怒ったのかな

たらはどちらかというとおとなしい性質で

母が無理に抱っこしても引っかいたりしない。

寝ぼけているときにおなかを触ると噛み付くこともあるが

痛いよ、と言うとすぐにやめる。

初めて会ったとき、にゃーにゃーと人恋しそうに鳴きながらも

近付くと「シャー」と威嚇を繰り返していたたらだが

わたしや家族に慣れてからは、知らない人を見ても威嚇をするようなことはなくなった。

しかし知らない人は苦手で、お客さんが来ている時に

外から帰ってきて知らない人を発見すると固まってしまう。

いつもたらの出入りするドアは開けておくのだが、風の強い日に閉まってしまった。

仕事から帰宅するとたらはいないし、出入り口に通じるドアは閉まっているし

どうやら締め出された形になってしまったらしい。

心配しているとしばらくして表から心細げに小さく鳴く声が聞こえる。

帰ってきた。

ドアを開けると「にゃー」と鳴いてから「シャー」だって。

三年ぶりに聞いたよ、たらの威嚇する声。

「なんで締め出したのよ！」ってところかしら。

ごめん、かわいそうだったね。

待つわ？

たらは、今でこそ誰もいない二階に寝ていることもあるが、

以前は絶対に誰かいる部屋でしか寝なかった。

甘えん坊のさびしがりである。

なので、今も時どき一緒に二階に行こうとわたしを誘うことがある。

まず階段に足をかけてこちらを見て鳴く。

わたしが足をかければ自分は数段上る。

わたしが追いつくとまた数段上がる、といった具合。

しかし忙しくて一緒に行ってやらないと

まず、二段目辺りで待っているのだ。

ちょこんと座って。

それでも忙しくて行けなかったとする。

しばらくすると五段目あたりにいる。

そこでわたしのほうを見てじっと待っている。

結構長い間待っても来ないことがわかると

すねて一人で上へ行く。

この、階段で待っている状態が可愛い。

でも可哀相だからすぐに一緒に行ってしまう。

甘いかなー。

犯人？

夕べ、部屋で寝ていたたらが椅子から降りる音で目を覚まし、部屋の外を見ると

黒い尻尾が見えて、すぐに消えた。

よその猫が入り込んでキャットフードを食べていたのはこれが初めてではない。

しかし、いつもなら見つけた途端に猛然と追いかけるたらが微動だにしない。

様子を見に階下へ降りるわたしの後について来ようともしない。

あの尻尾からして相当大きな猫と見た。

一昨日のキャットフードパラパラ犯人もあの猫なのか？

しかし猫は口にエサを頬張るようなことしないと思うんだけど。

ますます謎は深まるのであった。

キャットフードミステリー

夜中、パラパラと何かが廊下に落ちる音で目を覚ました。

どういうわけか眠りが浅く、些細なことで目を覚ます。

その音は、なにか硬くて小さな物がいくつか落ちてきたような音だった。

トイレに行くついでに確かめようと廊下に出ると、キャットフードが点々と。

これか。

確かにこれが廊下に落ちたらさっき聞いたみたいな音がするだろう。

しかしまたなぜこんなところに。

たらの茶碗から、落ちていたところまでは少し距離があり、たらが食べこぼしたとは思えない。

しかも食べこぼしたならあんな音はしない。

あの音は、例えばリスやハムスターがエサを口いっぱいに頬張って

移動中にこぼれたという感じの音だ。

猫は口いっぱいに頬張って移動したりしない。

しかもたらはしばらく前から出かけていて帰っていないようだし。

落ちていたキャットフードのひとつをつまんでみると湿っている。

一度口に入れた気配濃厚。

何者が？

考え込んでいるところにたらが帰ってきた。

やっぱり出かけてたのか。

どっちみち、たらじゃないことはわかっていたけれど。

もしもたらが居たならば、小さなヘンゼルとグレーテルは只じゃ済まなかっただろう。

それにしても何者なんだろう。

猫のように生きられるか

たらが迷い込んできてから2年半ほどになるがときどき、

一体どこからやってきたのだろうと考える。

というのは、引っ越す前に住んでいた家は周りにほとんど人家がなく交通量も多く、

子猫が一匹でふらりとやってくるには不自然な場所にあったのだ。

誰かが夜中に捨てていったとしか考えられない。

とすると、近所から来たとは限らないわけだ。

眠っているたらに「あんたのお母さんや兄弟はどこにいるんだろうねぇ」と

言ってみたりもするが、知るはずもないし興味もなさそうだ。

人間の側から見ればさびしいような気もするが

しがらみも心配もなく、自由なのかもしれない。

自由と孤独は表裏一体、見方次第。

それにたらは、ちゃっかりわたしに可愛がられているわけだし。

どこかにいる、たらと同じ複雑模様の猫も元気でありますように。

逃したシャッターチャンス

毛づくろいをしているたらの側で音を立てたら

ちょっとびっくりして動きを止めてこちらを見た。

と思ったら、舌を出したまんま！

おかしくてしばし見つめているといつまでもそのままでこちらを見ている。

カメラカメラ！

もうちょっとそのまま・・・

カメラを手にした途端、引っ込めてしまった。

惜しかったな。

つれないあの娘

近所で飼われているほとんどの犬は人懐こく、

自分の家で飼えない代わりによその犬たちを可愛がっている。

ロコは身体は大きいがおとなしく、「猛犬注意」のステッカーはあるものの

通りかかると家の柵から顔を覗かせて、わたしのことを舐める舐める。

ランは知らない人には吠えるが、

わたしのことは遠くからでもわかって尻尾を振って待っている。

クッキーもハナちゃんもみんないい子なのに

アスカだけはいつまでも打ち解けない。

朝、アスカが悲しそうに「ふんふん」鳴いているので

もしかして紐がからまってしまったとか？と心配して覗いてみると

どうやら一家でお出かけしてしまったらしく、玄関のドアを見つめて鳴いている。

さびしいのね。

アスカちゃん、どうしたの。

声をかけた途端に振り向き

「ワンワンワンワンワンワン！」

かわいくねー。

かわいいかわいい

たらを見ているとしみじみ

どうしてこんな凶悪顔なんだろうと思う。

額に黒い縦筋があるせいで、眉間にしわを寄せているように見える。

目もあまり大きいほうではないのでなんだかやぶ睨みっぽいし。

性格が可愛いだけにギャップが大きい。

猫は見た目じゃないですよー。