つれない夏

わたしの部屋は家中で一番暑く、まったく猫が入ってこなくなってしまった。

猛暑のせいか、寄って来て懐くことも少なくなった。

子猫のころは、どんなに暑くても膝に乗りたがったのに・・・

クーラーの効いた部屋で籐の椅子に寝そべる猫。

エマニュエル夫人か。

あーあ、さびしいよ、最近冷たくて。

ぼやいて、ごろんと横になると突然、椅子から降りてきて

にゃーと擦り寄ってきた。

あんた言ったことわかったの？

お利巧ねえ。

親ばか全開、久しぶりに甘えられて嬉しかったです。

いつもの不法侵入ですが

夜中に、不穏な空気を感じて目を覚ますと

うちの猫が廊下で階段のほうをうかがっている。

眠い目をしばたかせながら廊下を見ると、白黒の猫がいる。

あれ、クロちゃんじゃないんだ。

はい、帰って帰って。

あんたも追いかけないの。

エサがだいぶ食べられていたので補充しようとしたら

寝ぼけてるもんだから、キャットフードをザーっと廊下に。

ああ・・・

いいや、眠いし明日片付けよう。

朝、母親が「誰、こんなに散らかして！どこの猫!？」

わたし。

もう猫なんか嫌いだよ・・・。

声が・・・

同僚の飼い猫の声が突然出なくなったという話を聞いた。

「あー」と口を開けているのにほとんど鳴き声が聞こえないという。

食欲もないようだし、夏バテかな？と言うので

様子を見て、病院に連れて行ったほうがいいよと話した一週間くらい後。

仕事から帰ると、うちの猫が「あ」に点々が付いたような変な声。

なに、その声。

かすれているような枯れているような、人で言うなら風邪を引いたような。

ああ、思い出した。

数年前、やっぱりこんな風になって病院に連れて行ったっけ。

お医者さんは、喉の周辺を診察して

「うーん、骨も刺さってないし炎症も起こしてないようですね」

レントゲン撮っても何も出ないでしょう、ということで抗生物質を渡されたのだ。

なんにでも効くのか、抗生物質。

まあ結局、数日で戻ったのだが。

そのことを思い出したのでとりあえず様子を見ることにした。

だって、病院に連れて行くと死にそうな騒ぎになって、あれは猫の身体に悪いと思うから

今すぐどうこうって感じじゃなければなるべく連れて行きたくないのだ。

一週間ほどたった今、どうやら治ったみたい。

やれやれ、なんだったんだろう。

今、猫の声枯れが流行ってるんだろうか。