近頃のご家庭のお風呂場には「呼び出しボタン」があるらしい。
お風呂で急に具合が悪くなったりした時のためなのか、と思いきや
同僚さんは主に「今、洗面所の電気消したでしょ、ちゃんとつけてよ」
という家族へのクレームに使うらしい。
お風呂に入っている時、お風呂場と洗面所と両方の電気が必要なんですか?と聞くと
とにかく両方ついていないと嫌なんだって。
洗面所の電気のスイッチって届かないくらい遠いんですか?と聞くと
いや風呂場からすぐだという。
うーん。よくわかんないぞ。
しかしわたしが、時々お風呂場の電気つけないでお風呂入ったりしますよ、というと
そっちの方がよくわかんないらしかった。
闇風呂っていっても、うちのお風呂場の窓は通りに面しているから
外灯や車のライトで薄明かりが入り、真っ暗闇にはならない。
通りの音が気になる時は浴槽の中に潜りこむと、静寂の中に心臓の音だけ微かに聞こえる。
流石にずっと潜ってると息が苦しくなるので時々鼻だけ浮上してまた潜る。
思考が海藻みたいにゆらゆらして、関節から疲労の塊が溶け出ていく。
少し温めのお湯にして、「今わたしは貝掛温泉にいます」と暗示をかけたりする。
この話をして、わかるわ、オレもやる、って言ったの今んとこ焚き火友達のHさんだけだ。
職場の皆さんが仲良しで楽しく喋っているのはいいことだとは思うけれど
たまに本気で耳栓が欲しくなることがある。
もともと大きい音や騒々しいのは苦手な耳なんだと思う。
小さい頃から外で集合写真っていうとたいていは目をつぶってたし
強い光も苦手な目なんだろうな。
だから暗いのと静かなのは落ち着くし、そこに適温と適度な圧と浮遊感があれば最高。
そして今、密かに、最近手に入れたオイルランタンをお風呂場に持ち込む手段がないか考え中。
やっぱり危なすぎるか。