読書録「黒笑小説」4
著者 東野圭吾
出版 集英社文庫
p80より引用
“「本当です。これでも全部じゃないんです。
全国で開催されている小さな文学賞も含めま
すと、約四百ぐらいあるんです」”
目次から抜粋引用
“もうひとつの助走
過去の人
インポグラ
シンデレラ白夜行
臨界家族”
ブラックユーモア満載の作品を集めた、短
編小説集。同社刊行作品文庫版。
作家と編集者とのやり取りを描いたものか
ら偶然撮れたいい写真をめぐる話まで、笑い
と皮肉に満ちた13編が収録されています。
上記の引用は、出版社による新人文学賞に
ついての編集者の一言。
賞罰の乱発はそれに関わる物事の質の低下を
招く、ということを、何かの故事で読んだよ
うな気がします。年に400人も新人が生まれ
ても、同じ数の引退者が出るわけもなく、小
説家の数ばかり増えてしまいそうです。
作家の数が増えても、購買者の数が急に増え
るものでもないでしょうから、人口減社会で
は厳しい仕事となっていくのかも知れません。
本当に売れっ子になりたかったら、使用人
口の多い言語で最初から書いてみるのも面白
いかも知れません。
中頃に収録されている、変な発明や能力の
話は、星新一風味な作品ではないでしょうか。
星氏の作品が好きな方なら、面白いのではと
思います。
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読書録「安らぎの生命科学」3
著者 柳澤桂子
出版 早川書房
p134より引用
“ ものごとがすべて順調に進んでいるとき
には、その中にふくまれるいろいろな要素は
とかっく見過ごされがちである。障害にぶつ
かったときにはじめて見えてくるものがあ
る。”
目次から抜粋引用
“貝は海の瞼です
死は一個の卵である
樹の中では血は立ったまま眠っている
星は語らない”
サイエンスライターである著者による、生
命科学を基にしたエッセイ集。
人の記憶についてから人と科学の行く先に
ついてまで、叙情に溢れた文章で書かれてい
ます。
上記の引用は、人間の情動と科学研究につ
いて書かれた項での一節。本当に大事な物は
目には見えない、というやつでしょうか。
あってあたり前の物事は、無くしたり、ある
のに使えなくなって、その有り難さがわかる
のでしょう。
病気を患って、その苦難の時期を過ごした中
で、著者は文章を書く喜びを見つけたそうで
す。
穏やかで流れるような文章ですので、ゆっ
たりとした時間を取ることが出来る時に読む
のいいのではないでしょうか。
バタバタとあわてて、速読で読むたぐいの作
品では無いと思われます。まあ、エッセイと
言うジャンルは、慌ただしく読むものでは無
いのかも知れません。
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