我が家の大学生は
何やら面白そうな
学びをしています
もはや
学びというよりは
遊びみたいです
百物語いってくるから
帰りは明日の始発ね
とか
坊主バーにいってくるね
とか
(なんだそれは)
レポート書くのに
大学の図書館で
古文書借りたら
開いただけなのに
背表紙折れて
おこられちゃったの
とか
私のパパは
ちょっとカタイひとなので
孫娘の専攻を聞いたとき
なんだ、モノをつくらない人に
なるのか?
と憂いたものです
(笑)
そんな彼女が
知り合いが破格でわけてくれる
といって
歌舞伎に誘ってくれました
演目は
東海道四谷怪談
チケットが送られてきて
はじめて
知り合いっていうのが
よその大学の教授であったと
知りました
なんか、すみません、、、
お岩さんの名前は知ってても
お皿割っちゃうひとと
識別もできてない
古典音痴の私
当然、この演目が
忠臣蔵と縁のあることも
知らなくて
でも、そんな私のために
市川染五郎さん演じる
鶴屋南北さんが
ことの背景をちゃんと
説明してくれる場面が
ありました
初演は190年前
南北さんは71歳
中村座の夏の舞台
二日間かけて
忠臣蔵と何幕かを
かわるがわるかけたそうです
照りつける太陽のした
小屋のなかには雪景色
これぞ芝居の醍醐味
だったのではないでしょうか
そして、南北さんの
奇想天外な仕掛けの案を
大道具の天才が
役者さんと一緒になって
ああでもないこうでもないって
実現させたのです
今日にいたっては
お岩さんワイヤーアクション
恐怖と悲哀の舞いに
身震いしました
そちらもさることながら
なんといっても
松本幸四郎さんの
色悪の残忍な美しさ
銭のかたに
お岩さんと赤ちゃんの寝室から
蚊帳をむしりとって
行こうとする伊右衛門
それだけはかんべんをと
蚊帳にすがるお岩さん
離せ、離さぬの果てに
伊右衛門が
そんなら、離すなよ
といいざま
力任せに蚊帳を引っ張ります
ひっかけた爪が剥がれ
もんどりうつお岩さん
泣き崩れる彼女に
ざまぁみやがれ
と捨てぜりふ
極悪非道な振るまいと
立ち姿の格好良さに
どこに持っていけばよいのか
わからない憎悪が
体の底から沸き上がります
こうした凄惨な場面も
あっといわせる演出も
お客を楽しませようとする
南北さんの真骨頂
全編とおして、身の毛もよだつ
恐ろしい話なのにもかかわらず
ところどころにあらわれる
コミカルな動きに
ぷっと笑ってしまいます
ところで
この本を書いた南北さんは
正式には
四代目 鶴屋南北
といいます
前の三代は作家ではなく
歌舞伎役者でした
道化を得意としたそうです
そしてこの四代目は
三代目の入り婿で
生家は紺屋職でした
当時は下層の身分だったので
そこからの出世には
長く苦しい努力があったそう
そんなこともあいまって
南北さんはとにかく
道化に徹して生きようと
決めたのだそうです
みんなを笑わせて
人の間の潤滑油になって
じぶんは埒外にいて
亡くなる直前の南北さんに
遺書があるからそのとおりにね
といわれた家族は
葬式の日、お寺に茶店をたてて
赤い前だれつけて
弔問客におだんごと
戯曲を一冊配りました
そこには死んだ南北さんが
棺桶から飛び出てきて
桶の底をちゃかぽこ叩きながら
万歳、万歳と舞い踊る
という台本が
それが彼の遺作でした
まったく最後まで
しょーもないやつだなぁ
と笑って帰っていく
お客さん
という描写も
ついていました
200年近くに渡り
ひとつの演目が
かかりつづけ
そのたびに大勢のお客が
押し寄せてきて
一日の半分を
(正午開演、午後5時閉演でした!)
幻想の世界に遊び
美しさに酔い
恐ろしさに震え
書いた南北さんの才能はもちろん
守り伝えてゆく役者さんにも
感動しました
そして、舞台に乗りきらなかった
物語の背景や登場する人物の行く末などを
つぶさに語ってくれる娘の話にも
惹きこまれました
生きて暮らすことに
最低限必要なのは
食べるものだったり
水や空気や服や家だったり
確かにそういうものに
直結するプロダクトに
関わるひとにはならないかも
しれないけど
あなたの孫娘は
少なくとも
生きていくことを楽しめる
ひとにはなれそうです
それはとても素敵なことでは
ないでしょうか?父上(笑)