建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

天の声と神の声が舞い降りて

2024-06-10 08:39:14 | 建設現場 安全

  十一月  十日(金) 晴れ

オーナー夫妻それにA設計事務所のA所長も来られて、定例打ち合わせ会が始まった。
 ところが、所が、大問題『天の声』を聴く事態が発生してしまった。

「手すりがアルミ手すりだ。丈夫な物にするので、ステンレスで作る話をしていたが……」
とA所長から《突然》の発言だ。

(設計図通りだぜ、施工図承認欄には承諾の社印が押されてあるのに、何でまた―――)
と理性を失い欠けてしまった。

 何故・ナゼそんな大事な事を設計図に書き違えて、今日まで過ごしていたのだ。
設計図を書く以前の打ち合わせ(決まり事)」
なんて話を、私は知る由(よし)もないヨ……だった。

手すりは意匠(デザイン)的に取り付けてあり、緊急事態の避難時のみ、ここを通るがステ
ンレス製品でなければならないという絶対理由は、別にこの際関係ないと思う。

 取り替えろったってもう外部に変更製品を取り付ける作業用の足代はないし、今から
即作っても1ヶ月は軽くかかるし、困ったも
のだ。
こういうクレーム(天の声)が監督屋泣かせなのだ。
施工図も承認図も、かつて打ち合わせして取
り付けた事そのものが、何とかの一声で
コロッと替えざるを得ない事態が発生する。

M店舗でも致命傷寸前の塗替えを言われた様に、今回も対策に悩む問題となった。
A設計事務所のA所長の脳裏にくっついているオーナーと1年以上も昔の話し合い
の線に対して、どこま
でこだわるかがポイントだ。
設計図には当初(工事計画時)には書いてあったらしい。
それが工事契約時、予算オーバー
で色々とムダらしき所を『削る打合わせ』の時に、
アルミに変更したのが事の真相だった。

 私の手元にはA設計事務所から頂いた今の最終設計図と請負金見積書が有る
だけで、ステンレスなんて
文字も《抹消の二重線》さえ見当たらないものだ。

「取り替える事はしないけど何とかならないかね? 
絵に書いたモチを食おうと言う相談だが、幸いにもアルミで作ってあるのだから、着色
は可
能だ。

 ステンカラーで窓枠・カーテンウォールをオーダーしているのだから、この平凡な
手すりにス
テンカラーを塗装して、外観上は同一部材に見立てようと提案した。

―――この塗装が風雨に晒(さら)されて何年持つかの自信はないけれども、人がふん
だんに触る場所の手す
りではなくて、外観上の飾り用の手すりだけに、4~5年はもつ
だろう。
塗装が剥(は)げたら下地のアルミ
部分が見えるだけの事で、その頃には別に手すりに
対してのみ《目が行く事》もなくなってい
るだろう、最悪再塗装も可能だし―――
と勝手な解釈で、設計事務所及びオーナーに納得させるべく説明をした。

もう、一方的にこちらの考え
『これしかない』
という口調で、相手を飲み込んでしまった私
の独演場だったが、この説得力エネルギー
は一体何だったのだ・・・?

会議室で聞いていた人達も、(それしかないネ)という気になって、オーナーに、
「所長の案で大丈夫ですヨ」と口添えがあった。
私はA所長の立場が……と気が気ではなく、とにかく時を動かさねば―――。

固まっている訳には行かず、何とかピンチを切り抜けたものの、改めて手すりを遠く
から眺めていて、
いい事をしたのか、その場凌(しのぎ)の悪い事をしたのか―――
分からなくなって来たのが正直な心だ。

オーナーが帰られる時に手渡そうとしていた「取下げ金請求書」を危うく忘れる所
だった。
頭の中が目まぐるしく動き、口もとどまる所を知らず(我をも忘れ欠けている)と察した
子が、さり気なくオーナーの奥さんに渡していたのを、車のドア越しに見た。

「N子サンキュウ、明日、昼飯オゴってやっからね」
「土曜日だから給食もないし、子供連れてくるわよ、………パパは土休かなア・・・」
「なヌッ?N子はパパと土休をすると思ってたから言ったのに」
「聞いたからね、明日のしゃぶしゃぶを予約するわ―――ルンルン」

十一月 十一日(土) 曇り

(今日迄、軽量工事は空けさせる)
神の声が聞こえていた。
この2週間、丁度大型スーパーの開店直前と重なってしまい、竣工直前でケツに火が
(つ)いて
いる現場へ軽量工事(木の代わりに軽量鉄骨で間仕切りをする→不燃下地の為)
会社の命令によって引き抜かれ
て、Kビルは6階が《手つかず》の状況になっている。

この軽量工が不在の為に、Kビルで助かったのは設備工のH君だ。
 一気に6階迄、軽量天井下地と壁下地組を施工する私の工程表に対し、設備ダクトの
工場製作
が間に合わない。
 軽量工事の前に天井裏に空調用のダクトを吊り込むには、徹夜作業を強いられる所
だった。


それにしても総合工程表からは、かなり急ピッチで工事が進んでいて5階迄は何とか
(しの)いでいた配管工も

『6階では応援部隊を要請しなくては……』
とあせっていた時に、軽量工がプッツンとなったのだから、正直言って助かっただろう。
顔に書いてなくても、足取りを見ていたら分かるものだ。
余裕からか、こちらの腹を読んだ上での質問が来た。

「所長、軽天工さんはいつから(戻って)来ますか?」

あの現場はまだ《ケツに火がついている》という情報をいち早くキャッチしていて、当分、
(水曜日迄)は来ないだろうとH君は読んでいる。

「私達一応6階迄配管工事が終わったので、軽量天井下地が終わりそうな頃、又来ます。
明日か
らチョット空けます(休みます)」
「仕方ないね、ここでボーッとしててもネ……他で稼(かせ)いでおいでよ」
「いえ、連休して―――家族旅行します。今までずっと休んでなかったから・・・」
「いいねえ、私も連れてってよ………冗談、冗談」

 しかしモノは言ってみるものだ。
「大分助かっただろう、この2週間は・・・」
「お蔭さんで……ネ」
「余分なお金(突貫経費)が出て行く筈だったんだろう、その分御馳走しろよ」
「じゃあこれから行きますか?」
となって、本来なら私が出すべきマネーを設備のH君に肩代わりさせてしまった。

ついでにいつものメンバーのK君、F君、N子で近くの『中国料理店C』へ行き、
ファミリ
ー・フルコースをご馳走になった。
(食った、食ったが今は正しい表現)

「ゴメンね―――仕事が延びたので先に食べててネ」
とN子が土休のパパに電話している。
(なんて奴だ、今日に限って・・・)
とパパに恨(うら)まれているだろう、私は。

私、そんなに人の奥様を働かせてはいませんよ。
悪いのは誰だ?やっぱり私?………かナ。

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左官工事を応援しよう

2024-05-27 08:28:02 | 建設現場 安全

 十一月  七日(火) 雨        

 昨夜の雨がまだ降り続いている。通勤途中から、
(また開店休業かなあ)
 と、根性が薄れていく頼り無い出勤だったが、8時半頃に左官工が8名も集合して来た。

「何事だ皆んなで?ヒヤカシか?」
「雨で予定していた所がダメ(作業中止)になったので、Kビルへ来たヨ」
と言う。
と言うのは3人位でコンスタントに毎日仕事をしてくれれば、全体の工程の流れもよくなるの
に、
思い出したかの如くに(気まぐれ的に)現れては手際良く(?)職人を集中し、2~3日仕事をし
てはまた
御無沙汰(他の現場が主要な手持ち工事)のメンバーだからだ。

今日も全く電話一つもなく、予定のない打ち合わせ場所に突如と『殴り込み仕事』だ。
今日は全
員で階段室を徹底的に完成させる事を約束した。
 雨には関係なくて、たまたま今日はKビルに職人の数
が少ないので、この際階段室の左官
工事と吹付タイル下地を一気に終わらせる事にした。

 今までのKビルでの左官工事としては、階段防水モルタル塗りとバルコニーの床防水モル
タル
塗りが主工事で、後は「直押さえ」と「打ち放しの補修」だ。
 コンクリート直押さえという仕事は作業時間から考えると、単価の安い部類に入るだろう。
やはりモルタルを練って鏝(こて)で仕上げるのが左官屋さんの工事としては、仕事らしい仕事
だろうと私は思う。

 ―――余談―――(左官工事について)―――――

   建築工事の中で器用さを一番持っているのは、左官ではないかと私は思う。
       左官工事とはモルタル(セメントに砂と水)を練って壁を塗る、床を塗る位
       しか思えないが、躯体(コンクリート)の補修迄面倒見ているのも左官工だ。

    左官工といえども、鋸(のこ)も持っているし、トンカチも、コンクリート釘も
       水糸も、下げ振り・差しガネ・墨壺までもが必需品だ。

    ここで一枚の壁、柱にモルタルを塗るとしよう。
   コンクリートをチェックすると7㍉中央が膨らんでいたり、上下で5㍉ズレ
      ていたりもする。
       通り(一直線の部分)が『斜めにまっすぐ』の場合もある。

      これらの表面を垂直・水平にするには―――と計算すると頭がハゲる。
     左官の世話役が下げ振りを降ろして「ここは20㍉塗ろう」と決める。
     モルタルの厚さで調整するしか方法はない。

    コンクリート面にジャンカ(す、豆板)があって、そこを斫り取って、補修
     ンクリートを注入する為の型枠を作ってくれるのも左官工だ。

   躯体コンクリートは仕上げラインより幾分控えて作り、後からモルタル
   で詰めて仕上げ面を調整してくれるのも左官工だ。

   タイルを貼り付ける下地調整(コンクリート面からタイル仕上げ寸法を
   引いた(除いた)所迄塗りつける)、直押さえ後の傷穴の補修、大工が 
   型枠材搬出用に開けた 穴の処理………等、実際にどうしてこれが
   左官仕事なのか、左官工に補修させ るのかが、全く分からないまま
   に左官工に頼んでいる。
   
   当然こんなモノは左官工事契約内には含まれていない。
   見積りのやり様がないし、どれだけ手間がかかるものか想像も予想も
       出来ない。

     『常傭』といって一日一人当たりの賃金を決めて、かかった出面分を
      支払う。

      だが常傭仕事は遠慮させてくれと言う。
   他にいくらでも本業の仕事が有るのだ。

    クロスを貼る、あるいは直接ペンキを塗ったり、タイルを貼ったりす
     ると言 っても、その仕上の精度が指摘されると、下地調整の不備の
     せいにされる。
        ペンキの場合は左官のコテの波が横からの光線で見える場合も
     ある。
   モルタルが収縮してクラックが入り、モルタルが浮いた状況になって、
    叩くと ポコンポコンと軽やかな音(実際は聞きたくない音)
がする場合には、
  薬液を注入してくっつける。

   これが全て左官工の責任だと言う人もいるけれど、決めつける訳にも
   いかない。
 
   コンクリートからシャレた(?)出っ張りを作っていても、最終的に大き
  さ
と通りを揃えるのは左官工だ。
      水平器とか下げ振りを使い、時には部分的に斫(はつ)
り取ってでも
  仕上げよう と努力するのだ。
       
    また左官工の一番の腕の見せ所は、階段室のボーダーだろう。
    階段は角度
があり各段は同じ高さを保ち、角にはRが付いている。
    手すりがそこから
立っているし、ステンレスの手すり柱とか階段溝
      などがあると、もう最悪パニック突入だ。

   ボーダーのみならず、左官工事そのものを肉体的に換算すると安い。
      モルタルをネコ車一杯分作ってみると体力消耗の度合いが良くわかる。
   そして
運搬して、ネコ車一杯でどれだけの仕事が出来るかという事
   を考えても、この
肉体労働+器用さを要求されている左官工は、
   大変な作業といえる ものだ。
     

   おまけに、おまけにこの左官工事は造作材とかサッシュを汚す。
      ネコ車で運
搬中に仕上がった所を傷つけるとか、車輪の跡とかモル
   タルが付着(つい)たとか、壁
を塗る時に落ちたモルタルが床材に
   シミをもたらす事は昔の「泥土壁塗り時代」の常識そのままである。
       だからキラワレ者
の一番手にあげられているのも事実だ。

         だから、左官工事を無くそう、減らそうと『乾式工法』を取り入れる
   設計事
 務所も多くなって来た。
         しかしこれは表面しか見ていない人の発想で、現場は左官工に
   よって躯体か
 ら仕上げへの《橋渡し》がなされているのを、忘れない
   で欲しいものだ。

    私だって、豪華住宅の設計または監督を任されたら、汚れる作業
    としての品
物は極力避けると断言出来る。
     私、別に左官工の息子でも親類縁者に左官工がいる訳では決して
    ない。

        「左官に頼むと金がかかるので、お前が直しとけ」
     と先輩所長さんの《いいつけ》を守っていた頃から、左官工に色々
    と助けて
もらっている(今もって)私の完全な『偏見』なのかも知れない。――――――

とにかくKビルは今日の左官工の集中工事で、階段室の吹付工事の予定が、来週には今日
塗っている下地の乾燥次第で可能
というメドがたった。
早速吹き付け工(S塗工店)の水野君に打ち合わせの電話を入れた。

「昨日見た時は何もされていなかったので、まだ段取りしていませんが・・・」
「なにボヤッと見てるの、もう明日で吹付下地補修終わりだよ」最後には、
「来週の終わりには、吹付タイルは完了だからね……いいね」

今日は「雨降り日」の作業としては成果のあった一日でもあった。

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命綱の使命・役割(Ⅱ)

2024-05-13 08:08:12 | 建設現場 安全

命綱の使命・役割    ――― つづき―――

鉄骨工事、これには絶対必要だ。
親綱が無いと柱に直接巻き付けても墜落防止を心掛けるのは、危険性を肌で感じられ
るからだ。
だからと言う訳ではないけれども、弋(とび)さんが墜落したというのは滅多にしか聞かない。

鉄骨の上でボルトを締める時、安全ネットが張ってあっても危険を感じられるの
で、鉄骨
の上では誰もが用心して(気を引き締めて)作業する。

命綱の着装・使用の問題ではないのだ。
《気持ちの問題》が大きいと私は思う。

この鉄骨の上にスレートとか折版(せっぱん=トタン板の様なもの)で屋根を葺(ふ)
業種の職人さんは比較的、墜落事故に遇いやすい条件は揃っている。
でも、屋根の上には命綱を固定し引っ掛けておけるモノ(親綱類)は何も無い。

それでも万一事故が発生すると、
「命綱を着装してなかった、使用していなかった」
を理由のトップに掲げている。

だから今後の対策として
「命綱を着用しよう」
と結論を書く。
これで墜落事故が無くなれば、万々歳だ。
空を飛べない限り『猿も木から落ちる』と言うではないか。
(この場合意味が違ったが、落ちると言う事をいいたいのだ)

命綱に頼るよりも、落ちる穴を落ちない様にフサグ事が先決なのは、皆承知
なのだ。
屋根の上ならここを通りなさいという専用通路を作る。
マンホールの蓋(ふた)は鎖付きとして、必ず蓋を閉めておく。
人が落ちそうな所はネットを張る、
スキマは塞(ふさ)ぐ、手すりは必ず取り付ける―――。

全て結構な事で重要項目だ。
安全勉強会ではイイ答えを出して、合格点をも
らっているのに、現実は危険が・・・。

建築現場を知ってか知らずか、5Kの中の一つ(危険のK)が言われているのが、
気に掛かる所なのだ。

安全、安全と常に言っているのは、裏を返せば危
険がいっぱいに思える様だ。
だが、やる事をきっちりやり、不安全行動を各々
が自覚すれば、事故はかなり
防ぐ事が出来ると、皆も思っている事だ。

とにかく、現場内の安全監理は終わりがない位に、やるべき事が多い。
これを、
『統括安全衛生責任者』
という腕章を巻いた、現場最高責任者は
「全
て毎日、最大もらさずチェックしなさい、事故が起きると全てあなたの責任ですよ」
と含みを持った任命書(現場辞令書)を、所長は頂く。

時には業務上過失致死の容疑で、警察に手錠出頭になる場合(出頭の責任アリアリ)は
『社長代行してる所長なんだよ』
と言う意味の任命書なんぞ、私は欲しくない。

《落ちる》から対策を考えるのか《落とさない様に》対策を考えるのかの、
発点によって、安全に対してのチェックも変化して来るのではないだろうか。

「命綱を着用させていたが本人が使用しなかったので墜落したのだ」
と責任の一端を逃れる様な監理、命綱着用、墜落防止注意の指導、看板の掲
では意味は無く、安全監理だとはとても言えない。
事の本質は、
『危険な所を作らない・放っては置かない事だ』と言ってみた。

いとも簡単な結論だが、墜落事故だけは首から縄をかけて(この場合命綱を
付けてが正解かな)でも、起こしたくない。

何も高い所からの危険だけでなく、たったの1メートルでも、後方へ倒れる
と(プロレスのバックドロップ)になって、
『1メートルで《イチメイ(一命)》取る』
事にもなりかねない。

特に脚立とか梯子を使って、簡単な作業でしかも比較的低い所こそ、思いも
よらない重大災害が待ち受けている。

ここでも、ひとたび事故をおこすと『命綱』が論ぜられるものだ。

実際、脚立の上で命綱をどの様に・・・しろと・・・だ。
『命綱の有効活用』が決めてなのだが、結論は出ない。

有効に使おうと前向きに考えれば、現場では常に命綱を先ず着装し、重くて
も腰に巻いて仕事をする。
(最近は両肩にタスキ掛け(命綱2組)するように指導もしているよね)
イザという時に身を守る事が出来る感覚を持ちたい。

命綱の重さを感じれば、墜落の怖さを予知できると思える筈だ。
重いから、低いから、引っ掛ける所が無いから、あれば仕事にならないから
等の言い分を聞いていたら、結局は
「着装したくない」
という事を前提にして、安全
を語っているとしか、私には思えない。

私自身、命綱を付けて設計図を脇に挟んで現場内を巡察するのは『矛盾』を
感じるし、正直言っ
て嫌いだ。

現場の決まり、会社の決まりなのだから―――という押し着せのも
のだからか、
命綱に対する恩恵を受けていないからかで、考えの別れ道だね。

鉄骨工事の現場なら、擦り切れる位まで使うほどの命綱だから、本来の使用
目的に合った安全教育でいいと私は言いたい。
我身を守ってくれる『綱』だもの、行動に於いて『命綱』に感謝しよう。

―――命綱を『語る道具』にして欲しくない……これが私の結論だ――――

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命綱の使命・役割

2024-04-30 07:58:00 | 建設現場 安全

 『命綱』を本音で・・・

安全について語ると語り尽くせない程、難しい問題があり過ぎる。
『安全第一』と分かっていても出来ない事も有り、無駄に思える様な事や
矛盾している事で
も形式(書類管理)だけの為?にも、安全にしなさいと
いう内容のものも有る。

安全にと設置したもの(手すり等)が仕事をする上で邪魔になる場合もある。
一度事故が起こるとすぐに原因を厳しく追い求められる。
要は起こった後でワイのワイのと言ったって、事故が起きた事はどうしよう
もない事なのだ。

何故手を打てなかったのか
とも言うし、
「本人(被災者)の不注意による
ものだ」
とも言える場合だって、労災扱いには紛(まぎれ)もない。

痛いのは本人もさることながら、現場は支店を通してさらに労基署からも、
厳しい警告をうける。
これはかなり現場としては痛手だ。時間的ロス、施主へ
の信用失墜、とにかく
事故は起こしたくないのは、皆の願いだ。

単純作業で日常の慣れから安心しきった所でも、本人の不注意によるという
事故がおきる場合が多い。

安全パトロール、安全活動を実施して危険なカ所の指摘は色々と言える。
言った本人が他の現場で自分の言動(行動)に責任を持って、指摘されない
様に仕事をしているかは、問題だ。

―――今日は『命綱(安全帯)』について話てみよう――――

高所作業には命綱を着用しましょう(着用させろ!)」
とパトロールでは指摘する。
現場の者全員それは良い事だと分かっている。
だから、協力業者の社長さんは必ず命綱を作業員全員に渡す。
現場も一応予備迄置いてある。
現場で作業中に
使っているか、いないのかでなくて、腰にブラ下げて
あれば万事OKなのだ。

重い命綱を腰に巻いていないと、
「現場では命綱を着用する事の遵守項目違反
として、親方が呼出しを食う事
にもなりかねない。

持っていればそれで安全と言うものでもなかろうに……と私は正直に言う。
『裸の王様』
じゃああるまいし、オカシイ、納得出来なければ自分の意見を言
うしかない。
意味のある命綱の装備に私はしたいのだ。

 「命綱を先ず着装しましょう」
という事で、その為には現場内へ入る時から全員着用しているかをチェックした所
で、墜落防止と何の関係があるのか分からない。
高所からの墜落事故防止の為に必要なのが命綱の役目である。

朝礼時、ラジオ体操を行いながらも命綱を義務付けている事に、疑問を感
じる
現場代理人は私だけだろうか。 
   
安全教育に於いて、
『高所とは?』
と聞くと「2m以上の所」と答える。

 「命綱を腰に巻きつけたものの、これを引っ掛ける所はどこにあるのだ?」
と言う質問が、必ず出る。
重たい命綱を腰に巻いて、屋上のはき掃除をするにも、地上2m以上の所な
ので必要なのだと言う。
建物が高くても、作業者が屋上に立てば,一階や室内を掃いているのと何も
変わらないと私は思う。

座敷ほうき片手にちり取りを持って掃き掃除をするのに、命綱は必要か?だ。
命綱をどこに引っ掛けて掃除をするのかについて問えば、
 「これは決まりだから………」 
との返答だ。
こう答える人は何の自覚もポリシーも無いのかと聞きたいけれど、安全責任者と
しては『不要です』とは発言出来ないのも、無理はない。

場内は『保護帽と安全帯着装の事』と大看板を掲示してあるものの、高所作業
でなくても墜落とは関係ない室内でも重装備での作業で安全なのですか?

外部足代(一般的ビティ足場)上で巾が90㌢~120㌢ある所で、外壁タ
イルを
貼る・塗装工事等の仕事でも
「命綱を使用しなさい」
と指導する。

足代の外面はスジカイが入り、ほこり飛散防止用のシートもあり、更に内側
(建物の仕事をする側)には手すりがあってもだ。

時には手すりがあると作業が出来にくい場合もあり、一旦外して作業を行う時
もある(現場黙認)が弋工は足場
組立図通りに組んでいる。

型枠工、左官工、タイル工等の外部作業者が外したままの手すりを、弋工が
再々取り付けては《また外された》の繰り返しで現場は何時も悩んでいる。
取り付け責任者の弋工の人数に対して、外す人の何と多い事か……。

外したらなぜ復旧しないかというと、
「明日もそこで俺達は仕事をするのだから―――」
と明確な答えだ。

「それなら、手すりの代わりにロープを張って命綱を引っ掛けろ
とムキになると、
 「命綱をしてたら作業半径1mだし、動きにくい。足代と外壁の間隔は30㌢
未満あって、そこにもビティ一段置きに墜落防止棚があり、落っこちそうに
ないし、
 『今までに落ちた事』なんか一度もない!」
 と経験論で正当性(着装不要論)を述べる。

(全く同感だ)
と私が感心していたのでは、
 『安全監理が甘い、何とかさせろ、他の現場では皆やっているのに・・・』
とお叱りをこうむる。さあ困ったネ。

(かわら)屋根の様に先の尖(とが)った建物の場合、親綱(命綱取り付け用の
ロープ)を張
ると、屋根瓦は葺(ふ)けない。
瓦を葺くのに、親綱ロープを張った住宅屋根の現場も見た事も無い。
親綱を固定する柱の代わりの物も無い。
下手すればロープを屋根端に飾ったままで作業している場合もある。

親綱を張ったものの、命綱はどこに掛けるんだ?
ニワトリが先か卵が先かの論争
に似ているね。 
                                                             ~~ 続く  ~~

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建物からも息吹を・・・

2024-04-15 08:12:46 | 建設現場 安全

十一月  一日(水) 曇り  

 月初めは気分的にもスッキリと仕事を行いたいものだ。
今日は東面の足代解体を行う。
昨日の雨でタイル貼り面が少し泥ハネを受けているので、弋も土工も私も皆で雑巾を持って
出て、タイルに着いた汚れと雑巾跡を拭き取った後、足代解体の指令を出した。

場内放送でも、
「足代解体を行います。南、西面の出入口を使って下さい。東、北面は封鎖します」
とかなり連呼した。
朝礼の時も言ったのだけれど、やっぱり見物したがる職人もいる。

人の仕事を眺めるだけの余裕?もないのに、トイレに行ったり、車へ荷物や道具を取りに出
入りする度になんとなく見上げて、なんとなくウナづいているものだ。

 今日は通行人、特に第三者には関係ない所なので、ガードマンも場内の職人達を見ていれば
いいのだから、随分と気楽そうに立入禁止のロープ前を、行ったり来たりして旗を振っている。

時折カラカラカラといって小石かモルタルのガラかが落ちて来る音が聞こえる。
昨日掃除していた分、大きなゴミは落ちて来ないので、弋工も気分良く足代解体を進めている。

足代解体も二日目となると、私もつきっきりで見ている必要もなくなった。
今日で足代解体は丁度半分が片付いた恰好になった。

今月の中頃に本設のエレベーターが動く様になれば、足代解体を全て行える。
荷上げもその
6人乗りエレベーターでクロス、カーペット類を運ぶ事としよう。

仕上げ材料の決定が遅れているものは、早急に結論を出して手配確認だ。
折角決めた物がM店舗の様に《製造中止》では洒落にもならないので、明後日迄には手配を
確認しメーカーへ直接話をしてみよう。

とにかく今月の主要工事としてはタイル貼り、ピアット解体、ガラス、軽量天井下地組、天
井ボード貼り、左官工事それに足代の最終解体だ。
以上は全て確実に完了させるつもりだ。

11月末で出来高目標は95%だ。
10月度より1ヵ月当たりの仕事量はダウンだが、足代解体が完了しない事にはかかれない
仕事も全工事の一割はある。

室内工事は100%完了のつもりで頑張るけれど、床工事は十二月中旬の竣工検査直前を完了
としよう。
簡単に工程表と安全大会の資料を作ってみた。

昼休み時間に月例の安全大会を開催した。
朝礼の時に集まりが悪くなっている現在、職人一同が顔を揃(そろえ)るのも、こういう催物の時
位だろう。
昼食の休憩中には各自の車に入ったり、喫茶店へ行ったり、各階で日なたぼっこをしてウトウト
とするる人もいて、仕上げ工事の人々の休憩時間は《孤独を好むスタイル》が多く感じられるネ。

私も屋上へ行って一人『フルート』を吹いている事もあるこの頃だし―――躯体時期のあの
汗臭さの中での喧騒(けんそう)が、懐かしいものと感じられてきた。

安全大会の中で、
「今までの無事故無災害記録を継続しよう」
と皆で確認しシュプレヒコールを上げた。

足代上の仕事がなくなるので、重大災害の発生率は下がるのだし、ここまで来て横着作業
火災事故を起こす事は絶対にしてはならない様に、皆で確認を行った。

 十一月  四日(土) 晴れ  

「今日は天気がいいのでお爺ちゃんとお婆ちゃんを連れて、現場を見させてもらいに伺いたい
のですが、如何でしょうか?」
とオーナーから連絡が入った。

オーナーのご両親はかなりの御高齢だが、お元気だ。
現場の中をゆっくりと見て頂いた。
昔建てられた時のマンションと比べられては、
「良くなったものだ、良くなったものだ」
と感心される事しきり。そして外の景色を眺めては、
「いい所だ、いい所だ」
と自画自賛されていた。

「昔わしらが子供の時分、ここら辺はなーんにもなくて、イモ畑のなかを駆けずり廻っていたも
のよ。もう80年も前の話だがね。変わったなあ―――。ここに鉄筋コンクリートのKビルを建
てるなんて、考えられもしなかったもんだ・・・」
Kビルの最上階から窓越しに、景色を眺めてそう言われた。

テナント入居者さんが仕事に間が出来たり、お客さんと話が途切れたら、眺めの良いビルから
道路を走る車を見て
いても結構楽しめる。
(ここの交差点は事故も多いので、目撃者にもなれるよ。)

足代解体して建物が見えている部分では、じっくり眺められて、
「いい色だね、綺麗にタイルは貼ってあるし気に入った。これで入居者が決まればめでたし、
めでたしだネ」と言われた。

「1階と2階はどうしてまだ仕上げてないのかネ?」
これはオーナーがその説明をして下さった。そして、
「ええか、シロウトが口を出してはイカン、余分に銭を出してでもいいもの創ってもらえよ、
ええナ○○!」
と、お爺ちゃんがオーナーに言われているのを聞いて、
(全くだ、その通り!)
 私はそう叫びたい心境だった。

 お歳の分だけ苦労も多かっただろうし、言われる事もマトを射ていられて私の緊張もほぐれ
始めている。

何だか好きになれて話が合いそうな雰囲気になって来た。

「建物の『定礎』の文字をお父さんの直筆で
とお願いした。

「その通りに石に文字を彫り込みますから、この位の用紙に書いて下さい。後日頂きに参りま
すから」
と私も久々にスマイル気分だった。

 黒御影(くろみかげ)石に文字を彫り込むのだが、一応の既製品はあるものの、やはり建物に
関係のある方の直筆が記念になって良いものだ。

「もう人に見せられる字が書けないし、残しておくものは建物だけで結構ですから、看板はそ
ちらで作って下さい」
と申し出られた。大変残念だったけれど、
「それでは・・・」
と承った。
確か90歳は軽く越えているとお聞きしていたが『元気だなあ』と感じ、恐れ入ったものでした。

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建物外観 披露開始

2024-04-02 08:44:36 | 建設現場 安全

  十月 三十日(月) 晴れ 

今日から足代(あしば)解体第一歩に入った。
 弋(とび)工、ガラス工、サッシュ工、クリーニング工が揃(そろ)って初めてカーテンウォール部分
の足代
が解体出来るという厄介(やっかい)なものだ。

建物の南面は全面ガラスだけれど、部分的に足代倒壊防止用にガラスを入れてない。
室内から足代を引っ
張っている壁繋(かべつなぎ)パイプを除去してサッシュをその部分に嵌(は)めた。
 ガラスを続けて入れて、シ
ールコーキングを打ってクリーニングしながら、足代を最上段からまず
一段分解体して下りて行く。

今までハヌケになっていて窓からの雨の吹き込みの心配も、これでもうなくなった。
もう二度と足代を組む事の出来ないガラス面が6階から現れて来る。
このガラスは熱線反射
だから、光線によっては鏡になるという今流行のものだ。

ほんの僅かな面積の足代解体ではあるが、とにかく屋上の方から姿を表し始めたのだ、Kビ
ルが……今、やっと・・・。
昼からはオーナー夫妻も設計事務所の中島さんも来られた。
遠くから、近くから眺めては、
「出来ましたねエ・・・」
と感無量だ。

 メッシュシートで覆(おおわ)れていた顔が現れて、喫茶店のママさんも、マスターとも話題豊富
なって来た。
単なるビルだと思い込んでいた人ほど「あっと驚いたよ」と言ってくれた。

「所長、いつも見てたけど、出来ましたねエ……」
Kビルでは契約が出来なかったT金属の竹内社長からの電話には、声が詰まってしまった。
(皆、見ていてくれてるんだ、気にしていてくれたのだ・・・)
 この建物の評価もこれから出て来るから、気を抜かないで頑張らねばならないと思う。

高圧線のすぐ横で曲面壁に足代を組立てて「感電事故」倒壊防止」に夢に迄うなされていた
のも、これで無事終了だ。
この気持ちの良さは何だろう。
今日はほんの一部分の解体だったけれど、明日も引き続いて東面から北面コーナー迄解体す
る。
明日からは弋工とタイル工で解体は出来る。

タイル工は足代解体時には大忙しだ。
足代と外壁面を繋いでいる『足代繋ぎ金物』を除去したら、その部分にすぐタイルを貼って目地
を詰めてクリーニング迄してしまわねばならない。
その間弋工は解体を止めている。

壁繋ぎの処理の為にタイル工は解体時には必ず待機せねばならない。
足代が倒れない様に引っ張っている金物跡を処理して、一段ずつ下りて来るので足元は大丈夫
だが、この壁繋ぎをはずすと足代が一瞬動く(足場が倒れる)感じがする。

弋工に「早くしろ」とせかされながら、タイル貼りとその処理に追われるタイル工は、モタモタしてる
と弋に足代解体を先行されてしまうから、必死だ。

弋工とタイル工の連繋、コミュニケーションが悪いと、どうしてもタイル工の負けになってしまう。
弋工は威勢がいい(大声で合図)し、タイル工は(黙って壁に向かって)の仕事であり、おとなしい。
職種によって、こうも性格が違うものかと呆れてしまう。

足代解体中その周辺にはトラロープを貼って、立入り禁止の看板を建てるけれど、室内から
ヒョッコリ出て来るヤツがいる。
足代上から物こそ投げないにしても、不安定な所で作業している弋工から見れば、下で
チョロチョロ人間が動いていたら、気になって仕方がない。

「馬鹿やろう!下に来るな!!」
弋の大声が響く。

私はガードマンを設置して、通行人には車と上からの落下物に対して注意を促(うなが)しているが、
わざわざ近づいて内を見たがる人もいる。
人間は《探究心旺盛な動物》なのだろう。
(悪く言えば野次馬根性丸出しなのだ)

立入禁止の看板があるだけで、入りたくなる衝動を覚える人もいる。
とにかく、足代解体中は石ころ一ケ落としても、当たる事があるのだから、お引取りを願う
のだが、次から次へと覗き(見学)に来る人が絶えなかった。

「そんなに珍しいモノですか?」と私。
「今まで隠れていたものが、見えると気になりますヨ」
(なーる程、超ミニスカートの女性が現れれば、男性は顔迄《脚迄かな》しっかり見るのと同
じで、気になる部分が間近に見えると更に全てを見たくなる好奇心か、欲望なのか―――)

 Kビルの足代組立で一番悩んだ部分が解体された。
だが一気に解体作業が出来ない(他の職
種とのからみ等があり)全ての足代が解体完了に
なるのは早くて11月20日頃だろう。

早速防水工に足代解体状況を連絡し、
「明後日から三階屋根の工事だよ」
と打ち合わせをした。

足代がなくなり、事務所からの展望が良くなった。
逆に国道からも室内の様子が丸見えだ。
ブラインドを取り付けなければ、事務所でコーヒーを飲んでいるのも丸見えだ。
《オフィスで仕事をしている》という気分を味わう事にしよう。
この場所は贅沢な現場事務所になってしまった。

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外壁クリーニング

2024-03-18 08:18:51 | 建設現場 安全

十月二十八日(土) 晴れ  

外壁のタイルクリーニングを行っている。
この洗い工事が終わるといよいよ足代(あしば)の解体だ。

タイル、ガラス面に遠慮なく水道ホースから水をかけてピカピカに洗っている。
下の階で窓でも開いていたら大変だ。
クリーニングをしながらもう外壁仕事で忘れ物がないかの最終チェックを足代上で巡回する。
ベンドキャップ(換気孔のガラリ)や換気扇の周辺のシーリングは終わっているか、完全かを
一つ一つマークしていく。

 仮に養生のガムテープ等が残ったまま壁に付いていたりしたら、再び足代を組立てて、取り
除きに行く事になるので、最終チェックは入念に行った。

タイルも専用のハンマーで抜き打ちに叩いてみる。
しっかりくっついていないと、剥離(はくり)落下する事もある。
目地が十分詰まってないと、漏水の原因にもなる。
一応タイル貼り工事完了の時、チェックを
しているが、クリーニングを行って総てがキレイに
なった時は、感じが全く違う。


これで世間の目に触れるのだ、私達の《創ったもの》を見せるんだ《生き甲斐》も見せるんだ
というこの気持ちを若者に伝えたいなあ―――この喜びを。

体にシビレる位にジンジン来るこの心臓へのビートは何なんだ。
まさに、幕が切って降ろされたと言うべくこの快感を味あえば、もうこの仕事はやめられない。

タイルを専門に洗う職業があるなんて、全く知らなかった時代が懐(なつか)しい。
タイル工が外壁を貼り上げていっても、一向に目地が詰まっていかない。
(おかしいなあ、目地だけどうやってモルタルを入れるのか、詰める方法は何かあるのだろう
か?タイルは汚れないのかなア・・・)

今はそういうものだと思う事でも、学校を出た時には全くの素人だったのだから、見る物全
てに興味津々(しんしん)だった。
今もって、この「首を突っ込みたがり屋」「目立ちたがり屋」は直っていない。
『昔のままだネ』と旧知の友から、先日も笑って言われてしまった。

 それはさておき、このタイルの目地の詰め方は、目地用モルタルと言って着色材料と共にセ
メントモルタルを作り、壁面一面にベッタリ塗り付ける。

まるでタイルの《顔面パック》だ。
そして目地が大きい時は目地ゴテでスジを付けて目地を表すけれど、5㍉以下の目地の場合は
パック
の拭き取りを兼ねて、押し込むだけだ。

折角のタイルの色もこのパックの御陰で台無しだ。
タイル面を拭き取りして行けば、自然に目地が埋まって行く理屈による作業であるものの、
タイル表面まできれいに拭き取りが出来ず、乾いた頃にはパック後が現れる。

だから、どうしても最終的にはプロのクリーニング工がタイル面を洗う(仕上げる)事になる。
何だか無駄な事をしていると当初は思っていたが、いまだにこれは進歩していない。

このタイルクリーニングと同時にガラスもクリーニングを行って仕上がりだ。
ガラス工事には『クリーニング費』が工事予算見積り書の項目の中に必ずある。
タイル工事にも有る。
業者からゼネコンへ提出の時にキッチリ明記してある。
これは不思議な見積り(内訳項目)だと私はいつも思うし、指摘する。

「自分の持分の仕事を(出来る、出来ないかどうかは別にして)自分で目地モルタルパック
汚して、何でクリー
ニング代を求めるのか」と言う疑問だ。

 請負仕事なのだから仕上がっていくらの世界だと思うけれども、クリーニング代も工事費に
含んでいるとは、景
気のいい時代に誰かが決めたのだろうね。
あくまで、タイル貼り工事に含む単価で勝負して頂きたいものだ。
(汚した物は汚した人が片付ける、これ常識)
これが国の会計監査に引っかからないのは、私には納得しかねる問題だ。

それにガラスのクリーニング代もタイルと同じく見積り計上してある事だ。
ガラス屋さんの取り付けたガラスは汚れてはいない。
『ガラスに注意』という紙の札をべタベタ貼って透明ガラスへの接触防止をするくらいキレイで、
工場から出たままをカットして嵌(はめ)ているものが、何でクリーニング代を計上するのか、自分達
でベタベタ貼った注意用《はり紙》のノリの後をクリーニングなのだろうか。

「竣工時のガラスのクリーニングはガラス屋さんの責任ではない」
と思えるのだが、誰も追究しない。
ゼネコンがクリーニング職人の手配を心配しなくても、
『ガラス工がいつも何とかする(手配をしている)ので黙っていればイイ』
という考えなのだろうか。

見積りを業務としてるプロの方は『慣例に従っているだけだ』と答えるのだろうか。
私の考えどこか変ですか?教えていただければ幸いです。

ともあれ、クリーニング工事は東面の外壁と窓ガラスも一通り完了した。
明日の日曜日に雨でも降ると、足代からの跳ね返り水で汚れるけれど、天気予報は晴れだ。
足代の解体準備は整った。

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防水押えコン打設の思い出

2024-03-05 08:02:55 | 建設現場 安全

十月 十七日(火) 晴れ

屋上アスファルト防水層の上に保護コンクリートを打設した。
水張り検査迄して完璧な防水層の上にコンクリートを打設するのは、アスファルトは熱に弱
いし、屋上を歩くにも防水層のままだとすぐに傷が付いて、補修どころの話ではなくなって
しまう。
この保護コンクリートの打設仕事は昔から業者泣かせの作業である。

と言うのは保護コンクリートとは、伸縮によるための目地を設けて、鉄筋の変わりにはメッ
シュ筋を入れてのコンクリートとなるからだ。

保護コンクリートには目地が入っていないと、コンクリート表面がクラック(ヒビ割れ)だら
けになってしまう事がある。
原因は温度によってコンクリートが考えられない位に伸縮するからだ。

 アスファルトの上に8㌢程度の厚さでコンクリートを打設しても、アスファルトとコンク
リートの境目は縁が切れている(完全にくっついていない状態)の上、太陽熱による伸縮を
コンクリートはもろにうける。

 線路のレールの継ぎ目と同じ考えで、コンクリートでも20㍉前後の切れ目(目地)を、3m
角(約9㎡)以内で仕切れる位に取り付けるのが、普通だ。

この目地で昔、事件があった事を思い出した。

―――昔、昔のお話、(1)―――――
        目地に既製品がなくて、ヌキ板をコンクリートに打ち込んで、板を取り除
       いた部分に、杓(しゃく)で再びアスファルトを流し込んでいた時代。
        真夏にはコンクリートが延びてこの目地アスファルトを押し出すのだ。
        逆に真冬は縮んで目地が開いてしまう。
       押し出されたアスファルトは戻っては来ない。その年の冬の間では隙間も
      大き くなってしまっている。


       そして春から夏までには目地には雑草が生えて来る。
       防水工事に手を抜いた、抜かないの論争のあと、
    「たった一年間でコンクリートに草が生えるものか、支店長を呼べ」と来た。

  結果として言い訳を言っても始まらないので、再びアスファルトをオーナー
  の指揮(目の前)で納得行くまでたっぷりと注入をした。
  それでも2年後は想像通りとなってしまった。

       今は伸縮目地も研究されて、屋上も見栄えが良くなった。
      この既製品の伸縮目地が世間に出始めた頃、事件があった。

   ―――昔、昔のお話、(2)―――――

        伸縮目地の名称(商標)の後ろにSが付いていた。
  《○○○○S》とだけ設計図に書いてあって、私はソフトのSと考え、監理者は
         スーパーのSだと思い違いをしてしまった。
       (設計事務所はストロングのSだなんて言ったりしてね・・・)

       官庁発注の大型施設であり、延メートルで800mは越えていたと思う。
      単価が1000円違っても80万円の差が出て来る。
        実に各自が自分の都合のいい判断をしてしまい、現場はストップしてしまった。

  材料は私の手配でソフトがもう入荷済である。
    「取り替えろ
    と監理者は迫る。
    「どこにスーパーと書いてあるの?」
     私も若さで突っぱねる。
    「ソフト承認した覚えはない
    「願い出る迄もないでしょ、設計図通りの《○○○○》が入っている、梱包
      のダンボールにも設計図通り記入してある実物ですヨ」

  この件で一週間は決着がつかなかった。
  官庁の建物であるし、竣工検査はいいとしても、来期には会計院監査がある
      と いうので、ハッキリさせておくという事になった。
      これに引っかかると説明が付かないので、ソフトかスーパーかあるいはスト
      ロングか結論を出す迄『待ってろ!』の一声だった。

      たかが押さえコンクリートの伸縮目地で一週間も待っていられるものか。
     それでも監理者(お役所)としては「待て!」と言うものだから、ついつい
    「工期も延ばして頂きたい!」
      とイヤミを言って「プッツン」と切れてしまった。

  本庁としては、アスファルト注入に替わるモノとして、新規に取り入れた物
    件で別に(S)にはこだわってはいなかった。
   
      「最低限度の単価見積りしか値入れしていなかった」
       と後日、違う方面から知らせて頂いた。
        当然だヨ全く―――。

         しかし、ここでの一週間の経験で必ず『ウラ付けを事前に取る事』の重要性
        を思い知らされたものだった。

   請負業者。
         『請けたら負けた者』とは読んで字の如しだヨ。ホント。
        「待て」と言われれば待つしかないのだ。
          当時は何かとあればすぐに、
         「配属係員(私)を変えろ!」
          と騒ぎ出す『監理監督官』も多数いらっしゃった。

         25歳で一級建築士を取得してた私には、特に風当たりは強かったものだ。
         役所の仕事には今でも、会社は弱い立場の様だ。(オカミには逆らわない)
        その当時に言い返したので私の首もかなり危ない所だった事だろうが、未だに
        くっついている。

        押さえコンクリートを打設しつつ、防水層や目地が徐々にコンクリートで隠れ
       て行くのを、足代の最上部から見下ろしながら、
      (この仕事をするといつも必ず想い出すなあ―――)
       と一人、昔を偲(しの)んでいた。
      いまだに首は繋(つな)がっているし、年も食ったんだと・・・。


         十月二十六日(木) 晴れ

 現場事務所の引っ越しだ。
  午前中に一気にKビル内の3階へ移る事にしている。
  N子もGパン姿でやって来て充分その気になっている。

  ここまでやってくれる女性事務補助員は今までいなかった。
 本人も私の影響(?)でかなり現場の仕事を理解してきたと思える様になった。

この機転の良さから早く嫁いだ(成人式には長男がいた)理由も分かる気がするし、可愛いい
ママさんだけに、現場が明るい雰囲気になっているのも確かだ。

本設のエレベーターがまだ完成していないのは計算外だった。
重たい荷物は土工さんに運んでもらった。
現場事務所の2階から降りて、Kビルの3階へ上るのは、階段の往復だけで疲れてしまう。

どうせ明日、明後日で解体のハウスなら2階の窓を外し取って、そこから3階へ手渡しだ。
こうすると階段の昇り降りが随分少なくて済んだ。
 不思議なもので、皆が階段を集中して使っている時に限って、左官工が階段を補修していて、
通行し難いものだ。

昼迄に引っ越しは完了した。
ロッカー内へはまた以前と同じ位置に書類を並べて置いた。
机の中も同じ状態だ。(場所が変わっても探す手間が省ける球)。
カタログ類が処分されて、必要なものだけが、段ボールのままラックの上に載っている。
願わくば、もうそのまま次の現場へ移動したいものだ。

 今までは無造作に壁に画鋲で打ち付けていた掲示ポスター類がここでは出来ない。
壁はもうクロスを貼るだけになっている。
床は我々の足元だけカーペットを残して貼ってあるのは、汚したらまずいので、ここから引き
揚げ後に事務所部分を貼る様にしている為だ。

電話線も勝手に移動して、足場を経由して配線し、一応は使える様にしておいた。
明日、NTTがきちっと配線を直すけれど、取り合えず電話も使える状態だし、3階のトイレ
使用もOKだ。
仮事務所として使う部屋の照明も明日には完成し、コンセントもOKだ。

湯沸かし器・クーラーの撤去・移設も行ったし、給排水、電気と順次とり除いて現場事務所は
ただの箱(箱番とはうまい表現だ)に戻ってしまった。

それでも、棚とか時計とかが、まだ壁に残っていた。
4月にプレファブ事務所を建てて床に廃油を塗って、机を入れたのが、つい先日に思える。
廃油の真っ黒い所とよく歩いて剥(はげ)かかっている所のコントラストに時の流れが偲(しの)
ばれる。

「足元が滑るよ、書類を落とすと廃油が着いて(吸い込んで)すぐに真っ黒になるヨ」
とワイワイ言っていた春の頃が、懐かしく思える。
切れた電線をまとめたり、ポスターを外したりして、解体を明日の朝から始めても全く支障の
ない様になったのを確認して、午後から『所長会議』に出席した。

今までパトロールの事は書いていたが、所長会議の事は一度も書いてないと気が付いたので
今月は書いてみよう。

毎月最終の木曜午後は『所長会議を行う』と取り決めてある。
以前は支店の都合で「今月は○日に行います」と連絡が来ると、出席したくない場合にはそ
の日を定例打ち合わせに合わせる人もいたと聞く。
なんと姑息(こそく)な考えで現場を預かって、何を監理していたのかと私には理解しかねる。

これをなくす為、支店が当月の最終週の木曜日と指定したのは正解だ。

私はこの会議だけは必ず出席する様にしている。
今日も引っ越し完了後には出向くし、コンクリート打ちが有っても昼からなので出向いている。
竣工検査も官庁検査でない限り日をズラしているつもりだ。
現場の意見を言う絶好のチャンスではないか。
陰で支店の事をブツブツ言うより
「正面切って言え」
ってものだ。

支店からの通達も沢山ある中で、また新しい書類が出来て、
「来月からこれを提出する事になったので・・・」なんてのが一番頭に来る議題だ。

土建屋の会社であっても「店内が現場より強い権力執行を持つ」かの如くに物事を取決めて
いて、現場所長に通達すれば、事務職対技術屋の軋轢(あつれき)が―――。

その時はもう決定後であって、我々は黙って持ち帰るだけの事だ。
こんな事なら出席拒否してそんな書類見たことない!と言う方が賢いやりかたかも知れない。
だから『所長会議』と言えども、その日をあえて打ち合わせ日に重ねていた人の方が、ポリ
シーを持っている分、立派だったのかも知れないと思う時も……ある。

会議の後、I建築部長が、
「君の所のF君、十二月になったら支店へ帰してくれ、次の現場が・・・」と言って来た。
「工期は1月10日ですよ、12月の終わり頃、せめて竣工検査終了後にして下さいヨ」
と答えていたけれど、早く創って後で楽をしようと努力していたのは、何だったのか、次の
現場へ早く送り出す為ではない筈だ……。

年末年始は海外にでも行こうと夢ふくらませ、日曜出勤も時々して頑張っているのに、今日
からは土休もきっちり休んで、工期一杯迄使ってみたくなる様な気持ちを持ってしまった。

工事配属員3人の予定を2人でやり通しているのに、さらに一人抜くなんて発想は・・・。
私がイヤな命令を受けて、やる気を無くしてしまうものだと言う事に気が付かない事はある
まいが、これもさらに上司からの指示だろうと思うと、怒る気力も失せてしまった。

M店舗で腹の内を一度見たではないか―――。もうマイペースで行く。
「ノー」と言いたい時は「ノー」と言う。
私に欠けているモノは「ノー!」と言える言葉だと、この頃気が付いた。
とにかく年末迄はKビルからF君を「さよなら」はさせないからネ。

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水張試験の実態

2024-02-19 08:30:48 | 建設現場 安全

十月  十四日(水) 曇り   

 屋上のアスファルト防水が終わって屋根の上に水を張って検査を行っている。
通称『水張検査』というものだが、案外無視(面倒)している現場が多いものだ。

既に48時間以上も経過しているけれど、天井や壁に水が滲(しみ)出ている所は無しの合格だ。
 屋上に水を張る(10㌢位水を溜める)のは簡単だが、この水をどうやって処理しようかと、検討
の必要がある。

ドレーン(樋金物)から縦樋を通して水を落とすとしても、桝(ます)に繋がっていないと大変だ。

この桝に入った水も最終桝からマンホール本管へ行くか道路U字溝へ連結されているかを
確認しておかないと、縦樋が外れた状態であり、地表面は水浸しどころでなく、お隣の敷地
へも流れ込んでしまう場合も多々もある。


一本の縦樋から屋上の水を排水流出させると、集中豪雨の勢いで地盤面に溢れ出るのは、
想像が
付くと思う。

Kビルは現場事務所のすぐ横迄、7月の間に設備工が埋設配管工事を終わらせていた。
そこへ接続すると道路のマンホール内へ流れて行くので心配はない。

また、U字溝へ接続されている配管類は雨水専用にではあるが、部分的に工事完了で、とに
かく
桝迄配管を繋(つな)ぐと、場内を水浸(みずびたし)にする事もなく完全排水可能の状況だ。

屋根面全体に雪が10㎝積もった様な「浅いプール状態」を作って大量の水道の水を下水管
に流す
のも、勿体ない話ではあるが、せっかく屋上に水をためても有効活用は出来ず、捨てる
運命の
水道水だけどテストならば仕方あるまい。
この放出先が整っている(設備先行工事済)場合は数える位しか経験がない。

後日、配管工事に行くには、隣家との間隔が狭くて小型掘削機・人力で掘るには困難な場合
は1階の躯体工事の前までに仕上げた事もあるにはある。
Kビルの場合は足代を解体してから外構工事の配管に着手しても、広さも工期的にも余裕は
あった。
 しかし、設備工もその工事が竣工直前の慌(あわ)ただしい時期だと見通して、少しでも時間の
余裕のある時に
出来る限り配管の埋設を行おうと決めていたものだった。
これが今回全て活用された形となった。

 夏が来る前の躯体工事中に、スリーブ(配管の通る穴)を取り付ける合間をぬって、場内を
掘り起こしていた時、職人達から、
「後でやれば同じじゃあないか―――今こんな事したって邪魔(迷惑)だ……」
とイヤミを言われていたけれど、配管埋設後に埋戻しをして地盤面が整備され、駐車場の
スペースが広がってからは、
「エライ、偉い、あんたがエライ」
となっていた。
これで道路駐車している躯体工のマイクロバスも場内に取り込めるし、何よりも警察の
『駐車禁止取締り』の心配をする事がなくなって大助かりだ。

設備屋さんが躯体職人と色々と打ち解けた話も出て来て、コミュニケーションが随分良くなった
と思え始めたのは、この時期、この事件あたりからだと思う。

 そのお蔭を持って、屋上の水は栓を抜いただけで流出させる事に、一切の手をわずらわせる
事なく終了出来るのだ。
屋上の水を張る時にドレーン(樋受け金物からたて樋に落ちる直径10㌢)の部分で水を堰(せき)
止める方法(栓は何を使って代用するか)が検討される。


流水止め用の栓(せん)として風船を詰める、ボールを押し込む、雑巾と土納袋で押さえる――等
今まで色々とやって来た。
WCの防水なら水量・水圧が少ないので風船でも流水防止対策は可能だった。
膨らませた風船をパイプの中に押し込むけれど、パイプの中にアスファルトが流れ出ている
(パイプとアスファルトの境目は特に入念にアスファルトをくっつけている)ので、管の中は
凸凹だ。

風船を押し込む、風船が割れる。
パイプの中を掃除して風船を入れると、滑り止めがなくな
って水圧で風船が抜け落ちる。
こんな試行錯誤を繰り返しているのも、現場の実情だ。

 明後日の定例打ち合わせには、A設計事務所所長もオーナー夫妻も来現の予定だから、屋上
防水検査雨水は漏って来ません)の確認をして頂いてから水を抜く事に決めた。

「ここまでチェックをして工事を進めているのだから、水は絶対に漏らない、防水工事も完全
にチェックしている」
という現場の姿勢のアピールだ。

大事な所は確実に、そして皆の記憶に残っている方法で検査する』という方法を行えば、
信用度もアップ、イメージアップにも繋がると常々私は思っている。

『土建業、見えぬ所で手を抜いて、バレてもとぼける強心臓
には、決してなりたくない。

  十月  六日(金) 曇り

昼からは《定例打ち合わせ》だ。
オーナーのお土産のケーキを、皆で頂きながらなごやかな雰囲気の打ち合わせ会となった。

これからまだ決めなければならない様なものは、内装仕上げ材の壁のクロス、床カーペット
の色、玄関サイン案内板、アプローチのタイルの色、花壇の植木の配置位で、
オーナーの好みに任せます」
見本を並べての品評会だ。

「今日決めなくても結構ですから、こういうモノだというフィーリングを掴(つか)んでいて下さい。
色は基準色ならいつでもそろえますから」
と伝えておいた。

 オーナーさんも最近は特に建築現場に目が行くそうで、外から内部を勝手に判断して、楽し
まれて
「そこの現場はレッカーがね・・・」
「あそこのホテルのロビーは感じのいいクロスなので見て来て下さい」
「あのビルの玄関タイル貼りは好きだから―――」
「花壇には……」云々。

 打ち合わせも終わって場内見学として、屋上へ『ピアット』に載って上ってもらった。
建設現場用の人の乗れるエレベーターではあるが、簡単な手すりが付いているだけで、外部
景色と言わず動く機械そのものまで見れて、初心者としては心臓が高鳴った事だと思う。

                  
屋上迄は目をつぶってもらった。
そして屋上では一面の水張りに驚きの声だ。  

「雨が降ってこんなに溜まったの?」      
冗談にしては最高!!」  

「水を張ってもう60時間以上経っているので、漏(も)れていると下の階に滲(にじ)み出て
来るから、それをチェックしてるのですヨ」 

「これが『水張り検査』ですか・・・」 
「水を張ってる状況を見てもらいたくてね、今から水を抜きます」

「前回の工事で『こんな事』はしなかったよ」
(ヤッパリねと思いつつ……)
「多分、余程自信が有ったのでしょう」
「ここまでやって下されば、安心です」
「どう致しまして、当然の仕事です」

アスファルト防水は完全だ』
と思い込む所長も多いが、とんでもない事だ。
アスファルト防水そのものには欠陥はない。
だが、『ヤクモノ』と称する配管、立ち上り管や便器等の周辺から水は漏れる。

―――昔、E中学校新築工事の時―――
        12箇所あったWCのアスファルト防水
  「水張り検査をしなくて大丈夫だ」
  という職人が来た時、私も意地になって水張りを試みたら、このベテラン
  の職人さんでさえ、漏らしてしまったのだ。
   便器が並んでいるのが、その下の階から見上げると分かる。
       便器の周辺で漏れている。
   雨だれの如くの部屋もあった。
       なんと12箇所のWCの内、9箇所もなんらかの水漏れを発見した。
      残りの3箇所は1階のWCだったのでチェックのやり様がなかっただけだ。
     (油断すると、とんでもない事になってしまう)と体験したものだ。
       でもいまだに、防水工事店と大看板拡げて仕事をしているけれど、私の所
   へ は『挨拶』にも来ない様になった・・・。

 オーナーの前回のマンション工事でも水張り試験を見なかったと仰っていた様に、随分と手
間のかかるのが『水張り検査』だからつい「パス」してしまったのだろう。
やる事をキチットやれば、さほど面倒な事はない。それなのに、
「防水は防水工事会社の責任施工(10年保証)だから、万一漏れたらヤツらを呼びつけて叱る
無償修理させる)だけよ」
と変に意識している現場カントクさんも多い。
だが、この完全である工法の防水も、職人の腕によっては、
『漏れる』
という事を肝に命じておく事だ。

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忙中閑あり・・

2024-02-05 08:36:03 | 建設現場 安全

九月二十一日(木) 晴れ  

今日から4階のサッシュ取り付けだ。
6階迄一気に取り付けられる状況になっている。

3階迄の造作工事も終わりに近い。
何となくヒマそうに感じられていたこの頃であったが、
M店舗からの解放感(一週間)で、こういうのをボケ症状とでも言うのでしょう。

 ゴルフでもしてスカーッと……という味を私は知らない分、性格が暗いのだろうか。
スナックへ行ってカラオケで気分転換もいいだろうなア……と遊ぶ事ばっかり考えている。

きっと私はネクラ《根っから暗い性格》なのだ―――本当は・・・)
と悩んでいると、N子が訊(きい)て来た。

「所長、お体どこかお悪いのですか?」
「うん、実はね―――」
と言っても全く信用してくれない。
所長は絶対ネアカ、九十九%以上ネアカと言う。

今、本人はネクラだと……相当落ち込んでいる時なのにね。
スランプなんだよ、何かに落ち込んでいるのだ………。
美術館のインパクトもかなりボディに効いてはいる。
M店舗の精算業務も頭痛の一端を担っている。

 景気付けに昼食はF君、N子の三人で『しゃぶしゃぶのK』へ行った。
 昼間からビールを飲んでいる隣の席を横目に見ながら、目一杯食った。
飲めない分バカに食った。

美味(うま)いモノを食わねば、上手(うま)い仕事は出来ねえ!』
と自分勝手にあみだした哲学を広める為にも、私は忠実に実行に移している。

どこかで《ゼニの成る木》を捜さねばならないけれど、一回《飲み屋》へ行ったと思えば安
いものだ。
麻雀もここ最近していないので、小遣いはピンチというより、負けた時の出費代から換算すると、
食事代くらい何とかなる。(様な気がするだけ……かナ) 

 目一杯食ったからか、昼から益々ボーッと頭がお休みだ。
もうすぐ今月度の『工事報告書』を作らねばという時期になっている。

今月は何やってたんだ・・・?)
とボーッと現場を眺めていると、M店舗の狂い咲き騒動が浮んで来た。
動き廻っている方が私の性分(なに分ネズミ歳だし)に合っているんだろうネ。

「所長が戻って来て現場がまた明るくなったね」
とH設備の牧田さんが言ってくれた。

 職人達に対して常に頭を低く低くして対処している牧田さんは、私が後ろにいるだけで、
気が楽になったのだろう。
「今度食事にでも行きましょうヨ」
とこの満腹の時に限って、誘ってくれた。

「そんな事11時頃に言ってくれたら、今日一緒に行ったのに―――(ゲップ)」
「それを見越して言ったつもりですヨ」
「バーカ、ハッハッハ・・・」

しかし今の一言、私もN子もしっかり聞いたぞ。
しっかり胸(この場合胃袋)にキザミ込んだのだ。

そうだ、来週はN子の誕生日(二十ン歳)だからパアーッと行こうよ夜、夜にだよ。

「夜はパパと・・・」 
「何、また仲良しするの三人目!?」と冗談。

松田聖子のそっくりさんベスト3に入ったN子は、二児のママだった。(モッタイナイ)
じゃあお昼にステーキでも……となって、予約担当N子、金銭担当牧田さん、仲間手配担当
F君、ついて行って食べるだけの私。
これが『昼食会』の段取りだった。

 そして、設備業者と建築業者のコミュニケーション会、忘年会の下準備会へと来月から世話
役を決めよう、と話は遊ぶ方へどんどん膨らんで行った。

一体何が原因で食べる話が大きくなったのだ?これも現場が楽しく仕事をしている余裕から
来るのだろう。
大いに遊んで大いに食って、楽しんでから、仕事に頑張ろう。

美味(うま)いモノを食わねば、上手(うま)い仕事は出来ねえ!』私の言葉にウソは無い。

 

  九月二十五日(月) 晴れ  

チャレンジ21」の看板の横にオーナーから依頼されたテナント募集の看板が掲げてある。
 これも私の独断で全くのオリジナルだし『N子看板店の力』によるものだった。
この足代に掲げたシート看板の件で、テナントの問い合わせが、かなり来る様になった。

 パンフレットを渡して一応どういう会社かを私も訊(たず)ねてはみる。
 横文字の名前、カタカナの会社名が多いのも、今の時代の特徴なのかも知れない。
  各階とも現在はオープンスペース(外壁のみの状態)だから感覚がつかめない様だ。

「広いね」と言う人と「狭いね」と言う人の会社の感覚、人数、レイアウトにもよるだろう
けれど、各社様々だった。

 我々の作業によって建物が出来たとしても、テナントがさっぱりだとオーナーも資金繰りに
悩むケースが出て来るので、何とかして全フロアーの早期入居者契約決定を望んでいる。
入居者は個人相手でなくて会社(企業進出)の話だから私には心当たりはほとんど無い。
売り込む方針よりも、私には看板でお客が飛び込んで来る迄待つしかない。

しかし世間にアピールするにはこの看板効果はテキメンだった。
掲げたのが土曜日で、月曜日にはもう第一報の希望者が現れた。

「パンフレットを頂きに参りたいのですが………」
とかなりの件数があった。

ただ単に下調べ中の会社もあるし、不動産業者の方はまとめてテナント募集業務を行いたい
とか申し出て来られた。
問い合わせ先を看板に記入しなかったのだが、現場事務所の電話番号迄調べて私への話だから、
かなり入居希望が強いと見てよかろう。

「お宅の支店でここの電話番号聞きました」
と言う会社もあった。看板効果絶大也。

もう一つの看板『チャレンジ21』の件。
今日迄で3週間だけれど、仲間内からや協力業者の方々からの声は面白かった。

   《言われた言葉》            《言えなかった言葉》
    「何て書いてあるの?」        (これにはガッカリした、読めないのでは………
 「カッコいいね、どの位した?」     (安かったダメって言うのか、十五万で売るヨ)
 「誰が考えたの?いいねえ」    (当たり前だ、俺以外でどこに遊び人がいる? )    

    「私の所でも掲げたいので・・」  (どうぞご遠慮なく、真似して結構ですヨ。  )
 「看板屋さん紹介して下さい」   (私とN子アマチア塗装店なんだけれど、いい?)
 「現場の看板計画の参考に・・」  (参考だけで終わるなよ、作れよ何か考えてサ。)

 「全景写真送って下さい」     (自分で撮れよ、外から丸見えだから看板なのに)
 「外す頃、私の所が掲げる頃で」  (クレってはっきり言え、タダでか?十万か? )
 「恥ずかしいから降ろしたら」   (キツイ冗談だぜ全く―――こう言う人は大嫌い

 「勝手に看板掲げるな」      (俺の現場だ、簡単には降ろさないぜ。    )    
    「看板掲示理由を上申したか?」  (理由を言って迄自作掲揚する気持ちは全くない)
 「どういう趣旨で作ったのか?」  (誰もしていなくて、目立ちたかっただけのモノ)

 「今度現場見学させて下さい」   (現場かね、看板かね、製作方法かね?    )
 「車で通る度に話題だよ」     (ヒマだから作ってたなんて言うと頭殴るからね)
 「所長はどんなセンスの持ち主?」 (期待に反してズボラだったりするものだヨ。 )
 「今度から決まった看板なの?」  (決まってパテント料入るといいねえ。    )
        ・・・                ・・・・

        ・・・                ・・・・

        ・・・                ・・・・
建設業界のイメージアップ作戦も重要視されて来ているものの、市街地でも何の楽しみもない
仮囲いに殺風景な塗装が多いものだ。
以前にも言ったけれど『建築のセンスをアピールする』力が、土建屋の方々は上手くない。

 今の若者は会社の作業服に対してでも、センスの良し悪しを語り、個人の作業服で仕事をし
たい人も多いみたいだ。
「これが会社からの貸与の服だ」
(何十年前の仕事服スタイルだ……どうしてもコレでないといけないの?)だ。
会社の名前もカタカナにしたらイメージアップにはなるしナウイ感じだと考える。

いまだに社名に『組』が付いてる。
せいぜい『建設』にして、さらに○○コンストラクションに一気に変換すると 
「流石(さすが)だ、若い社長に就(つ)いて行ける、若い力で!!」な・ん・て・ね。

 が、今の社名の基で頑張った『エライ様』に嘴(くちばし)の黄色い若造が、何を言ってもダメ
なのでしょうかね。

 何とかして第三者に、安全第一以外に訴えるものを考えていたにもかかわらず、私もせい
ぜいこの看板程度で終わってしまった。
しかし、たかが一枚の看板を巡って、色々と意見、世間もかいまみえて、この業界のセンスの
低さを痛感したものだ。

 もっとインパクトのあるモノにしたかったのだけれども、取り敢えず
一石を投じたら波紋はどうなるか』
を覗(のぞ)いて見たかった気持ちも多分にあった。

 足代の全面シート、ただ隠しているだけのシート貼りだけれど『大きなキャンパス』と見立
てれば、これほど面白いものはない。
何だって描けるではないか。

私の『究極の夢』はそこにある。
実現は不可能だろう(可能に出来ない事はない)けれど発想一番者として、ふざけたアイデア・・・。


 ―――その夢として――――
   大きな現場の仮囲いを『大きなキャンパス』としての話。
   「マリリンモンロー」のスタイルを描く。
   ポイントは出入口で、その仮囲いシートを上にめくっておけるシステムにする。

           現場が稼働している時は、シートを上にめくり地下鉄から吹き上げて来る風によって、
   モンローの例のシーンが、それとなく現れる。
           その下を出入りするたびに、男衆の頭上確認になるだろうし、色気位あってもいいだろう。
          作業終了とか、休日でシートを降ろしておくと、普段のモンローそのままになる。

           現場は完全にシートで覆っても何故かめくってある所があって、遠くから眺めていても恥
   ずかしい程、中途半端でダラーンとなっている時が多い。ならば、
   「いっその事、めくってしまえ!」
    一喝するとコソコソと直している時もある位だから………。

この(モンロー仮囲い)は、映画館を創る時には、使ってみたい手だ。
スポンサーがなんと言うかが分かれ目だが、誰か私の代わりに・・・。

 

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