建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

現場リスタート

2024-01-22 09:16:07 | 建設現場 安全

   九月 十六日(土) 晴れ  

今日からは当分Kビルに専念する。
M店舗は昨日滞り無く引渡すことが出来て、テナントやオーナーから逆に感謝されてしまった。

オープン迄に別途業者の内装工が、天井とか壁に穴を明け間違った場合には緊急仕事になる
けれど、ここ二週間の忙しさから考えても、取り戻す二週間が必要だ。

気が付くと9月も半分済んでしまっている。
今月度の出来高は、お盆前に頑張ってた貯金をお盆明けから今までに使い切ったのではないか
と思う位、出来高は増えていない。

確かに6階のコンクリートは8月末だったし、今月はEV室の塔屋だけだ。

鉄筋工の姿を見なくなったと思うと、型枠工もいなくなっていた。
マイクロバスでKビルの前を通勤しているのはチョクチョク見るけれど、
「オーッス、元気?」で終わり。

 今、Kビルは内装工のトップを切って、サッシュ工が溶接火花を飛ばして頑張っているが、
場内を片付けてばかりいたので、サッシュ取り付け用の《不要残材鉄筋》が無い。
短い鉄筋屑を集めてサッシュ工に渡すのも一苦労になった。
ワザワザ買うのもバカらしい。

  鉄筋クズ置き場へ行ってもクズ鉄処理業者が回収済でアウトだった。
 近くの現場へ掃除片付け兼用に雑鉄筋を回収に出向くハメになってしまい、鉄筋加工台の下
へ潜(もぐ)って切れ端を拾う。
長さ40㌢前後の鉄筋を約50本袋に入れて持って帰って来た。

「所長、そこ迄しなくても他の現場で余ったのを、ここで使うからいいよ、何とかするから」
とサッシュ工の松村さんが助けてくれた。

 躯体の時は踏んづけて通った鉄筋も、無いとなった途端に手配する。運命とは皮肉だ。
今日でもう3階迄のサッシュは取り付いた。

 サッシュを取り付ける前の仕事として、コンクリートチェックがある。
苦労して打ったコンクリートが傾いていたり、湾曲(わんきょく)したりしているのだ。
ハラミとかソリとかタレとか言って垂直水平の原則からはみ出している所のチェックだ。
(通称開口チェックと言う)

窓を付ける開口部の上枠部分はコンクリートの自重でよくタレ下る。
サッシュが入らないのだ。
サッシュとコンクリートの隙間はコーキングを打つ巾10~15㍉しか余裕がない。

『その精度を保つ様に躯体工事中にチェックしろ!』
が会社や設計事務所の監理方針だ。

 腕のいい職人達ならそれでも納るが、工期に追われたり、応援が入って一気に作ったり、
が降っての室外作業だったりすると、とても精度迄かまってはいられない。

「後で斫(はつ)るか塗るかで何とかする」
のはいいけれど、
「その費用は誰の負担なんだ」といつも言う。

「急がされて雨の中、作らされたから、当然そうなった」
と型枠大工の親方は言い逃れるだろう。

 窓枠の位置を5㍉違えて付けるとタイル目地とズレてしまう。
サッシュ工は設計図の枚数よりも多い『サッシュ取付図』というものと首っ引きで取り付け
作業を行う。
 このサッシュ工の取り付け精度で室内はほぼ決まりだ。
 『斜め真っ直ぐ』が得意(?)な人もいるけれど、サッシュに合わせて物を付けたり測った
りする。
 サッシュから40㌢上が天井だとか90㌢下が床の仕上がりとなり、基準のモノサシになってい
るのも事実だ。

 1階と6階では壁の厚さが違うと、取り付け位置は一直線上にあっても、寸法書きは値が違
う。
柱面から1階では900㍉でも、6階の柱は小さい分だけズレがある。
 柱のすぐ横から隣の柱の間にピッタリ納るサッシュは上階へいくほど、柱が小さく開口部が
広く
なり、サッシュの間口が当然違うという事だ。
開口寸法が間違えているのはサッシ屋さんの責任ではなく施工図チェックミスなのだ。

だから、このサッシュ図のチェックが建築屋、特に責任ある副所長クラスの仕事になる。

 工場製作物(金属工事、手すり、石、家具・・・等)は特にチェックミス命取りになる。
現場で取り付けるその日になってみて、長いの短いの言っても始まらないのだ。

 これをメーカーの責任者に強く文句を言う人もいると聞く。
チェックミスを棚に上げて、
「作り直して来い、お前のところが間違えてンだ。承認印は押したけど、納る図面を書いて来
たと言ったから印を押したんだ………」

 と聞くに耐えない話を電話機の向こうで、怒鳴り合ってるのを聞いた事も何度かある。
何故現場には各種の施工図が氾濫しているのか――(施工図が何だってんだを再読してみよう)


 九月 十七日(日) 曇り    

 8月に新車に替えて《初めての家族ドライブ》に出て、稲沢市のO美術館へ寄ってみた。
『美術館』という建物そのものに目が行ってしまう。
館内に展示するにふさわしい雰囲囲気のアプローチ、エクステリア(外観)を現すいい建物だ。

 ―――余談として―――――
         建築屋として『館』の付くモノを創る時は充実していると私は思うし、私は
        創りたい。
      『館』の付くモノ、公民館、図書館、美術館、総合体育館、映画館、科学館、
  博物館、○○記念館、△△会館・・・とにかくデザインもかなり凝っている
  のが特徴だ。
        不特定多数、かなりの人が出入りするし、目に映る部分には厳しい精度もい
       るし、入念な工事施工計画もいる。

  鉄骨スレート葺(ふき)の倉庫、工場を創る気分とでは、とても《真剣味》が違
       うし、現場の考え方も建物には現れて来るものだ。 
       デザイン先行した設計から
     (どうやって創るんだ?―――)
      と悩んで勉強出来る事とか滅多に使わない製品を特別注文で作るとか、色々と
  経験させて頂けるだけでも『館』の付くモノを創る人には嫉妬?を感じるみた
      いだ。

   私が今迄に創った『館』の付くモノとしては図書館、記念館、文化会館等の
     『館』だったが、その間は苦労だと思いつつ《気力は満タン》だった。

   施工図を書くにしても、表現方法にフリーハンドでこういう風になるんだと
       スケッチ迄入れたりして、建築屋としては内容のある悩みと忙しさを覚えたも
      のだった。
       やはり、いくらデザインがよくても、博覧会場の建物の様に
  「人目を引きつけるけれども壊してしまうもの」
  よりかは、確実に後世に残し伝えていける建物の方が満足感は違う。

  建物を築く事、これが建築

       自分の財産で自分の好きな様に建てれる事が出来ない建築屋さんは、施主と
      いうお客の要望に
  「いかに添わせて創って行くか」の腕を見せるのも、生き甲斐の一つだ。

       設計の方とデザイン専門の方、インテリアコーディネイターとか、表面しか
      見えない方、図面通りの監理の事しか考えない方、色々な人とのプロジェクト
        で、好き勝手な注文を処理していく現場は『男らしい絵になる仕事場』だ。

  美術館などはその最たるものだろう。

  『館』自体がインパクトのある建物になっているし、似たようなモノさえなく、
  まさに世界に一つしかない建物だ。

   建築雑誌にも載るし、TVのニュースにも出る。衆目の気にする中での仕事
   には、人に言えない気苦労もあるけれど、これを竣工させた時の気分を若者に
   も味あわせて上げたいものだ。
   (一皮ムケた技術屋にも成長している筈だ)

   やり甲斐というか、やったのだ。
        (それが仕事だと割り切らない)という男のロマンなのだナ。

    山に登る、太平洋をヨットで渡る・・・
  そう、『男の何かが』そこにはあるのだよネ。

 ―――日曜日。たまの休日なのに、建築が抜けきらない建築馬鹿がここにいた―――という話。

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建設現場の言葉遊び

2024-01-09 08:21:33 | 建設現場 安全

建築現場の「言葉の遊び」―――の巻  

 『建築用語』の中には一般に使用する言葉でも全く違った意味を持った面白い言葉がある。
昔の人は上手く名前を付けたものだと感心する。
 専門的に正しい解説だとは言えないにしても、
(そんなものを言うのか・・・)
程度で読み流して頂きたい。

先ずは《食べる物から》 
らっきょ    鉄筋の梁筋を加工した時の一種の形。
ドーナツ    鉄筋と型枠の間隔を保つための円形の物。
ようかん    レンガをたて長方向に切断したもの。
まんじゅう   鉄骨建て方の時、柱の高さ調整用のモルタルのお団子(だんご)
キャラメル   鉄筋と床の間隔を保つための2㌢角程度のもの。
コーク      クロス貼りの隙間を埋めるもの。ボンドコークの略称。
チーズ     配管類でT字になる部分の部品。
ミルク    セメントを溶かしてドロドロにしたもの。
のり     掘削した部分の斜面をいう。
くり      防水層を直角に曲げないためのコーナー
あさり    鋸(のこぎり)のギザギザの刃の角度
せり     鉄骨柱の下に打ち込んで垂直を修正する冶具。
まめ     コンクリート打設不良で表面に砂利が表れている状況。
れんこん  墨壺の中で回っている糸巻き

《動 物 か ら》
とら   1.鉄骨が倒れない様に控えのロープの事。
     2.トランシット(角度を主に測る測量器具の略)。
     3.黄色と黒の縞模様の標識。
ねこ     1.鉄骨胴縁等を取り付け用の受け鉄板。
      2.一輪車、ネコ車、手押し車、カート車ともいう。
とんぼ  1.コンクリートを均(なら)す道具。
      2.アスファルト防水に金網を取付け用の接続金物。
ノミ    部材(木・石・コンクリート等)に穴をあける刃のある道具。
とび    鉄骨を立てる職人。足代を組立てる人の総称。
からす  1.からす口。墨を入れて書く時の鉛筆代わりのもの。
      2.とび職の技量に一歩手前の職人さんを見下した(差別語)
うま    脚が4本で組み立て作業台(通路・足場)にもなる便利な脚立
アンコウ  竪樋と横樋の飾り桝の総称。
しゃこ   ワイヤーロープの先端で簡単に締める為の冶具。
きりん   土留め工事の切梁に使う強力なジャッキ
モンキー  1.足代に取り付けて軽量な荷揚げのクレーン。   
        2.ナットを締める冶具。
つる     スコップとツルはし。先の尖った土工事用の道具。
犬(走り)  建物際から飛び出たコンクリートの土間。
猫(走り)    キャットウォーク。劇場などの天井ウラの細い通路。

《上品でない物から》
ケツワレ    契約工事の途中で止めてしまう事。
ハナたれ   タイル面からの白い汚れ(白華現象)を言う。
はなかくし  屋根の母屋材を隠す幅の広い化粧板。
きんかくし  和風トイレの便器。男性用はアサガオ。
キンタマ   下げ振りのおもり
ふんどし   ワイヤーを締め付けずに吊り上げる状態。
ブ ラ     下げ振りの別名。
バ カ     ばか棒。所定の寸法に予め作った定規。
なわばり   建物の位置と大きさ(面積)をロープ類で示す事。
たたき      床や石工事の仕上の方法。
盗 み     前もって欠き込みを入れて設計寸法より小さくする事。
殺 し     永久に取り付けたままの状態にする事。
バラシ屋    組み立てた型枠をコンクリート打設後に解体する専門職人。
にんぷ    本職は土工。特に力仕事を行う便利屋さん。人夫。
じょうふ   情婦でなく、色々と雑用を行う準職員。常夫。
ヒモつき   『神の声』を背に威張って割り込んで入ってくる業者
エンギレ   くっついていた部分が隙間を生じて離れてしまう事。
大 恥      くっつく所、隠れるべき所が下地まで丸見えの状態。

《この物語に出ているものから》
躯体工事   型枠・鉄筋・コンクリート工事の総称。
5 K      休暇がない・給料安い・汚い・危険・カッコ悪いの5K。
ゼネコン   建築会社つまり、元請け会社。ゼネラルコンストラクション。
協力業者  実際に現場に出向する会社(下請け・孫請け)。サブコン。
世話役   協力業者が現場に振り当てた責任者、職長。
オーナー  施主、工事発注人。ある時は神様。
足代(あしば) 場当たり的な足場に代わり、足元迄安全(完全)に組み立てるもの。
出面(でずら)  出勤しただけの賃金。当日の出勤者の頭数。 

《本音で言えば・・・から》
設計図   建物を創ってみようと言う基準のもの。
施工図   創ってみるには現場で書かないと決まらないもの。
見積書   請負金に合わせて、すぐに変動する不思議なもの。
予算書   直接工事金よりも現場交際費が気になるもの。
安 全   誰が見ても危なくない施設のもの。
精 度   創った後をチェックして、悩むもの
工 期   終わりの目標のしるしで、相当苦しめられるもの。
検 査   適当に終わりたい所を厳しく追及するもの。
所 長   口先だけで一向に現場で働かないもの(私の事)。

 

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建物引渡し目前の日々

2023-12-18 08:28:17 | 建設現場 安全

 九月 十一日(月) 晴れ  

Kビルは塔屋(エレベーター機械室・屋上出入り連絡室等)のコンクリート打設だ。
数量は多くはないけれども、設備の関係上、複雑な型になっている。 
コンクリートも
「どこから打てば入るんだ?」
という位、小さい部屋にありがちな『間仕切り小壁』がチョコマカとある。
庇もあるし点検用の階段もある。
その塔屋の屋上もコンクリートの直押さえ(防水下地)もある。

アスファルト防水層の上に歩行用保護コンクリート打設迄ある。
防水工事が終わったら、もう一度ここまで配管してコンクリート打設があるのだ。
狭い部屋なのにそれでも職種の数は結構あるものだ。

大の大人が3人も入ると尻が当たって仕事も出来ない様な所でも、防水、左官、サッシュ、
塗装、電気にEV(エレベーター)の工事等《一人前の部屋》分の作業がある。

屋上迄上るのも面倒になって、EV室は監督さんの目には触れない間に何となく仕上がって
いる場合が多い。

EVの機械が入って来て据え付けに3週間、EV工事を行っているのに、チラリチラリと職
人の出面をチェックする位で、まかせっきりで数千万円の仕事が終わって行く。
メーカーの責任施工だから、カゴさえ吊り込めば、建築屋さんは左ウチワだ。

この最後の塔屋を打っている時は、1階のコンクリートを打設する時のファイトから比べる
と、職人も含めて気楽なものだ。

生コン車が途切れても
「まだ来ないねえ」位だ。
屋上より更に上の場所だから見晴しはいいし、コンクリートも少ない。
とても1日分の仕事にはならないので、ゆっくりと仕事を楽しんでいる様だ。

昼過ぎにはコンクリート打設は終わるだろう・・・と思って私はM店舗へ行った。
昨日は日曜出勤して路盤に砕石敷き迄完了させたので、今日中にはアスファルト舗装を完了
させなければならない大事な時だ。

ところが11時に私が着いた時にはアスファルト工事が全く出来ていない。
「何でだ?・・・何でだ!」
「朝この中に車が入っていて、(アスファルト)工事の人と言い争いがあって・・・」
とまあ、子供のケンカじゃああるまいし、困ったもんだ。
私の目の届かない所での、職人同士のコゼリ合いも、突貫工事になると出て来る事を予想は
してはいたが―――だ。

とにかく半日は戻っては来ない、捨ててしまった工程になったけれど、それからは私が作業
指揮をとってアスファルト舗装を始めた。

(この分だと明日の午前中までかかるけれど・・・)
と予定表を確認したら、何と今日は午後から『社内検査日』だった。

引渡し前には店内から、工務関係者が竣工検査に立会いに来る。
我が社の基準に合っているかどうかのチェックだ。

突貫で築き上げて、やっと間に合いそうになったモノに、精度だ、品質だ、書類
『一般の建物工事』の事を言われたら、
「勝手にしろ!」と言い兼ねないだろう。

ここまで殺気立ってでも何とか出来たモノだが、クレームを付けるとすれば、私の目から見
ても反省点は大いにある。
これは今更どうなるモノでもあるまいに―――。

それよりも明日の午後からは『開発行為工事』の検査がある。
花壇の面積、駐車場の台数、敷地境界の杭の復旧、進入道路と歩道のチェック、これを
パスさせるのが建物使用が出来る大前提だ。

そして、行政の検査が終了すれば、後はオーナーさんが勝手に室内装飾で区切ろうと拡げよ
う(軽微な変更範囲)とご随意にだ。
だから、H設計事務所の検査を主とし、オーナー検査は形式だけで終わらせるつもりだ。

「打ち合わせと違っている、直せ!」
打ち合わせで「言った言わない」は今に始まった事じゃあないけれど、オーナー側から見る
と不要に見えても、どうしても法律的に必要だと言う物が出て来た。

逆らってる時間はないのでとにかく手を打つ事にした。

(冗談じゃあねえ、創りにくい上に後々クレームが起きそうだと相談しても、直す指示も間に
合わなかったし、塗装の色の件だって………なのに)

今日中に舗装工事を頑張って完了する予定だったので、夕方には植木が入って来た。
舗装面にはまだトラックは乗り入れ出来ないし、入口へ降ろす訳にもいかないので、一輪車
で花壇までサツキを運ぶしかない。

運転手にそれをさせるのは酷な話なので、皆で手伝って降ろす事にした。
別途業者の人も見るに見兼ねて手伝ってくれたので、40分位でとにかく片付いた。

午前中のロスがなければ植木も何とかなったのだが・・・。
明日の朝、植木を持って来るものと思込んでいた私の調整ミスだ。

「所長の所だから、前日(まえび)に持って来て安心させて上げようとしたのに・・・」
と言われると、
「持って帰れ」とも言えなかったしね。
だけど、私にも植木屋その1となって、運搬仕事が廻って来ようとは思わなかった。

舗装工事はやはり残った。
明日の10時迄には完了するだろう。
続いて植樹と外灯取り付け工事を終わらせて、昼から開発検査は受けられる。

合格かどうかは不明だけれど、過去何度もあったと言う例の、
「これでは検査になりません、後日また来ます
という事態はかろうじて避けられた。


   九月 十二日(火) 曇り  

昨日の様に舗装工が問題を起こしたら困るので朝の6時半まだ誰も来てない現場で昨日
の舗装工事の終わっている所にたたずみ、
(ここ迄よくやって来れたものだ・・・)と思った。
今日は花壇に植樹して、昼から『開発検査』だ。

「『外構が工事中では検査にならないので、出直して来ます』という事のないように」
と役所からは釘をさされている。

(どの位迄出来ていたら出直しをしなくて、検査対象になるのだろうか―――)
と他人の財布を気にしているのもミジメだ。
ハッキリ言って駐車場のライン引は残る。
植樹も一部残るかも知れない。

境界杭は復旧完了しているが、正確度は今一つだ。
それでも、やれるだけの事をやったのが
「ここ迄」
と言う事になったのだ。

 出来の良し悪しを問えば満足度を充実出来なかったのは、不徳の致す処だ。
普通の人からみれば、完成したらそれで良いと思うだろうけれど、創(つく)りながらの思考
は全くなく、とにかく工期に向かって走りに走った仕事だったので、私は反省する事しきり
である。

ドア一枚にしても《こうした方が………》といういつもの内容確認を行う時には、
(こんな事は設計に任せて、私は創る人・・早く決まれば手配をするから・・・)
とおっくうさを殺してでも打ち合わせを行っていたものが、あまりM店舗ではなかっただけ
に、逆に寂しさを感じる。 
オーナーとの打ち合わせは全てH設計事務所が行って下さって、決定番号○○-○だとFAX
が届く。
この数字だけだから『トータル的な色彩』はどうなっているのか、不安は多かったが
《神と神様の声》だからこの際黙って準備するのが『得策』として割り切らせて頂いた。

今朝はトラブルもなくアスファルト舗装が進んでいる。
10時には終了したが、重機の回送搬出は午後になった。
その待ち時間の中で大島建設の安田さんは、

「開店したらみっともなくて見られないだろう」
と予測して、U字溝の蓋をはずして、
「工事中に市の側溝を汚したと言われるのも面白くないから」
と言って一斉に道路(県道)の大掃除までも引き受けてくれた。

大島建設さんとはAマンションから色々と無理なお願いをしているけれど、昨日の植樹の
運搬応援にしてもKビルの乗り入れ工事も、気兼ねなく引き受けてくれて助かったものだ。

M店舗も最初と最後は大島建設の出番だった。

特に最後の砕石搬入は、私の予定を読んで大島建設の材料置き場へストックしてあったモノ
を積み込んで来たものだ。
当然積込み代は余分にかかったけれど、日曜日に搬入(建材店は休み)を見越しての事で、
これはM店舗の
『外構工事(開発検査)の生命線』でもあった。

竣工間際に雨の影響があったものの、とにかく(なんとか)ここ迄出来たのだ。

開発検査員の方は16時に来られた。
「駐車場のライン引きが残って台数の確認が出来ませんが・・・」
と先に謝(あやま)った。

「ここまで間に合っているとは思いませんでしたから、今日最後に伺ったのですよ。駐車場の
台数は・・・これだけの舗装の広さがあると台数は十分ですね。花壇の面積をチェックします
から、テープを・・・」
50mテープを差し出したが、
「図面通りの区画になっているので、最小寸法巾の所をチェックします」
と花壇の巾をあたって、面積計算を概算された。

「切捨て計算でもクリアーしているのでOKですネ。明日使用許可証を取りに来て下さい」
(バンザア~イ、ヤッタアー、よかったなあ)
早速支店に開発検査結果を報告した。

これで建物だけの検査となった。
こちらは法的に問題になりそうな所はほとんど無い筈だ。
消防署が火災報知器、排煙窓面積チェック位である。
浄化槽は既製品だから届け出の書類で終わりだ。

本設電源に切り替わり冷暖房の調子が今一つだが、これは検査の対象外だ。
オープン迄には試運転期間は十分あるし、店員さんの訓練用の研修期間内で調整完了可能だ。

これで竣工引渡しも出来るのだ。
私の仕事を代行して、何かと面倒を見て頂いた岸田工務店の中村さん、外構工事で頑張って
くれた大島建設の安田さん、三浦土木の三浦社長さん『あ・り・が・と・う』

 

 

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目鼻がつかない状態でも

2023-12-04 08:23:57 | 建設現場 安全

 九月  七日(木) 曇り    

昨日迄雨が降っていたので、地盤が緩(ゆる)い。幸いにも雨は上がっている。
もう待てないので店舗用駐車場予定場所の鋤(すき)取りを始めた。

土は粘土の如くミニユンボにくっついて、整地しているのか混ぜ返しているのか、
訳が分からなくなりそうだ。

目検討で土の盛り上がり部分を場外処分した後に地盤改良だ。
これはKビルで杭打工事の時に一度行っているので、作業内容、作業時間も予定がつく。

土を掘って改良薬剤を混ぜるのだから、濡(ぬ)れている土でも大丈夫だ。
説明書によれば土の中の水分に石灰分が作用して、熱を発生して固まるというものだ。

化学の力を信じよう、信じるのだ、今日は…。
場内掘り返しの関係上、資材搬入車両が入れない。その分周辺道路へ停めてしまう。

一般家庭の玄関の前に平気で車を停める名古屋人の図太さが理解出来なかったけれど、
止むを得ない。
広い道路の左側一車線は、早い者勝ちの駐車行列状態となってしまっている。
この都市で慣れた感覚をここの現場(周囲は田畑)でも同じ様にせざるを得ない。

しかし、今日に限って10時頃パトカーが来て、通り過ぎて―――は頂けなかった。
『責任者を呼べ』と言ってるよ、所長さん」
あり難くない呼出しだ。

「済みません・・・」
「歩道に車を置くな、道路に停めるな、駐車禁止を貼るぞ、道路使用許可は取ってあるのか、
○○組ともあろう会社が何だこれは!」
まあ国家警察とは言え、国民の公僕のお方が、何て物の言い方なのでしょうね。

工事現場と言う弱い所へ『強権発揮』して何が楽しいのだ?どこへ持って行けって言うんだ
ろうか?ここは周辺「田んぼ」だよ。(駐禁の看板は見当たらない…)

道路許可証はちゃんと頂いておりますヨ。
表示看板は仮囲いの解体とともに先日撤去したのでチトまずかった。

もう7日間で『竣工引渡し』を行うのに、仮囲いも許可表示看板もあったものじゃあない。
許可証の控えは提示したものの、
「次に巡回時は全て駐車禁止貼るからな、いいね、君の名前は?・・・」

私の父も戦後まで警察官で「オイ、コラ」だったと母はよく言っていたけれどね・・・。
とにかく国家権力と言い争っても仕事は進まない。

近所の喫茶店の駐車場を借りたり、スーパーへ一時置かせて頂いて、ガードマンを右に左に
走り廻して、場内の鋤取りが済む迄の『しんぼう』だ。
耐えるしかあるまい・・・。

明日迄はこの状態が続く。
明日『駐禁』貼られたら出頭するしかない。

ゼニで済むなら何とでもなるサ・・・というこの開き直りを警察にも、協力業者にも覚悟した。
別に国家に対してケンカを売っているつもりは毛頭ないからね。

後2日間、我々で交通整理をして、第三者災害を防ぐ努力はする。
ガードマンも増員するし駐車場の路盤(下地)が出来たら車は現場に取り込むから、明後日以後
パトカーさん来てね。

この混雑時にオーナーがやって来られた。
じっくり現場を視察される。
(もう竣工迄は注文事項は待ってよ)
と言いたいけれども、何が飛び出すやら気が気でない。

「やっぱり元の色が良かったかねえ・・・」
なんてサイン塔を見て言われた。

もう首締めてやりたいよ全く・・・。
権力と工期に押しつけられた私は、潰(つぶ)れてしまうよ。
このダメージ多い時に、
『泣きっ面に、倒れた所に牛の』だ。

オーナーとは竣工式の準備とその後の予定について打ち合わせをした。
官庁関係の諸手続きは、書類への捺印がすぐ出来る様に、事務担当の岡本副所長に動いて
頂いた。
刑務所現場勤務当時から、夜食に宿泊・夜の麻雀から全て「困った時のオカちゃん頼み」で
上役だが気兼ねなしに頼めるのもあり難かった。


「(雀鬼の)岡本さん、最低限度の書類に絞ろうよ、内容もサ。Aマンションの時の控えがフロッ
ピーに有るので官庁諸手続きの書類差し替えはすぐだよ。直す所だけ赤で書いててヨ。夜ワー
プロ打っておくから、明日は支店で社印もらって来てよ―――それから・・・」
と大先輩なのにアゴで使う私は、きっと岡本さんに甘え切っているのだろう。ゴメンネ。

社内回覧の捺印も岡本さんの力で、1時間以内に済まして来るのは簡単だと信じている私だ。
とにかくM店舗も型が整って来た。
これで舗装すれば完全だ、と思える位にはなったけれども、室内は内装工事(別途業者)がワン
サカ入って寸法を測っている。


「ここは棚だ、ショーケースだ、両開きドアだったんだね」
と、私に色々たずねて来るけれど、
(店内装飾の別途業者まで面倒みれるかっ!!) 
頭に血が上っている自分にハッとした。

自分の事しか今は考えていられないのも、当然ではあろうが、オーナーの専用業者に冷たい
態度を見せるのは、所長として良い筈はない。
最後の最後まで面倒を見て上げる事が、工期短縮出来なかった《お返し》でもあろう。

地盤改良が終わって転圧ローラーで整地を始めたのが17時。
だんだん陽が短くなっているが、とにかく明日朝からせめて10台は車を停(と)める所を作っておこう
と転圧業務を指示したのだが、やり出したら止まらない。

お隣さんが窓から顔を出して、
「何時まで今日はされますの?いつがオープンなのですか?」
「もう1時間、時間を下さい。駐車場を作らないと警察に車を持って行かれるのでね」

自分達が全面的に悪いのに、この際ミソもクソも一緒に他人のせいにする。
「はい、オープンは10月初めです。もう店の内装工事や商品が入って来ていますよ」
「大変ですねエ」
「いいえェ、いつも最後はこうなるのが現場の常でして………スミマセン」

結局20時半迄かかって専用駐車場の路盤転圧は出来た。
これを2日間寝かせておいて、アスファルト舗装をすれば完全だ。
乗用車なら明朝から入っても路盤下地が傷付く事はない。
明日は警察からもう警告を受けなくて済む・・・ホッと一安心だった。

今日も一日『台風』だったのか『戦争』だったのか、アッという間に終わってしまった。
21時半を廻っていたが、帰りにKビルへ寄った。

11日に「塔屋機械室+1階受水槽機械台のコンクリートOK」
と行事予定の黒板にN子の生きのいい右上がりの文字が書き込まれてあった。

(そうか、まだコンクリート打ちがあったのだ・・・)
私の机に腰を降ろして、ここが私の場所なんだ―――と何やらホッとするモノを感じていた。

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オープン前の半月突入

2023-11-20 09:02:35 | 建設現場 安全

九月  一日(金) 晴れ   

昨日より一日過ぎて月が変わっただけなのに、9月という響きで涼しさを感じる。
だが、今年も秋になるんだ……というセンチメンタルな気分を味わう暇もない。

定例の安全大会はKビルでは行うけれども、M店舗では一刻も惜しい時間となって中止だ。
労務安全部が聞いたら、
『心臓でも止めておけ』ってんだ。(藤本工事部長に似て来たモノだ)

これからM店舗は上へ下へ、さらに右へ左への大混乱だ、一気作りの『一夜城』も覚悟のフル
コースだ。

 浄化槽を掘る場所の足代は何とか解体出来た。
今日の昼から掘削してベースコンクリート迄は打つ段取りだが、サイン塔の足代は外壁貼りの
工事が終わってなくて解体日が未定だ。

ネオン(別途:施主工事)なんか取り付けられる時間はない。
ところが、ところがだ、
「頂上の色が違っているなア・・・」
とオーナーの一声で、塗替えるハメになってしまった。

どうやら色彩計画の打ち合わせ時点より色の感じが違っているみたいだと言う。
別途のオーナー業者ネオンを取り付ける迄の引き延ばし作戦か?

 我々は色でなく品番号』を聞いて手配したから、どんな色なのか、何色なのかを疑う余地は
全くなかった。
設計事務所から決定した品番号をFAX受信し、メーカーにそのままFAXにて転送して、対応し
ていたのに―――。

明日にでも足代解体のつもりのサイン塔が、この件で3日は遅れてしまう。
一番目に付く所をオーナーに注文付けられたのでは、たまったものじゃあない。

言い訳より、考えこむより、返答するのも今は時間が惜しい。
「やり直せ」の指示ならやり直します、《どうするかなあ・・・》と言うのは困ります。

色をメーカーで作らせて、現場へ搬入だが、たかが一斗缶3ケ分、宅急便で持って来させたとし
ても、3日間は最低でもかかる。

足代解体は他の仕事の絡みで2日は遅れるが、この三日には全て解体しないと後工程がサッ
パリとなるだけに、塗直す事にスパッときめたが『ネオン取付け』迄は待てない状態だ。

次は浄化槽だ。
掘削するとやはり水が出た。
大きめに掘削して釜場(簡易ピット)を深くして水中ポンプの廻しっ放しである。
膝近く迄泥や水が跳ね返って、長靴の中はドロだらけだ。
水中コンクリートもあるけれど、早強コンクリートでベースを打った。
打つよりも、掘削した所へ捨ててしまったという程の勿体ない厚さのコンクリートだった。

明日は浄化槽を搬入して設置しすぐ埋める。
中に水を満タンにしておく。
浄化槽への接続は入る部分と出る部分が約3mずつ配管が残っているだけで、繋いでしまうとテ
ストがある。

汚物の流れだけに後日の手直しは願い下げだ。
だからチェックは入念に行う必要がある。

それから地盤改良して駐車場の敷地整地だ。
道路との高低差が80㌢はあるので駐車場部分は
なるべく水平にし、なだらかなスロープに
変更して出入り口を作る事にした。

アスファルト舗装は外構、U字溝、縁石、花壇、ブロック積みが完了していない事には重機の回送費だけで経費が飛んでしまう。

とにかく一発で物事を決めたいし、部分的に舗装をするのはムダだ。
来週の8日から10日迄の3日間で一発勝負だ。

ブロックは積みかけ中だが、足代の足元へ基礎コンクリートを打たねば積み上げる事も出来
ないのだから、足代完全解体するまで手待ち状態にもなっている。

室内は天井のクロス貼りの真最中だ。
これが終わらないと冷暖房器具が取り付かない。

天井が終ると床の仕事だ。
床貼りはまだ手を付けていない。
竣工直前迄、仕事は山程有る。

床貼り迄出来れば仕上がった、間に合ったという事なのだから、それで良しとしよう。
外構工事の犬走りのタイル貼りも特殊な柄だったので、搬入に日数を要している。
 少しでも不足すると、お手上げというギリギリのセンも後ではいい思い出になるだろうけれど、
胃は痛むものだ。
ここに来てのタイル貼りは日数がかかるので、素早い段取りを取ろう。

この忙しい最中、藤本工事部長が本日付けで北陸支店長へ栄転だと話が入る。
(なにーッ?)だ。

「今からの15日間を見て行って下さいよ。最悪の時は私一人の責任になってしまうし、そうさ
せたいのかね支店は・・・」
と途方もないこと迄、憶測してしまった。

もう、M店舗の事で相談出来る唯一の上司がいなくなったんだ・・・。
竣工したら支店に行って、この現場の問題点を、二人でハッキリ『利子付きで返す』つもり
だったのに、私の意地はどうなるのだ。

「こんな事ハナッから出来っこないよ!」
と最初に辞令を聞いた時に、ケツをまくってみればよかったのだ。
(何かしら私一人が忙しい目に合っているのでは―――)
と思うとバカらしくなって来た。

私はKビル一現場だけで良かったんだ。
そう、それが実力なのだよ、私の………。
自分の信念(建築屋としてのプライド)を殺して迄、私はこの業界にはいたくないからネ。

九月  四日(月) 晴れ  

外構のブロック積みが昨日の雨で出来なかったのと、花壇との境界になる縁石が一部残って
いるので、重機は回送して来たものの仕事にならなかった。
やはり雨は降るものだし、計算に入れて置かねば計画手違いのミスが多くなる。

分かっていてもM店舗では、雨なし工程を組まざるを得ないここ数日は、ファイナルカウント
ダウンだ。

外部建物周辺を仕上げれば、何とかなるのに、ここで足踏み状態に陥ってしまった。
サイン塔の塗装は今日の夕方に塗替えが終わり、17時を廻ってから、足代解体が出来た。
この解体足場の搬出材料だけでも4㌧車1台分はある。

これが、出入り口に積んであり、朝一番に出さない事には、花壇のブロック積みもまたストップ
してしまう。
トラックはたとえ無駄になってもと思って予約までしていたのが、幸いだった。
3時には足代解体が出来ていないので、よほどトラックも延期と言いたかったけれど、もう延ば
せる余裕がない今となっては「背水の陣」を敷いていたと言える。
もう後へは引けないんだから、やり遂げるしかない。
これは理屈では分かっていても、人間の精神は弱い。               

『やっぱりダメかと思った時、ダメになる』
と私は強がって言い、根性を出す。
まだまだネバーギブアップだ。

まだ10日間もあると発想を変えて現場を見つめない事には息が詰ってしまう。
全ての予定を狂わせていた足代がやっと無くなったではないか。

もう墜落災害事故の危険性も無くなったではないか。(工期も無くなったが……)
これからは、9日に電柱を建てて、11日に受電し、その電源で冷暖房の調整を行うまで工
事が進んだのだ。

給水が明日接続出来ればトイレも使えるが、トイレの床タイル貼りの予定は明日だった。
「ええーい、今夜中に貼ってしまえ、僅か5㎡だ!」

帰り支度をしていたタイル工を無理やり頼み込んで貼り終えた。
これで明日は直にタイル目
地が出来て、終了次第配管設備を接続し、トイレの使用が
出来る段取りになった。

今日は外構工事もピークだった。
ブロックは積むし、その後を追って縁石、それに外灯の
ポール基礎コン打ち、浄化槽の
押さえコン打設→雨水排水の接続→桝底のコン打ち。

一気一気の突っ走り工事だ。
職人の車の台数も入れ代わりではあるが、常時15台はある。
ガードマン一人ではとても誘導出来ない。
場内に入ったら出るのに苦労する位に車が来る。

宅急便の車も来るけれど、もう道路へ停めるしかない。
パトカーもよく通るけれど、早く駐車場を地盤改良して、中へ取り込む様にしたい。
近隣にも迷惑を掛けないで仕事をしたいのだが、そこ迄もう頭も体も動きが悪い。

ひと夏が過ぎれば地盤が固まるだろうという、甘い予測でそのままにしていたのが、裏目と
なった。
あの暑い時、舗装を先行工事しておれば竣工前に楽だったかも……と猛反省だ。

もう少し、あともう少しでM店舗も終わる。
だが、雨が降ると全くのお手上げになってしまう今、舗装と花壇工事にはタイムリミットが
迫っており、ただ、ただ《天気を祈るだけ》だ。
今朝の状況と夕刻の状況では移り変わりの激しい一日だった。

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竣工前15日になって

2023-11-06 07:54:51 | 建設現場 安全

 八月三十一日(木) 晴れ  

暑い8月も終わった。
Kビルの進捗状況は、出来高予想34%に対して36%だ。
設備の工場製作物工事を入れていない、実質に現場で取り付けてあるだけの数字だ。

サッシュも9割程度搬入はしているけれど、取り付けてある所迄の実質出来高分だ。
Kビルの今月はコンクリート打設二度、お盆休み、躯体完了だったし、M店舗はケツに火が
点いた状況になり忙しかったが、缶ビールを飲みながらでもよく頑張ったものだ。

 何本、何ケースビールを飲んだだろうか。
アルミ缶は近隣が目的を持って回収されているから、今までの様に場内が空き缶でゴロゴロ
という風景はあまり感じられない。

 現場内一斉の片付け時には空き缶も回収して近隣自治会迄、順次届けていたので、場内はお
蔭様で『クズ箱の山』はまぬがれた。

―――『捨てればゴミ、生かせば資源』『場内清潔、近隣円満』だ。

朝一番に稲田建築部長から電話だった。
取り次いだN子のニュアンスだと、
(どうも機嫌が悪そうだった)と言う。

「どこへ行った?現場にいるのか?すぐに電話させて・・・いいね!」と言って、
『一方的にガチャンと切られたわ』との事だ。

N子は私の所で三つ目の現場だし、一応店内各課からの電話の対応も合格だから、私が例え
留守(M店舗、喫茶店、設計事務所等)へ出かけていても、それなりの受け答えは出来る。

だから私も(何だろう……)とついつい《構えた心》で頭の中を整理してみた。

書類か、呼出しか、本社でも急に来るのか―――。
藤本工事部長を通り越して直接に私という事は、私のチョンボがバレた時………。
チョンボの心当たりは別にないし、安全パトロールもAだったし……何だろうねエ?―――と
N子と心当たりを話あっていた。。

(まさかシート看板降ろせってことはネ・・・)
コーヒーでも飲んで電話しよう。

「稲田部長は電話中ですけど・・・」
店内の女性の取り次ぎがマズくて、そしてその内二~三電話が私にもあり、私も現場巡視に
出廻って行き―――。  

忘れかかっていた頃の昼食時間の直前に、
「何で電話せん!!」と来た。

「済みません……(何だろう?)・・・」
M店舗、間に合うのか!H設計事務所から電話が来るし、Aオーナーからも念を押されてい
る。大事な客だから問題の起こらない監理をしろヨ……いいナ・・・!」
「(ムッ!)・・・」                       

どうも、オーナーの《間に合いそうにもない》との予想から、直接支店の工事課と営業サイ
ドへ電話が入った様だ。

 現場を見てない人の所へお得意様から電話が入るのも問題だが、オーナーとしては、私より
も「会社へ一言忠告し、念押ししておこう」と思うのが普通だろう。

 まあ、私とは付き合いが無いので当然の事ではあろうし、オーナーは起工式に一度お会いし
たきりで、以前からのお付き合いは店内だから、店内に気安く電話を入れただけの事だ。

『そもそも、8月末日が本来の工期だって事すら忘れているのではないか。9月はおまけで付
けて上げていると言うのにそれさえ危ないとは何事だ!』
オーナーの心の声が聞こえそうだ。

(後15日間ですが、雨がなければ何とかなりそうです)
と他人事の様に部長へ答える訳にも行かず、困ったものだった。

 官庁検査日数の全てを一時に纏(まと)められないので、最低二日間必要だ。
まだ浄化槽は埋まっていないし、足代解体も一部残っている。
花壇なんてこの際、頭のスミにさえもなくなっている。

 間に合うのかと聞かれるよりも、間に合わせろ!とハッパをかけて、叱ってもらった方が、
『男気がある』ってもんだ。

そもそも、ここの現場の協力業者の指定は……言ってみたって始まらない。 
それを使いこなせなかった私の《フォール負け》とは言わさない。
ワン、ツウまで待ってスリーで跳(は)ね退(の)けてみせるつもりだが、今からがスリー
カウント目に入る所だ。
数えられたら負けだ。
レフリーをケ飛ばしてでも《リングアウト勝ち》に持ち込んでやるからね。
おめおめと負けてはいられない。

 今日も昼からはM店舗へ行く。私も『片付け人・その1』だ。
車の出入りの誘導、職人の呼び出し、通行止めのロープ貼り、隣家への挨拶―――
私は一体『何様なんだ……』と思う。
 はっきりその時は思う暇も無いのだが、アレコレと動き廻らざるを得ない時間だ。

 Kビルで所長風を吹かしている方がよっぽど精神的には楽だ。
どうしてこうなったんだとの後悔、グチは言わずにやり通してみせる。
15日の契約工期日には絶対に引き渡して見せる。
引き渡しが出来なければこの首の一つでも差し上げましょうかネ。

見通しは今のところ全くの《五分五分》だけれどね。
それにしても現場の状況を視察しての直言であって欲しかったなあ・・・・

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 最上階(6階)打設

2023-10-23 08:10:21 | 建設現場 安全

 八月二十九日(火) 晴れ 

やっと最上階(6階・屋上含む)のコンクリート打設となった。
昔流に言えば『棟上(むねあげ)だ。

 屋上には『ハト小屋』と称するものがある。
 広告塔の基礎もあるし、衛星放送用のアンテナ台、大型分電盤・避雷針の基礎や冷暖房空調
機器の基礎等あり、結構複雑だ。

 屋根には勾配もあるしパラペット(転落防止兼ねる低い外周腰壁)もあるので、今日の仕事
はかなりハードだ。
屋上への設備配管ダクトとか空気抜きダクトの出てくる部分を『ハト小屋』と名付けた先人
達はいい感覚の持ち主だ。
犬では屋上にはいないし、猫に小屋はマッチしないしね。

ハト小屋から鳩ならぬ配管が飛び出しているけれど、この小屋は常に《雨漏(あまも)れ》の
原因となる要素が強い。
雨が最初に当たる所でもあるし、太陽に常に照らされていて、自然の力の影響をモロに受けて
いる。

 屋上床からの防水を甘く考えていると、とんでもない事になる可能性が大だ。
 風向きも考えて、雨が吹き込んでも逃げ道を考えておかないと、クラック(ひび割れ)から
でも水が滲み入って来る。
 配管を伝って雨水が最下階迄降りて来る場合もある。

コンクリートで作る小さなハト小屋だから『設備工事だ』と言う事になって、
「これは設備屋のものだから、ヤツらでコンクリート打たせろよ、わしらはチト休憩だ」
と平然と言い、打設中でも堂々と(煙草休憩)の職長さんもかつてはいた。
その時代から比べると随分設備屋さんも楽になったというか、恵まれて来たというか、チーム
ワークとしては一緒にコンクリート打設しようという気に「ここKビル」ではなっている。

しかし、後で聞けば設備の世話役のK君とH君は、この前の現場では、躯体職の親方にかな
りのビール券が出て行ったと言い、Kビルではその3分の2以下ですと言う。

半分と言わない所が面白いネ。
その4割ほどは缶ビールとなり現場事務所の冷蔵庫に戻って来ていて、誰れ彼なく持って出て
(私の目を盗んでも)いる。                                  

「こんな現場ここだけで、他ではないぜ」          
職人達のほくそ笑んでる声が聞こえてくるのも楽しいものだ。    

 何やらかんやらで、屋上コンクリート打設が終了したのが2時30分だった。
天気は昼から曇って来たけれど、今日は大丈夫だ。明日は雨かもしれない……。

 左官工が思いの他手間どっている。
何時もは水平に均(なら)すのだけれど、屋根には雨水勾配が有るだけに、流れ方向が気に
掛かったものだ。

 ―――屋上の話――――
        建物の屋上のコーナーにはよく水が溜まって、夏には草が生えている建物も
       ある位だ。
       コンクリートの屋根の上に防水層があって、保護コンクリート(押えコン)
        打ってその中に目地を入れる。

  厚みの少ないコンクリートだから太陽熱によっての収縮が激しく、目地には
  アスファルトを流し込んでいた昔の建物は、夏場になると目地アスファルト
  がコンクリートの伸縮力で押し出されて、秋から春にかけてコンクリートは
  縮みアスファルトは戻らないので隙間となって、そのほんの僅かの隙間から
  も雑草が生えて来る。
  雑草の如く逞(たくま)しくとはこの事を言うのだね。

      普段屋上へは上らなくてもいい非歩行用防水屋根の点検時に、鳥の死骸、野
      球のボール、ビニール袋類、枯れ葉等を掃除する。
      これらのモノでドレーン(軒樋)が詰まり始めている時もある。

    「手入れをしない部屋」と言ってもいい位に、屋上は荒れ放題な場所だ。
   
   一般のビルの屋上はクーリング機器等があり空調水滴が落ちていて、床面
  が濡れたままの所もあったり、出入り口のドアが閉まらなかったり、点検口
      の蓋(ふた)が外れかかってたり―――なぜか屋上は悲惨な部類に入る所だ。

  せめて半年に一度は点検する様オーナーにはお願いしてはあるのだけれどね。
  打設済の表面にアスファルト防水をして保護コンクリートを打つまでまだまだ
  手間のかかる作業が残っている。
     いろいろな経験をして来たなあと振り返りながら、もう少し話を続けよう―――

躯体工事も塔屋(エレベーター機械室)を残して完了だ。
1階コンクリート打設が6月初めで、もう8月も終わり。
その間3ヵ月弱。ペースは早い方だろう。

 屋上のコンクリート打設が終了という節目は建築屋さんにとって、躯体工事が完了した日と
して記念になる日だ。
(やはり《棟上げ》だから一杯飲みに行かねば示しが付かない…かナ)

これからは仕上げ工事に気分が変わって来る。
コンクリート打設日を目指しての直前目標が無くなって、当面の仕事の期限がズルズルとなる
のも悪い習慣だ。

 工程表も工期迄あるかの如くただ書いてあるだけで、シマリのない表だ。
自分で書いて言うのだから、大したものだろう。(笑)

 サッシュはいつ迄に終わるんだ?造作は、左官は、塗装はいつから出来て何時終わるのか?
ガラスは、タイル貼りはと次から次へと仕事は続くが、工程表に日時は書き込んでない。
途切れたり、詰まったりしては
『段取りの悪い現場』
と評判になる。

職種も多いのに、工程表としては各職種が重なったまま、仲良く竣工直前迄全員でいる
のでは『工程監理』とは言えないね。

―――夕方、M店舗に行った―――
もう9月が目前なのに、外壁吹き付け工事がやっと終わりそうで、一部足代解体に取り掛から
ねばならない。

向こう半月間はM店舗に付きっきりとしてでも、
「とにかく引き渡さねばならない」
という内容の工程表を見ながら、結局はKビルから職人を連れて来ない事には《絶対数》
足りないという結論だ。

KビルとM店舗とで、職人感情が―――何て事はもう言ってはいられない。
お互いの親方を説得して(無理やり納得させてでも)やるしかないのだ。

これらの打ち合わせを確認していて気が付いたら21時だった。
今日も充実した(時間を追い越した動きの)一日だった。

帰りにKビルへ立ち寄って屋上の直押さえ(金コテ下地)を見た。
左官の仕上げは水銀灯の明りの下で見ても精度よく出来ていた。
山あり谷ありの雨水勾配付きのコンクリート押さえだったが、よくこなしてくれていて気持
ち良く家路につく事ができた。

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掛持ち工事竣工1か月前

2023-10-10 08:05:38 | 建設現場 安全

    八月二十四日(木) 晴れ     

 M店舗の《サイン塔》とも言うべく目印になる部分の仕上げが、一向に出来上がらない。

建物の正面(屋根上から)7mも突出して形はまるで、フランスの『凱旋門』並だ。
中が空間でこれには頂上で半円形がくっついており、雨漏り対策上最も気にかかる詳細に
なっている。

 デザイン者から見るとメインだのアクセントだのインパクトだのおっしゃるけれど、創る側
からみれば何の事はない、ただの鉄の《飾り塔》だ。

(平屋建てに煙突の如く凱旋門を作って、低層建築物及び田んぼと民家しかない所で、目印も
クソもあったものじゃあない)
これが職人を含めての本音だ。

「デザインはしましたけど構造的にはプロではないので、その辺の仕事のオサマリは任せます
ので、よろしく・・・」
とボソッと言われればどうしようもない。
全く創る側の全責任だ。
どうりで超安全設計になっていたのだが、変更すると『手を抜いた』とも言われかねないので、
設計図通りに工場製作したのがムダに思える。
(変更打ち合わせ期間さえない突貫工事でもあったが―――)

 これが今ネックになって、足代解体がズレ遅れそうな気配から外構工事に余裕がなくなる。
高い所から下へと仕上げて来る手順は、人間が飛びながら作業が出来ない以上当然だ。

 一旦、足代を解体して、外構工事を部分先行させて、また足代を組む方法も検討した。
当然経費は倍以上かかるけれど、今、何らかの手を打たねば、工期にアウトが目に見えて来た。

足代解体が始まると周辺立入禁止も出来ない中、竣工目前で内装工事職人の出入りが多くなって
来て、ヘルメット・安全帯も着用せず(室内作業で危険が少ない)安全監理とは口先だけだ。

ここへ安全パトロール隊が来たら
「心臓が止まるぜ」
と言っていた藤本工事部長の言葉が頭をかすめる。

内装工事は天井下貼り迄完了しているので、後(クロス・塗装工事等)は何とかなりそうだ。
WC、事務室、玄関等狭い空間に集中して職人達がいる。
少しでもズラして工事を行うと能率がいいのだけれど、壁だ、天井だ、配線だ、寸法取りだと
目まぐるしい人の出入りの中で、徐々にだが仕上がって来ているので幾分落ち着いていられる。

しかし、問題は床だ。
床の仕上げの段取りが全く予定つかずだ。
これだけの人の出入りで床を仕上げるには、室内立入り禁止以外にないと決めている。

 床カーペットタイルはコンクリートに直貼りだが、入念に掃除して、順番に貼って行かねば
ならないし、仕上がったこの上に土足で上る事は厳禁だし、脚立を立てて天井に冷暖房器具を
取り付けるのも、本来ならゴメンこうむりたいものだ。
そこまでは今回は無理を言えないので使用を認めたが、仕上がった床に傷がついたら……と心配
だった。

 しかし、工期迄の工事量を順番に頭に描いていたら、とてもまともに納る事はなさそうな予感が、
心臓を圧迫してくる。
(何とかなるさ―――)
と思えず『責任感の強~い、気の小さ~い』私の性格が情けない。
事故があるとしたら脚立から落下・転倒による労災発生を防ぐ厳重管理が必要だ。   
 どういう訳かこのM店舗へ来ると、喫茶店へエスケープしたくなる。   

責任を逃れたい為か見るに見兼ねて、やる気が失せて来るからか、自分の思い通りに人を動
かせないじれったさからだろうけれども、喫茶店からの窓越しで現場を見ている。

 全く第三者的にモノを考えていられるのも、窓側から聞こえて来る軽いノリの音楽のせい
かも知れない。
バックミュージックに流れているのは、昔、学生時代に明けても暮れても演奏(ピアノ弾き)
していたグレンミラー、クインシージョーンズ、デュークエイリントン等のジャズだ。
 スウィングジャズがこんないら立った心境の時に、落ち着きを取り戻してくれるとはあり難い
ものだった。(建築屋でなく音楽関係の道に進みたかった……私の心がよみがえる)

 私には快(こころよ)い音楽でも
「ジャズはサッパリわかんねえ」
と言う職人さんとの打ち合わせ時には場違い(保護帽・安全靴姿)だった店ではあるが・・・

夕刻にKビルへ戻ったら、F君の自信の声だ。
「最後のフロアー6階のコンクリート打設を29日に決定しました。全て手配完了です」
「うん、有り難う、御苦労さん、今回はポンプ工から手違いの電話がなかったかね?」
と冷やかしてみた。
「『あのお盆前の狂騒曲は何だったンだ?』と言っておやりよ」
と破顔一笑で冗談を言う。

お盆直前に打設した現場は他の現場と再開も重なって、圧接工、鉄筋工、大工等の奪い合いと、
足の引っ張り合いで、とても今月末迄にコンクリート打ち出来る事はあるまい。

 小さな現場とかお盆前に打てずに延びてしまってた所をポツンポツンと打っているのが毎年
の盆明け8月後半の仕事だ。
  そして9月の第一週に再びピークがあって、年末にまた大パニックになる・・・。

 その中で8月末日迄には余裕を残した日に、コンクリートが打設出来るという我々の現場は
相当『強運』と思われる。

 Kビルはお盆前には次の階の柱の鉄筋組立を『完了していた』分、他の現場より相当早いコ
ンクリートの打設となったので《段取りの良さだ》と自慢しておこう。

 私はM店舗へ飛んで行ってしまっていたこの一ヵ月なのに、4階、5階、6階へとペースを
守り続けて工程監理をしてくれたF君、それに協力してくれた職長さんや職人さんに
「アリガトウ」
の感謝の気持ちと「ゴメンナサイ」の気持ちを、示さねばなるまい。

A設計事務所とも少し御無沙汰しているので、打設後は『焼き肉大パーティ』をしよう。

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オリジナル看板製作

2023-09-25 08:38:12 | 建設現場 安全

   八月 十九日(土) 晴れ   

 念願というかやってみようとした、私の『オリジナルの看板』が製作完了した。
5月頃に藤本工事部長から《何か特徴のある現場》をアピールしたらというテーマを与えられ
て以来、『オリジナル看板』を正面の外壁足場に掲げようと模索していた。

 先月中旬頃から、そのタイトルを何にしようかと迷っていたけど、結局は会社で掲げている
『チャレンヂ21』に決めた。
社内的には数年前からチャレンヂ、チャレンヂ21世紀と目標を掲
げ、会議の中でもよく
使うキィワードになっている。


 しかし、対外的には「?(チャレンヂ?・・・21?・・・何なのソレッ?)」だ。
 これを通行客が多く又、朝夕の通勤電車の中から、まっ正面の所へ掲げ様とするのだが、
これ
だけでは色気もアピール度も全くないので少し遊んでみた。

―――さて、いかに創るぞや・・・と―――

1.8m×5.4mの白地のシートに書くのだけれど、デザイン文字もオリジナルにしたいので
型紙に図案を書いて切り抜いてシートに並べてみる。

一文字の大きさを割り出したり、このコンテ(草案)を考えてる間は遊びの気分だった。

最初は「トライ・チャレンヂ21」にしていたら、二つも重なった意味だと言われた。
それもそうだ。
トライの変わりに何かを捜せ、考え出せだ。
全てを英文字にしたいし、頭の文字は赤色、
21も赤、会社のマークも赤で残りは黒文字
としよう。


レッツ・トライも駄目、ビギンもノーだ。
ステップ・バイステップ―――セフティ・ファースト・・・ありきたり過ぎる。

だが英文字数にして11から12個にしないと『チャレンヂ21』の見栄えが悪い。

セフティ・ファースト(安全第一)だと決まり文句過ぎる。大衆へのアピール度が弱い。
ウーン何かいい言葉、最善の看板製作―――と思ったら『ベスト』が浮かんだ。

「そうだベストだ!もうこれしかない」
トライ・ユアーベスト チャレンヂ21を2段表示にするコンテは決定だ。

20分の1の看板図面を早速書いて、文字の大きさをきめた。
   『RY YOUR BEST!
      
HALLENG・21

が、英字は文字によっては横の長さが一定ではないのに気がつくのが遅かった。
 Lの底辺は縦の巾分しか右に出さない、HとAの文字間隔は少し詰める、Gは少し太めに
る・・・レタリングの本を見ながらの素人看板文字を作った。

文字を切り抜き、シートへ写す頃からN子の健闘が始まった。
良く頑張ってくれた。
事務の仕事は一時中止して、看板製作に打ち込んだものだった。(こっちの方が面白い)

休憩所の隣部屋で、床面に大きく拡げたシートの上に切り抜き文字を並べている。
アンダーラインは入れておいたが、
「文字間隔はこの位だわね」
とバランス良く配置してくれた。

ペンキを塗る頃からはツナギの作業服に着替えて(決めて)いるN子の出番だった。
周りにはヤジ馬(職人さん達)が、
「所長達、何遊んでるの?、お盆で頭おかしくなったのかね?」と冷やかす。

「今日から看板屋のオッサンだ、助手のN子は看板娘だからね」と軽いノリだった。

この時、私自身ペンキが上手に、せめて遠目で看板らしく出来るかどうかは半信半疑どころ
ではなく、2割の自信しかなかった。
でももう止められない、止まらない。

 チャレンヂと目の前にあって、何で逃げれようか。
文字になる(ペンキを塗る)線の外側にはガムテープで全て塞(ふさ)いでおいた。
こうすれば私とN子で塗りつけたペンキが少々はみ出ても、ガムテープを取ったら文字が
くっきりと浮き出て来る―――筈だ。

刑務所でも工事建物案内看板3.6m×5.4m角を自作した経験があるではないか。
この根性を唯一の望みに託して、塗装もN子と手分けしてシツコク塗った。

本職の看板屋さんだってこうやって作る筈だから、まあ、
失敗すれば次へのチャレンヂだよネ」
と気軽にN子に言ってはみたものの、返事はないが今更後には引き下がれない。

それが今、塗装が乾いたので、ガムテープを取った。
 グッドだ。
とても素人の製作とは思えない、見えないシロモノだ。

しかも、地上10mの所に掲げるので、細かい所は見えないだろう。
色ムラが多少あるけれど大成功だ。
―――何とか仕上がっている?ようなものだが―――

これを一気に正面足場へ掲げた。

足代全周にはグリーンのメッシュシートが貼りめぐらされている。
ここへ白地に横文字(全て英語は現場初)の看板を目立つ所に取り付けてみた。

 かなり遠くからでも見えるKビルは、ビル工事中でも目につく程だから何と言う反応が
て来るだろうか。
すぐに頭からケチを付けるのが名古屋人の特徴だから、
「不細工だ降ろせ」
と言う意見が多いかも知れないが、果たしてどうなるか、いつ反応が現れるかを心待ちにし
て、周辺から眺めながらこの一週間の《お遊び仕事》を振り返っている。

今日は土休の人が多いだろうから、月曜日の朝、通勤途中に誰かの目に留まったら・・・。

「一週間かかって作ったのだから、せめて一週間は絶対に掲げておくからネ」
とN子と約束をした。
例え誰が何と言おうともだ。折角苦労して作ったんだものネ。

後日談話―――看板屋さん曰く「あれは17万円は掛かってるね、何処で作ったの?」と)

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お盆直前、躯体打設後に

2023-09-11 08:15:45 | 建設現場 安全

   八月 十一日(金) 晴れ   

5階のコンクリート打設だ。

一昨日ポンプ車の問題をクリアーしたので、昨日の仕事は配筋検査も十分行って、コンク
リート打ち前日にしてはめずらしく打設前チェックにゆとりがあった。

昨日は午後から半日鉄筋工も余裕があったので、6階の柱筋を圧接迄してしまった。
柱筋が先に組みあがったのでコンクリート打設時にホースの引き廻しに面倒かなと思った
けれど、配管を盛り変える様な事はなく、スムーズに打設ホースの移動を行えた。
鉄筋工は盆明け時に圧接工を手配する必要がなくなり、いつでも仕事にかかれる態勢になった。

大工さんの半分は1階と2階の『墨出し(ここが壁芯から1m、床仕上げから1mだよという
垂直水平の基準を各室全てに墨で線を引く事)』に取りかかる事が出来た。

墨出しが終ると躯体工事から仕上げ工事に切り替わり、仕上げの一番手はサッシュ工事だ。
サッシュは盆明け早々に納入する。
その時点では型枠は全て片付けて、基準墨出しも完了しておく予定だ。
設備の冷暖房ダクト配管を天井フトコロ(天井裏)に吊り下げておく仕事もある。

――5階のコンクリートを打ちながら、下から仕上げが始まって来た事を実感した。

6階の時、そう、盆明けからは最上階躯体と最下階仕上げ開始が主要な仕事だ。
中間は型枠支保工の解体撤去中となり、躯体工事ももう一頑張りだと見えて来た。

今日のコンクリート打ちも昼過ぎには終わるが、ポンプ車は次の現場が待っていて、一分
一秒でも早くKビルから出て行こうとかなりアワテテいる。
これを目のあたりに見て、
ダメコンを4階の時に打っていなかったらと思うと背筋が寒くなりました、所長」とF君。
「ポンプ車のお家の事情を現場マンとしてはチョッピリ気を配ってあげる事だね」と私。

今日のコンクリート打設は何だか静かだった。
そういえば鉄筋工の姿がない。
『コンクリート相番』といって鉄筋の乱れを直しながら、サシ筋等を段取りする筈なのに一人
もいない。
サシ筋は昨日の内に全て先組みしてあるからいいものの、

「打設中に鉄筋の乱れをどうするのだ?」と私。
「上手に打って下さい、乱れた所は設備屋さんが今回は直すから……」
と言ったかどうかは定かでない。

明日コンクリートを打つどこかの現場の為に、鉄筋の組み立ての応援に引き抜かれているの
が本音であり、昨日の雑談の中とか、それらしき電話が昨日午後から沢山あった。

昨日―――
「何人でも集めろ!!」
の号令で、今日、今晩中に鉄筋をバタバタと組んで、設備屋さんが夜中から朝の十時迄かか
ろうと、とにかくコンクリートを打つんだという現場へ応援に行くと聞いている。

設備屋さんは鉄筋の上筋と下筋の間に配管するので、鉄筋が組上がらないと仕事をしように
配管の接続さえ出来ない。
壁から上がって来ている管をスラブ(床)に接続する部分は(実際には床でなくて天井用の
電気となる配管)大混雑だ。
それに配筋検査はいつするのだろうね。

壁へのコンクリート打ちが終わる迄にスラブ配管作業も、配筋検査も終わるのだろうけれど、
そんなにバタバタと仕事をしてミス、手直しはないのだろうか・・・。
それで果たして盆明けの段取りは出来ているのか……と他人事ながら気にしてしまった。

―――Kビルに話を戻して―――
Kビルのコンクリート打設は昼食抜きで、12時40分には完了した。丁度100㎥。
4階の時にダメコン(雑コン)を打っているので、昼からはどこを打とうか?と考えるのは
甘い。
ポンプ工に今そんな事を言うと首締められるほど殺気だっている状態は先に述べたネ。

午後からは次の現場へ120㎥も打ちに行かねばならないそうだ。
14時になると型枠工事が終わって打てるだろうという所へ、食事もせずに、
「所長さん、悪いけど今日はこれで………」
と飛んで、まさに飛んで出て行った。
何はともあれ御苦労さんだ。

左官工(K業務店)の山内さんも昼食抜きで、3時迄頑張って終了となった。
もう上を歩いても大丈夫だけれど、12時前後に打った付近の所は少し表面が柔らかい。
という事は、夕方からは今日打ったコンクリートの上で作業が出来る。

「えッ?」
この暑さでコンクリートが固まる迄に表面を『均す』スピードが付いて行けないので、左官
工は大忙しだった。
一晩寝かせて朝墨出しをするのが普通(正確には24時間その上を歩かないで養生する事) だけれ
ど、運動靴で歩くには支障のない(傷が付かない)程、表面は固まって来た。

それに陽は長い。
現在5時。夕陽を見るだけでもまだ暑いのに、足元のコンクリートも相当な凝固熱(固まろう
とする熱)を出している。
撒水(さんすい)養生してもすぐに表面は乾いてしまった。

6時になったら『夕陽の墨出しマン』をやろうと打ち合わせをした。
それまで大工もF君もひとまず喫茶店で休息也。

そろりそろりと歩きながらの墨出し作業だったけれど、主要な部分は全て終了した。

打設後は気が抜けるものだ。
特に今回はお盆休みに入るので、安堵感も大いにある。
もう仕事の話は止めて「休みの予定話」が大賑(にぎわい)わいだ。

「明日は今年前半無事終了を記念して昼食会を『しゃぶしゃぶのK』へ行こう」
とN子に予約手続きを頼んだ。

「明日からお盆休みじゃあないのですか?」
「多分半日でも出て来ればの話だけど、うまいもので釣れば皆さんきっと来るでしょう。俺も
来るけどN子も出ておいでよ、夏休み中の子供二人、連れて来ていいからサ」
「わァーい、で、パパは?」    
「ん?(パパいたの?)」  
                     



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