Near Billie Holiday's apartment.-NY.Harlem. Feb.2011.
ここ数日、ずっとある歌を聴いていて、あまりの深みと尊さに思わず涙が出そうになっています。
18歳のときに初めてジャズに出逢って、わけもわからないまま歌い始めたころ。
たくさんの、憧れてやまない歌手たちの歌声は、
「上手い/下手」という物差しをはるかに超えて、たった一声で空気を変えてしまうほど揺るぎない力を持ち、そのひとの人生が深く刻まれているように思えました。
自分の声が浅はかで薄っぺらく思えて、表現したいことには程遠くて、いつになればすこしでも近づけるのか、まったく見えなくて、悩んで悩んで苦しんでいたとき。
引っ込み思案で、臆病で、いつも自信がなくて、ほかの人の才能や華やかさを羨んでばかりいる自分の性格そのものが、ジャズヴォーカルというものとはかけ離れたものなのかもしれない、と思っていました。
「いまのあなたにはあなたにしか歌えない歌がある。
あなたは色気がないと悩むけれど、
わたしからすれば、10代のなにも知らないあなたの無垢な歌ほど色気のあるものはないのよ。もうそんな歌はいまのわたしには歌いたくても歌えないのよ。
いましか歌えない歌を大切にしなさい。」
と言ってくださったのは、当時教わっていた先生でした。
つい最近、ある場所で14年ぶりに再会した先生は、あいかわらず凛として美しく、憧れの方のままでした。
3年前、アルバイト先のホテルに、偶然Sheila Jordanさんという伝説的なジャズ歌手が泊まりにこられ、そのときに、死ぬまでに一度はいきたいと思っていたニューヨークに行くのは「いまだ」と思い、一週間お休みをいただいて、一番航空券の安い2月に、シーラさんに会いにニューヨークに行きました。
シーラさんにそのときのお話をすると、「Jazz Angel(ジャズの天使)の仕業ね」とおっしゃっていましたが、いままでにであった先輩たち、先生、素晴らしいミュージシャンの方々、友達、みんなとの出逢いは、ほんとうにJazz Angelの贈り物かもしれない、と思います。