「おせんから難しいものをもろうて、おおじょうしとりますねん」と言うと、腰を上げて、いそいそと、それでも満更ではないようなお顔をしながらお帰りになります。
「こいさんが、留守の間、お園と親しうしておましたで、と教えてくれた者がいたが、その間に何があったのか、今、大旦那様から聞かせていただいた。・・・大変だったようだね」
と平蔵。
「可哀想なおせんさんです。政之輔さまというお相手が亡くなられてしもうたのですから」
もう、そろそろ涼しい風がと思うのですが秋は暦の上だけで気配すら感じさせない残暑の厳しい日でした。
平蔵は家に帰るなり、
「こいさんが、今日お店にひょっこり出て「何か手伝うことない」と言った」 と、びっくりしたようにお園に話をしてくれました。
「あれから、どうしておいででしょうか。明日にでも、おせんさんを尋ねてみようかな」と思っていた矢先ですから余計にお園も驚きます。
そんな日があった2、3日後です。
平蔵がお店から帰ると、着替えをしながらいきなり言うのです。
「今日珍しい人に会ってなあ。染屋の三吉にばったり出会って、飲み屋で久しぶりにやったんだ。そこで、偶然、あのあくぎんこと、銀児親分の事が出てきたのだ。どうして三吉があくぎんを知っていたのかようわからんのじゃが、どうも話からすると、こいさんの政之輔様は、あのあくぎんに殴り殺されたのではないかと思われるのじゃ。得意そうに話していたのを聞いたと言っていた。大旦那様に話したほうがいいかなあー。・・・・・大旦那さまに言ったからと言って、今すぐどうにかなるもんでもないのじゃが。町人の我々にはどうしようもない手の出せない、何せ相手が御上だもんなあ・・」
お園も思案顔で聞いています。
「そんなことってあってたあまるもんか。かわいそうなおせんさん」と、心の内で思います。
「大旦那様にも言わん方がいいかなあ。何にもならんだけじゃけえ」
「ようわからんけど。もしそうだったとしても敵討ちもでけんじゃろう。どうしたらいいのでしょうか。おせんさんが知ったらよけえに悲しまれるだけじゃけん。知らせんほうがええのとちがう?・・・・・でも、この前、ここで大旦那様が調べようがないと、悔しそうに言われた悲しげな声が、まだ、この耳に残っております。・・・・が、やっぱり言わんほうがええのかなあ」
「こいさんが、留守の間、お園と親しうしておましたで、と教えてくれた者がいたが、その間に何があったのか、今、大旦那様から聞かせていただいた。・・・大変だったようだね」
と平蔵。
「可哀想なおせんさんです。政之輔さまというお相手が亡くなられてしもうたのですから」
もう、そろそろ涼しい風がと思うのですが秋は暦の上だけで気配すら感じさせない残暑の厳しい日でした。
平蔵は家に帰るなり、
「こいさんが、今日お店にひょっこり出て「何か手伝うことない」と言った」 と、びっくりしたようにお園に話をしてくれました。
「あれから、どうしておいででしょうか。明日にでも、おせんさんを尋ねてみようかな」と思っていた矢先ですから余計にお園も驚きます。
そんな日があった2、3日後です。
平蔵がお店から帰ると、着替えをしながらいきなり言うのです。
「今日珍しい人に会ってなあ。染屋の三吉にばったり出会って、飲み屋で久しぶりにやったんだ。そこで、偶然、あのあくぎんこと、銀児親分の事が出てきたのだ。どうして三吉があくぎんを知っていたのかようわからんのじゃが、どうも話からすると、こいさんの政之輔様は、あのあくぎんに殴り殺されたのではないかと思われるのじゃ。得意そうに話していたのを聞いたと言っていた。大旦那様に話したほうがいいかなあー。・・・・・大旦那さまに言ったからと言って、今すぐどうにかなるもんでもないのじゃが。町人の我々にはどうしようもない手の出せない、何せ相手が御上だもんなあ・・」
お園も思案顔で聞いています。
「そんなことってあってたあまるもんか。かわいそうなおせんさん」と、心の内で思います。
「大旦那様にも言わん方がいいかなあ。何にもならんだけじゃけえ」
「ようわからんけど。もしそうだったとしても敵討ちもでけんじゃろう。どうしたらいいのでしょうか。おせんさんが知ったらよけえに悲しまれるだけじゃけん。知らせんほうがええのとちがう?・・・・・でも、この前、ここで大旦那様が調べようがないと、悔しそうに言われた悲しげな声が、まだ、この耳に残っております。・・・・が、やっぱり言わんほうがええのかなあ」