30度なんて急速冷凍なんて世界には入らない。
マイナス50度以上の一瞬にして凍る世界が必要だから…。
せっかく鮮度の良い生の素材を仕入れたのに、何故その素材を劣化する必要があるのか?
生産者や僕に素材を届けてくれた仲間の努力は水の泡…。
それだけは避けたいと思っている。
ただ、皆さんの家庭での話は別物だと思う。
何故なら、その家庭での事情があると思うから…。
話を元に戻します…。
ぜんさんが買ったインターネットで販売しているページを見ても僕が使っているイベリコ豚のメーカーとは違うパッケージなので、まずスペインのイベリコの生産者とメーカーが違う。
電話でお肉屋さんの秀さんに確認をしてみた。
日本に来ているイベリコ豚を輸出しているメーカーは沢山あるらしい…
その中で、秀さんが認めたメーカーは、2社しかなかったとの事。
その1社がアウラで使っているメーカーである。
(注:メーカー名は秘密にしておきたい。何故ならこのメーカーの商品が売れすぎてしまうと仕入れ価格が高騰しすぎてしまう)
そしてもうひとつ考えられるのは…
ぜんさんが持ってきたイベリコ豚は、自前の真空パックに入っていた。
これは、メーカーがパッケージしたものを小分けにして計量して真空パックしているものだと思う。
この時に、解凍してから小分けして真空パック、再び冷凍というステップを踏んでいれば…品質は、この段階で極度に落ちる。
冷凍状態を保持したままで、小分けしてから真空パックをしていれば問題はない。
解凍した肉に真空をかけると真空機の真空度合いの調整にもよるが、素材に含んでいる空気までも抜ける。
この時、ドリップ(肉汁や血)も一緒に出てきてしまう。
ここでも品質は落ちる。
秀さんは、肉を加工した時の自前での真空は好まない…。
真空機の調整を窒素を混合させる調整にして、素材を袋に入れた後、脱酸素剤(よくお菓子などに入っている小さな食べられない袋)をひとつ袋に入れて余分な空気だけを抜いて密封する。
何故、脱酸素剤を入れるかというと…
酸素が素材を酸化させると劣化して腐るからだ。
酸素がない分、劣化と腐食のスピードは落ちる。
僕が、素材の仕入先にこだわるのには訳がある。
優れた美味しい素材を仕入れて初めて美味しい料理が生まれる。
美味しくない素材を美味しいものに誤魔化すには限界があるし、美味しい素材に変える魔法を僕は持っていない。
本物のプロから品物を買うのが一番だから…。
その素材を使えば、例えもし僕の腕が少々悪かったとしても美味しい料理はできる。
インターネットでの食材の購入というのは難しいものだと思い知らされた事件だった。
ぜんさんが買ったことにも…なんだか責任を感じてしまった。
僕が使っている素材と同等もしくは、それ以上の商品しか紹介することは出来ないですね。
一度、自分でとってみて確認をしてから、ご紹介することにします。
勿論、美味しいものを美味しいままに届けようと努力している通販業者さんも沢山おられるに違いない。
このイベリコ事件のお店が悪いとも僕は思っていない。
努力をしていてもイレギュラーというのが生じることはある。
イベリコ豚ブームが蔓延していることは事実。
これに便乗しているお店も多いだろう。
流行…これに落とし穴が多くなるのは仕方ないのかな?
あまりに長くなってしまったので、イベリコ種の豚について少し書きたかったですが、機会を見つけて改めて書くことにします。
イベリコ豚ブーム…まだしばらく続きそうですね。
でも、美味しいのは確かです。
確かな所から確かなものを仕入れて試してくださいね。
『イベリコ豚セクレタ』の記事から、商品のリンクははずしました。
リンクをはってしまった不手際を深く反省し…
今後の糧とさせて頂きます。
もし、リンクをはずす前に、ここから買われた方がいらっしゃったなら…
大変、申し訳ありませんでした。
今後、僕が取り寄せて確認した後に、ご紹介いたします。
2006年9月22日
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